敵と味方を取り違えた沖縄2紙
今回、自分たちの真上を北朝鮮のロケット/ミサイルに通過された、沖縄のマフメディアの報道ぶりをのぞいてみましょう。
まずは、朝日新聞の「天声人語」に相当する、沖縄タイムスの「大弦小弦」(2月8日)欄です。なかなか突き抜けていますよ。
※http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=153124
タイトルは「こんなときだから立ち止まって」で、もう読まないでも、中身がわかっちゃいますね。
「こんな時だからこそ立ち止まって考えたい。政府が「ミサイル」と呼ぶ物の正体は何だろう。北朝鮮は「人工衛星用ロケット」と主張している。
» 翁長知事「心臓凍る思い」 沖縄被害なし
▼2009年の発射直後は政府も「飛翔(ひしょう)体」という、分かりにくいが中立的な言葉を使っていた。その後なぜかミサイルに変わり、前回12年12月、そして今回の発射で人工衛星の地球周回が確認されても呼び方を変えない 。
▼先端に載せるのが弾頭か人工衛星かの違いで、技術的に共通点が多い。制止も聞かず、核実験を強行する国が打ち上げ技術を誇示するのは危険極まりない。その通りだが、衛星は衛星だ 。
▼宮古島市と石垣市への迎撃ミサイルPAC3配備はなぜか。軌道を計算できない破片には無効だと、専門家が繰り返し指摘している。万が一ミサイル本体が向かってきたら、射程わずか数十キロのPAC3は10セット以上なければ全県をカバーできない 。
▼危機の演出、自衛隊のPRという以外に説明できない。北朝鮮の暴走を利用している。今後、両国間で対立が深まった場合、北朝鮮だけでなく政府も事態をあおる可能性がある。
▼やっかいな隣人が相手だとしても、常に事実に基づく冷静な議論が必要だ。パフォーマンスでなく、地道で実質的な努力を。携帯電話メールで「上空をミサイルが通過した」と告げられた者として、望みたい。(阿部岳)」
なるほど。「冷静な議論」は賛成です。私も昨日の記事で「正しく怖がろう」という放射能の時の教訓をくり返したつもりです。
簡単にまとめておけば
①「光明星4号」の発射実験は、軍事転用可能な弾道ミサイル実験である。
②これは国連決議3本に対する重大な違反行為である。
③しかし、北朝鮮は、再突入技術を持たないために、これがただちにICBMの保有を意味しない。
なんだ、たった3行で書けるじゃないか(笑)。
一方、この沖タイの「大弦小弦」は、こう言いたいらしいですね。
①核実験を強行する国がロケット技術を誇示するのは危険極まりないが、衛星は衛星だ 。
②宮古、石垣には破片しか落ちてこないし、PAC3の配備は少なすぎて無意味だ。
③これは政府と自衛隊が意図的に危機を煽る「危機のPR」をしているのだ。
④冷静な議論が必要だ。
はい。必ず沖タイが、「政府の危機の煽り」だと言うと思っていました。
続いて、琉球新報(2月8日)が報じる宮古、石垣の人々と、そしてなぜか辺野古の反対派運動家のご意見です。
「【石垣・宮古島】北朝鮮の事実上のミサイルが上空を通過した先島諸島。「発射前倒し」の情報を受けた地元自治体や関係機関は7日未明から対応に追われ、緊迫感に包まれた。一方、地域住民は被害がないとの情報に安堵(あんど)の表情。
宮古島市では初めて基地外に配備されたPAC3を前に抗議する住民の姿も見られた。
石垣市の男性(35)は、3歳の娘と車でバンナ公園に向かった瞬間、ミサイル発射を知り、自宅に引き返した。「迎撃ミサイルが搬入されて物騒だ。北朝鮮には過激なことをやめてほしい」とこぼした。
大城事務局長は「政府は、北朝鮮や中国の脅威をあおり、基地強化を正当化するのだろう」と危機感もあらわに。「軍事力で敵対するのではなく外交ルートで対話を続け、解決を目指すべきだ」と強調した。
ミサイルをめぐる緊迫した動きに違和感を抱く人もいた。東京都から2カ月に1回ほど、辺野古を訪れるというアルバイト女性(32)は「東京の人間には、オスプレイや戦闘機が飛び、弾薬運搬車が当然のように行き来する沖縄の日常の方がよっぽど危ない」と語った。」
はい、いかがでしょうか。地元2紙の報道によれば、島民は北朝鮮のミサイルにはまったく無関心で、むしろ自衛隊のPAC3の配備におびえて、「政府と自衛隊の危機のPR」に強く抗議しているようです。
ため息が出ます。自分が何を言っているのか、ほんとうに分かって書いているのでしょうか。
沖縄県人は、こんな記事を読まされる本土人の気持ちも多少なりとも考えるべきでしょう。
これは既になんどとなく警告していますが、普天間の移転問題をきっかけに生まれてきた、沖縄に対する本土人の突き放したような冷やかな「気持ち」です。
「そんなにイヤなら、ばかばかしいから、税金かけてあいつらを守ってやるなよ」
普天間の移転はイヤダと叫び、北朝鮮のミサイルが自分のほうに飛んでくれば今度は、抗議すべき相手を間違えた騒動ばかりが沖縄から伝わってきます。
こんなことばかりが報じられれば、本土人たちの中に段々と、「勝手にしろ」という気分が増殖するのは避けられないでしょう。
今はまだ「気分」ですが、本土人の心の中の沖縄県人に対する温かい同胞を思う気持ちまでもが失われていく結果になるでしょう。
こういう本土人の気持ちなど、沖縄の地元マスコミはまったく考慮していません。
ですから、いつまでも視野狭窄のままで、左翼丸出しの主張が通用すると勘違いしています。
(東京新聞2012年12月8日より引用)
さて、今回のPAC3配備は、北朝鮮が実験日を繰り上げたためにまさに滑り込みでした。
完全に配備の準備が整ったのは、数時間前だったほどです。
そこまでして本土から駆けつけた自衛隊員に対して、「迎撃ミサイルが搬入されて物騒だ。北朝鮮には過激なことをやめてほしい」(琉新前掲)と言う神経が分かりません。
「過激なこと」をしているのは北朝鮮なのか、自衛隊なのか、そこをはっきりさせましょう。
どうして、このようなイロハのイがわからないような報道が、沖縄でまかり通るのでしょうか。
北朝鮮は一貫して弾道ミサイルと、それに搭載可能な核兵器を開発し続けてきました。
そしてそれを制止する、国際社会を敵にまわし、何度となく暴発を続けてきたヤクザ国家です。
特に今の正恩政権の過激さは、かつてのように「米国との交渉のため」という合理的外交目標すら消し飛び、ただいたずらに核兵器を誇示し、戦争を呼号するまでに至っています。
このような国こそが、真に「過激」と呼ばれるべきなのではありませんか。
落下する部品や破片は、宮古、石垣に落下する可能性が充分にありました。
なるほど、沖タイが言うように、「万が一ミサイル本体が向かってきたら、射程わずか数十キロのPAC3は10セット以上なければ全県をカバーできない 」のは本当です。
ならば、自分たちの危険を国に強く訴えて、PAC3を増設してもらうのか筋ではないでしょうか。
それを逆に、「そんなことは政府の危機の演出だ」として、配備反対を訴えるに至っては、錯乱しているとしか思えません。
私は地元2紙が左翼的論説をすること自体は、報道の自由の範疇だと思っています。
しかし、このような具体的な危険に対して、その警戒心を緩め、さらには危機から国民を守ろうとする政府こそが「敵」だといわんばかりの論説は、報道倫理からの逸脱だと思います。
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