受かるはずの住宅ローンの審査に落ちる理由
どうも千日です。3月に集中するマンションの完成引渡しに向けて住宅ローンの審査が佳境を迎える時期ですね。
『借金は無いのに住宅ローンの審査に落ちた。何で?』
今後、こういう人が増えていくはずです。最近良く見るモデルルームの売り文句は『月々8万円で駅徒歩5分の3LDKを手に入れませんか?』です。
- 月8万円なら今の賃貸と同じ負担なのに、何で審査に落ちるの?
- どうすれば審査に通るの?
そんなお悩み、疑問に答える今日の千日のブログの内容です。
- マイナス金利で懸念される融資のモチベーション低下
- 住宅ローンの審査が厳しくなる理由は利上げを想定するから
- 販売会社の売り文句と銀行のギャップを理解する
- 変動金利で落ちたら固定金利でリベンジ
では始めますね。
1.マイナス金利て懸念される融資のモチベーション低下
ひと言で言うと銀行の利益が圧迫されるからです。
マイナス金利で住宅ローンの金利が下がったことは利用者にとって喜ばしいことですが、これによって銀行の利益はさらに圧迫されることになります。
そんなのカンケー無いじゃん
と思われるかもしれませんが、大アリです。銀行は利息で儲けるビジネスです。調達金利よりも安く融資できる枠にも自ずと限界があるのです。
これがこの後の融資審査の厳格化につながります。
資金調達の金利よりも資金運用の利回りが下回ったら赤字に転落するのが銀行です。それぞれどんな金利なのか?EDINETや各行のホームページで公開されています。
代表例として三井住友銀行で見てみましょう
(三井住友銀行の有価証券報告書、半期報告書より抜粋)
大まかに言うと、
- 銀行の収益=資金運用勘定×資金運用金利
- 銀行の費用=資金調達勘定×資金調達金利
です。この差額の利益で銀行員の給料やら、支店の家賃やら、を払っている訳ですね。
銀行収益の足を引っ張る住宅ローン
表の下に住宅ローンの残高と運用勘定に占める割合、変動金利の表を書きました。変動金利の0.975%は資金運用勘定の利率1.45%〜1.56%を一貫して下回っています。
つまり今の所、住宅ローンは銀行全体の収益の足を引っ張る存在なんですよ。
したがって、三井住友銀行の住宅ローン残高は右肩下がり、割合も右肩下がりになっているんです。
銀行にとって住宅ローンは超優良融資案件ですが、収益性が悪過ぎるとやはりマズイ訳です。
変動金利0.625%では3千万円貸しても儲けはたった4万円
三井住友銀行の2016年2月の変動金利は0.625%ですが、これでどの位儲かるのか計算してみましょう。
- 変動金利 プラス0.625%
- 調達勘定金利 マイナス0.31%
- 銀行が負担する団体信用生命保険料率 マイナス0.17%
0.625ー0.31-0.17=0.145%が銀行の利益です。
3,000万円×0.145%=4.35万円
実際には毎月返済して行きますから上記より小さくなりますよね。3千万円も投入して1年で4万円位しか儲けが無いんですよ。
やってられませんよね。
2.利上げになっても返せる債務者を選りすぐっている
それでも銀行が融資するのは『完済までに、いつか利上げが来る』方に賭けているからです。
ということは、銀行が想定する利上げ後の金利水準で無理なく返済できるかどうかが審査のポイントなんです。
厳しく感じるのは、現時点の変動金利の水準の元利均等返済額を基準に考えるからであって、銀行の審査の基準はさほどブレていない。というのが実際の所なんです。
マンションの販売会社は『月々8万円』と言って売り込みますが、銀行の審査担当者はその1.25〜1.5倍位で返済出来るかという判断をしているのです。
3.販売会社の売り文句と銀行の審査のギャップを理解する
堅苦しい文章だけでは疲れてくるでしょうから、ちょっと会話形式を挟みたいと思います。
決断しても住宅ローンの審査に通らなければ、住宅を手に入れることは出来ません。当り前のことではありますが、物件を選ぶ時にはつい忘れてしまいがちなんですよね。
ある新築マンションのモデルルームでの所長と新人営業マンの会話
「オウ、例の若夫婦の契約取れそうか?取れたら初契約やな!」
「所長ありがとうございます。今日はローン審査書類の提出まで漕ぎつけました。所長の教え『お客様の心に寄り添う』のおかげです」
「そうかそうか、で、審査は通るんやろな?確か結構高階層の部屋が希望やったな、昨日ご両親が見に来たときに贈与税の減税住宅資金を親から贈与してもらう時の注意点2016 - 千日のブログの案内、したか?」
「それは…あの」
「してないんか?」
「旦那さんの方が『親の世話にはなりたくない』って言ってましたし、その気持ち分かりますから…所長も『お客様の心に寄り添う』って言ってましたし」
「オイオイ、都合のエエ所だけ俺の教えを引き合いに出すなよ。旦那の収入やったら今の変動でもカツカツやろ」
「ええまあそうですが、変動が安い今こそチャンスやって所長言ってましたよね?」
「それは、審査が通ることが前提や。そもそもこれで審査に通らんかったらどうなるんや?そういう青いプライドに拘る旦那のことや、ウチのマンションに難癖つけて他へ行ってしまうんちゃうか?」
「いえ、手付はもらってますからそれは無いです」
「なおのことやろ。オマエは『ローンの審査が通らなかったから頭金貸してくれ』か『住宅ローンの保証人になってくれ』て親に頭下げさせるわけや。オマエが上手いこと『相続税の節税になります』ってご両親に説明しとったら、そういうリスクを回避できたかもしれんのやぞ」
「たぶん大丈夫です、通りますって」
「オマエが審査するんやったら俺も何も言わんけどな。まだ独り立ちは早かったみたいやな。頭冷やしてよう考えろ」
「………」
同じころの銀行の審査部での会話
「調査役、この案件どうですか?現時点の当行の変動金利で元利均等返済額が収入のちょうど4割です。厳しいとは思いますが、勤め先は一部上場企業ですし…通していいですかね?」
「アカンに決まっとるやろ、皆まで言わせんな。どうしても貸したかったら、親を保証人につけるか、頭金の増額で元利均等返済額を減らさせろ」
「…ハイスンマセン」
4.変動で落ちても固定では受かる可能性がある
過去に事故履歴が無いのに審査に通らない理由は、大抵が収入に対する返済額の大きさです。だいたい返済額が収入の4割を超えると通りません。
現在の低金利で住宅ローンを融資する銀行が考えていることは、こうです。
- 現時点の赤字は覚悟している。
- 今後、政策金利が上がったときに利上げをして初めて銀行の利益になる。
- 利上げになって返済できなくなったら、債権の管理コストがかかってしまい最後まで赤字になってしまう。
こういったリスクについてはあくまで保守的に見積もるのが銀行です。もちろん支店長のカラーによって少し差異はありますので一概にこの割合でなければということは出来ません。
- 今後の政策金利の引き上げのタイミング
- 政策金利の引き上げ幅
これらが分からない以上、銀行もそのタイミングと引き上げ幅については保守的に見積もるわけです。
ならば、固定金利にすればいいんです。固定金利については、借入時点の金利で固定されますので、金利変動リスクがありません。フラット35の全期間固定金利も現在はかなり低い水準です。
- 返済期間21年以上35年以下 1.480%~1.920%
- 返済期間20年以下 1.210%~2.230%
(2016年2月実行のフラット35の適用金利)
もちろん変動金利よりは毎月の元利均等返済額が高くなりますが、借入額を減らして毎月の返済額を収入の4割未満に抑えれば、審査に通る可能性がグッと上がるでしょう。
以上、千日のブログでした。
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