入院時に「差額ベッド代がかかる」って聞いたんだけれど、どういうことなの?
【登場人物紹介】
差額ベッド代がかかる病室を意味する「特別療養環境室」は、次の4つの条件を満たした病室のことをいいます。
個室だけじゃなくて少人数部屋でも差額ベッド代がかかる場合があるのね!
実際にはどれくらいかかるんですか?
特別療養環境室は、健康保険適用対象外です。そのため、入院費用がかさんだ場合に高額療養費制度(注)を利用することもできません。全額自己負担になってしまいます。
1日あたりの室料は、平均で5,829円(平成23年厚生労働省調査)です。
これはあくまで平均値なので、東京などの都心部ではさらに高い金額になることも考えられます。
(注)高額療養費制度とは、1か月の医療費の自己負担額が一定額を超えた場合、請求することでその超過額を払い戻してもらうことができる制度。
差額ベッド代がかかる部屋に入院することになったら、絶対に室料を払わなくてはいけないの?
病院側が差額ベッド代を請求できない場合には3種類あります。
これらの場合には「患者が差額ベッド代のかかる部屋への入院を希望したわけではない」ので、差額ベッド代が請求されることはありません。
確かに、院内感染を防ぐために個室へ移された場合にも差額ベッド代を請求されるのはおかしいですよね。
ということは、裏を返せば、差額ベッド代が請求される場合は「同意書による確認」が行われているということになります。
同意書にはその部屋の設備や料金について明示されており、患者(またはその家族など)がその内容の説明を受けます。その上で署名をすれば差額ベッド代が請求されます。
差額ベッド代を支払いたくない場合は、同意書にサインをしなければ請求されないということです。
現実には、同意書にサインをしない、差額ベッド代の支払を拒否するというのは難しいものです。
緊急入院しなければならないにもかかわらず、「同意書にサインできないなら、当院では受け入れできません」と言われてしまったらどうしようもありません。
他にも、「同意書にサインしなかったせいでちゃんとした治療をしてもらえないかもしれない…」といったことが心配になってくるかもしれません。
このように、同意書のサインは拒否しにくいかもしれませんが、病院側に交渉することは可能です。大部屋が希望であることや経済的に厳しいということを伝えれば、室料の交渉ができる場合もあります。
また、大部屋が空いたときには必ずそちらに移して欲しいと伝えておくのも効果的です。
差額ベッド代がかかる部屋への入院日数を少しでも減らせるかもしれません。
同意書にサインするときにこのことを書いておき、特別療養環境室への入院を希望していない証拠を残しておくといいでしょう。
ここまでしていても、空いている大部屋に移してもらえなかったり、請求できない場合にあたりそうだったりして、差額ベッド代が請求された場合には、相談できる窓口があります。
社会保険事務所や厚生労働省の厚生局が、トラブルがあった場合の相談窓口になってくれるので、困ったときはひとりで悩まずに連絡してみましょう。
差額ベッド代のことはよくわかったけど、じゃあ、それをふまえて医療保険の入院給付金額はいくらにすればいいんでしょうか?
生命保険文化センターが平成22年に調べた結果によると、入院時の自己負担額は1日あたり平均16,000円となっています。これには、治療費や差額ベッド代のほか、食事代の一部負担や日用品にかかった費用も含まれています。
こういった自己負担額をまかなうことができるのが医療保険です。
ただ、医療保険は、病気にかからなければ掛け捨てになる保険です。そのため、どこまでを医療保険に頼るかは、人それぞれです。
「貯蓄でも備えているから、差額ベッド代分くらいでいい」と考える人もいれば、「入院したときにかかる費用をできるだけ保険でまかないたい」と考える人もいるでしょう。
今のあなたの生活や貯蓄の状態にあわせて、適切な入院給付額を決めましょう。