習近平政権としては、経済が急速に悪化していく中、もう1元たりとも海外に持ち出してほしくない、海外で消費してほしくないということです」
日本を誉めるのも許さない
元安が急激に進み、資本の流出が止まらない。そんな中、新たな法律も準備中だという。
「それは、年間10万元(約180万円)以上の買い物を海外でしてはいけないという法律で、いわば『爆買い禁止令』です。早ければ3月の全国人民代表大会に提出されて成立する見込みです」(同・李氏)
習近平政権が突如として「爆買い禁止令」に踏み切った理由は、他にもあるという。中国共産党関係者が解説する。
「安倍晋三内閣は暮れの12月24日、'16年度予算案を閣議決定したが、防衛予算は前年度比1・5%増の5兆541億円と、初めて5兆円の大台を突破した。しかも一番手厚く増やすのが、中国の脅威に対応する島嶼防衛予算だという。
つまり、中国人が日本で『爆買い』したカネが、わが国への銃砲に使われるということではないか。日本軍国主義の復活を、わが国民が手助けしているようなものだ。習近平主席は、そのことに怒り心頭で、『中国人なら中国の物を買って使えばいいだろう』と述べている」
「爆買い」イコール「尖閣防衛費」とは、何とも短絡的な発想だが、これが「中南海」(中国共産党最高幹部の職住地)の空気というものかもしれない。
北京のある旅行代理店の海外旅行担当者も証言する。
「当初は、中国で蔓延しているPM2・5の公害が日本にないことから、『洗肺遊、日本藍』(肺を洗う旅、ジャパンブルー)というキャッチフレーズで日本旅行を宣伝していました。ところが内部で『敵国を誉めるとは何事か』という批判が出て、『避寒遊、説走就走』(避寒の旅、思い立ったらすぐ行こう)という東南アジア向けの宣伝に変えたのです。
バリ島があるインドネシアはビザ免除、シンガポールは10年ビザ、タイとベトナムも昨年11月に、ビザの大幅緩和に踏み切った。つまりビザ取得が面倒くさくて寒い日本よりも、温かくてすぐに行ける東南アジアに行こうというわけです。
実際、日本円のレートが1年前に較べて1割近く悪化していることや、日本のホテル代高騰で、日本ツアーが1万元(約18万円)を超えるようになったことも関係し、春節の書き入れ時に、日本旅行はそれほど伸びていません」