Fintechの正体

実体化するFintech(後編)--金融機関の選別に向かう2017年

瀧 俊雄 2016年02月08日 07時30分

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 前編では2016年のFintechの動きを検討した。後編では2017年以降のFintechを予測する。

キャッシュレス化と決済の事前登録化

 2017年以降の社会を考えた際のFintechの重要テーマは何であろうか。

 昨今取り上げられることの多いブロックチェーンや分散型台帳の技術は、その新しい技術的特性や、改ざんの難しさや可用性の高さといった側面において、今後とも実証が進んでいくものとなる。そのいずれ見出されるであろう価値と、金融機関での実用化については、テーマが専門的、観測的になることもあり別稿に譲ることとしたい。

 一方で、非常に確度の高いテーマとして、キャッシュレス化と、決済のシームレス化がある。

 キャッシュレス化については、2020年の五輪開催を前に、訪日観光客のインバウンド需要喚起に向けて、国をあげての少額決済におけるカード対応が進んでいく見通しである。すでにコンビニではカード利用が当たり前となった中で、クレジットカードが利用できる商圏はより広がっていく。


 この15年間で、SuicaやPASMOなどの交通系電子マネーは普及を遂げ、交通機関のみならず通常の生活支出にも用いられるようになった。これらをより便利にするおサイフケータイに加えて、Apple Payも日本でも広まるようなシナリオも含めると、従来現金によって担われてきた決済市場が、大きく電子化されていくトレンドがある。この変化は、現金の引き出し需要そのものであるATMに通う回数を減らしていくことにもつながる。

 そのトレンドに加えて、前編でも取り上げたキャッシュアウト政策により、現金を引き出す需要はATMから、コンビニやスーパーなどのレジへと移行していくこととなる。

 このようなキャッシュレス化された社会のイメージは、経験しないと分かりにくい類のものであるが、一例として筆者が2010年前後に米国に留学していたころの経験を挙げると、カード社会でもあり、その限られた現金需要もスーパーのキャッシュアウトで賄われていたため、銀行のATMには2年間で5回ほどしか行かない状態であった。引き出し時も、一度に200ドル程度の金額であったので、累計で12万円程度しか現金需要がなかった計算になる。

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