北京のランダム・ウォーカー

北朝鮮ミサイル発射!
それでも中国が強硬姿勢を取れない理由

緊張を増す米中のパワーバランス

2016年02月08日(月) 近藤 大介
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ソウル駅構内のモニターでニュースを見つめる韓国市民 〔PHOTO〕gettyimages

3分35秒の「特別重大放送」

2月7日日曜日の昼12時に、かつて「金正日の愛人」と噂された「努力英雄称号」を持つ朝鮮中央テレビの李春姫人民放送員(72歳)が、彼女が一番のお気に入りというピンクのチマチョゴリを着て、鼻を膨らませながら、晴れがましい口調で、「特別重大放送」を行った。

その放送は二つの部分から成っていた。

一つは金正恩第一書記(33歳)が、「地球観測衛星『光明星4号』発射命令書」に署名したというニュースだった。テレビ映像に映し出された「命令書」の文字を確認すると、金第一書記は、父親似の斜体がかった文字で、次のように署名していた。

〈 党中央は衛星発射を承認する。2016年2月7日午前9時に発射しなさい。金正恩 2016.2.6 〉

もう一つは、2月7日に朝鮮民主主義人民共和国国家宇宙開発局が発表した「報道」を、李春姫が読み上げたものだ。それは、全文以下の通りである。

〈 地球観測衛星「光明星4号」が成功裏に発射された。朝鮮民主主義人民共和国国家宇宙開発局の科学者と技術者たちは、国家宇宙計画5ヵ年計画の2016年計画に従って、新たに研究し、開発した地球観測衛星「光明星4号」を、軌道に進入させることに、完全に成功した。

運搬ロケット「光明星号」は、主体105年、2016年2月7日9時に、平安北道鉄山群の西海衛星発射場から発射され、9分46秒後の9時9分46秒に、地球観測衛星「光明星4号」を、自身の軌道に正確に進入させた。

「光明星4号」は、97.4度の軌道傾斜角度で、近地点高度494.6km、遠地点高度500kmの極軌道を周回していて、その周期は94分24秒である。「光明星4号」には、地球観測に必要な測定機材と通信機材が積まれている。

「光明星4号」発射の完全なる成功は、偉大なる朝鮮労働党の科学技術を重視する政策の誇るべき成果であり、自主的な宇宙利用の権利を堂々と行使し、国家の科学技術と経済、国防能力を発展させていくにあたって、画期的なこととなった。

太陽の国、朝鮮の最大の祝日である光明星節が、日に日に近づいてきている。そんな中、2月の澄んだ青空に刻まれた、主体衛星の光芒とした軌道の煙は、わが国の宇宙科学者や技術者たちが、偉大なる金正恩同志と尊厳高いわが党、わが国家、人民に捧げる、最も清らかで忠誠心溢れる贈り物となった。

朝鮮民主主義人民共和国国家宇宙開発局は、偉大なる朝鮮労働党の科学重視政策を高く戴き、今後ともさらに多くの主体衛星を、万里の大空に矢のように降らせていく 主体105、2016年2月7日 平壌 〉

わずか3分35秒の「特別重大放送」だったが、長距離弾道ミサイルの発射実験成功を、北朝鮮ではこのように伝えたのだった。

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