昔の話になりますが、2000年にドットコム・バブルが弾けた時、最初の予兆は(設備投資が、なにかヘン?!“#$%&‘)という、漠然とした違和感でした。

1社がセールス・サイクルの延び(=つまり成約に持ち込もうと思っても、顧客がしぶって、なかなか商談が成立しないこと)を決算カンファレンス・コールで訴えたかと思うと、その後、チョロチョロ同様のケースを報告する企業が相次ぎ、その小川の流れのような落胆すべき決算は、次第にハイテク・セクター全体に広がって行き、最後は怒涛のような濁流となってすべてを呑み込んだのです。

先週、(ん、これって、何かヘン……)という事例が相次いで出ました。それはタブロー・ソフトウェア(ティッカーシンボル:DATA)と、リンクトイン(ティッカーシンボル:LNKD)の決算です。

これらは、どちらも企業向けに、比較的契約サイズが小さいソフトウェアないしサービスを売っています。ユーザーはフリーミアム・モデルを通じて入ってゆくため、ハードルは低いです。したがって、そのような「売りやすい」サービスが売れなくなるということは、炭鉱のカナリヤのように、ITセクター全体の変調を物語っているのではないか? というのが、金曜日に米国の投資家がパニックした理由です。

下は金曜日にこっぴどく売られた株をランダムにピックアップしたものです。

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もちろん、ダブローやリンクトインが壁にぶち当たった問題は、それらの企業に固有の問題なのかも知れません。

でもIT支出がちょっと変容しているという兆しは、今回の決算発表では他にも幾つか例が見られました。

たとえばインテグレーテッド・デバイス・テクノロジーズ(ティッカーシンボル:IDTI)はデータセンターのサーバ向けタイミング・デバイスを売っている会社ですが、今期はそのモメンタムに陰りが見えました。

またフェイスブック(ティッカーシンボル:FB)は、たいへん素晴らしい決算を出したのですが、それはユーザーが増えているからでは無くて、財務コントロール、もっと突き詰めて言えば費用の切詰めが素晴らしかったのが好決算の主因でした。なおフェイスブックは「来期は、ビジネスがスローダウンする」と決算カンファレンス・コールで明言していましたが、それを気に留めた投資家は居ませんでした。

同様にアルファベット(ティッカーシンボル:GOOGL)の決算でも、費用のコントロールが、良い数字を出してくるひとつの大きな要因でした。

もちろん、未だ「シリコンバレーは、終わった」と結論付けるのは早すぎます。でも目先はこれから発表される残った決算を、よく見極める必要があるように思います。