モトクロスのSEKI Racing MotoRoman & KBF・RS代表の佐藤さんさんにお話を伺いました
‐SEKI Racing MotoRoman & KBF・RSについて教えてください
運営母体は有限会社モトロマンです。チームモトロマンとして1985年に設立し、1997年に現在のチーム名に変更しました。また、本田技研工業のモータースポーツ部が統括するメーカー系のサテライトチームでもあります。
会社を設立する以前は私も本田技術研究所の社員であり、数々のモトクロス競技車両のワークスマシン開発を担当しながら、ワークスの選手も兼務していました。そこで常に海外と日本を行き来していたのですが、その経験が現在のチーム運営にも大きなナウハウや活動ポリシーとなって活きていますね。
‐チームの特徴を教えてください
チームモトロマンは人材育成に積極的に取り組んでいます。今のライダーは4、5歳からバイクを始める選手が多いです。その中でもいい成績を残して私の目に留まる選手をチーム契約しています。その頃にはすでに15歳くらいで、選手の経験としては10年程度になっていますね。そこで培った経験や知識はやがて、海外のレース活動にまで広がり、その成果が選手の成績やエンジニアとしての技術向上につながって活きてきます。これが大きな人材育成になっていくんです。
世界のモトクロスメーカーのTOP4は日本メーカーです。その技術を受け継いでいくためには人の力が大きくものをいいます。そのためにも我々は人材の確保と育成を行い、ライダーとしての経験を積むことで、マシンの評価能力や例えばタイヤやサスペンションを始め次世代のモトクロスマシンの開発などで、新しいアイデアを提供するためにもその経験を活かしてもらいたいと思っています。
大手の会社は現場の技術者がどんどん若返っていきます。そうすると過去の歴史を知らない人が多くなってきます。そうすると我々の様な外部のチームの方がレース運営面に関しては幅広い人脈や業界に根付いた協力関係を構築しています。 また、技術面でもレース現場でのライダーとマシンのマッチングなど総合的な評価を持って、より完成度の高いレースマシンになる、ノウハウが残っていることが多くなります。レースには図面やデータに残らない大事なことがたくさんあるんです。こういった経験を積んでいくことで関連企業様の繁栄に貢献してほしいと願っています。
さらにサッカーや野球などたくさんスポーツがある中でモトクロスを選んでくれる少年少女が多くなってくれるようになって欲しいですね。もちろんレースで表彰台に立つことも重要ですが、 チームでの経験を活かしてメーカーの技術者や、また、あらゆる職業についても、レース経験で得た目標うに向かう信頼関係構築の大切さや、一人では何も出来ない事を教訓として組織の中で他人への思いやりを持って、信頼を得て大きなチャンスを得る人材として活躍し次につなげていってもらいたい、社会に大きな貢献をしていきたいですね。
ちなみに今までにA級選手だけで100人以上送り出しています。また、メーカー系に就職した人も30人くらい、変わったところだと新人王を取った競輪選手が一人いますね(笑)
‐人材育成をするにあたって一番重要視することは?
時間の逆算、気配りが大切です。スケジュールが決まっている中で五感を研ぎ澄まし、先読みをした準備をできるような人材でないと役に立ちません。当然これは 社会に出ても必要なことです。レースでは特に重要でボルト一本の閉め忘れが致命的な事故につながったりします。求められるレベルは非常に高く、ちゃんとできていて当たり前。しかし、レースにはさまざまなトラブルがつき物です。
例えばライダーが転倒してハンドルが曲がってしまった。しかもライダーによってはハンドル幅一ミリ単位でセッティングが違ってくるんです。これをどのように対処するか。そこで時間をしっかり逆算してレースに間に合わせるようにスケジュールを 組みなおさなくてはならない。何があってもスタートグリッドの時間に間に合わせなくてはなりませんから。そのためにはあらゆる状況を想定し準備をしておかなければならない。よく段取り八割と言われますが、「レースは準備で決まる」、リスクマネジメント・オーガナイスをしっかりしておかないといけません。
さらに準備をするにあたって大切なのがしっかり確認をすることです。例えばある数値をエンジニアに聞いたとします。そのときの回答が「10ぐらいです」、 “では”駄目なんです。そこはしっかりと確認する。あいまいな場合は「確認します」と言ってしっかり確認してから正確に「10です」と答えないといけません。「〜ぐらい」と返事をしてはいけませんね。
また選手は、レース前は特に過緊張の状態にいるのでチームスタッフはそのケアもしなければなりません。例えばそろそろ雨が降りそうな雲行きになってきたとします。そんなときはスペアホイールに雨用のタイヤを装着し、わざとライダーに見えるように準備しておきます。こうすることで「ライダーには雨が降っても準備ができているんだ、大丈夫なんだ」と安心してレースだけに集中できる環境を整えていきます。心配をひとつひとつ取り除いていってあげる、こういったことが人として五感を磨いていくには非常にすばらしい体験学習の場だと思います。そうすることによって相手の気持ち・心理状態を考えてベストな環境を構築していくことができます。
‐チームモトロマンに所属する選手にはどういった方がいらっしゃいますか?
現在、全日本モトクロス選手権のレディスクラスを三連覇している益春菜(ます はるな)選手がいます。彼女は現在東京の専門学校に通いながら練習もし、レースにも参戦しているんです。全国をまわり時には海外のレースにも参戦すると同時に学校に通っているのは非常に大変だと思いますが、彼女はそれをしっかりと両立しています。
それはやはり準備が大切なんです。一年間の工程表をしっかりと作成し、自分がいつ勉強し、いつ練習や大会に参加するかをしっかりと計画する。さらにその合間に雑誌の取材やTV出演もあるんですよ、相当大変ですよね(笑)でもそのおかげでしっかり卒業もきそうですし、学校の同級生や先生にも信頼を得る努力を怠ってませんね。
他にも星野優位選手(IA2クラスチャンピオン候補)や富田健二、杉山和起(今期、マシン開発の会社に就職)、片倉久斗(マシン開発のエンジニア)、飯田義明(期待の若手高校生)、大木新太(アマチュア全国大会優勝の中学生)などの選手(ライダー)が在籍活躍しています。
‐レースなどで実際に体験したトラブルに関するエピソードがあったら教えてください。
たくさんありますよ(笑)最近だと益春菜選手がアメリカでWMAに挑戦したときですね。その前の週に全日本選手権で転倒して腕にけがを負ってしまったんですよ。ものすごい腕が腫れてしまったのですが、それでもなんとか完走して二位に入りました。そしてその状態のままアメリカ入り、全米選手権シリーズWomen’sクラスで見事総合4位になりました。これはもちろん彼女の根性や意志の強さを表すエピソードですね。 そして、世界のWomen’sエリートTOP10ライダーに見事選ばれました。
それと、その時のWMAではチームとしてもしっかりと彼女をサポートすることができました。レースの前にはプレスデーと呼ばれる、ランキングが上位か地元の選手しか走行できない時間が約20分間あります・大会PRの為のフォトセッションも兼ねます。我々としては少しでもコースに慣れるために走っておきたい訳です。だからダメもとでこのプレスデーで走行できるようにアクションし、そうしたらなんと特別走行の許可が出て、走らせてもらえることになったんです。
この走行で益選手も緊張がほぐれていい結果に結び付いたんだと思います。何事も少しでもチャンスがあれば欲を出していくことが大切ですね。だめなら私が謝りに行けば済みますからね(笑)特にアメリカでは引っ込み思案はだめ、そういったチャレンジは必要です。 それで、翌日のレースでは全米の強豪を相手に堂々と見事TOP走行もしましたので実力を万人に立証できました。一種の賭けでしたね(笑)ほっとした際どいエピソードです。
‐最後に今後の目標を教えて下さい
4つのタイトルを獲ることです。ひとつは益選手の4連覇です。IA2クラス星野選手のタイトル獲得、大木選手の関東選手権NAクラスの250ccクラスとオープンクラスのダブル優勝。 併せて4つのタイトルですね。 目標は、将来的な世界チャンピオンを出すことです!
目的は、この活動を通じて魅力人間に成って社会人として成功してくれる事です!
‐ありがとうございました!
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