協定の発効に向けた各国の動きは
最終更新日:2016年2月5日
TPP署名式
日本やアメリカなど12か国が参加したTPP協定の署名式が、日本時間2月4日、協定文書のとりまとめ役を務めたニュージーランドのオークランドで行われました。TPPは、今後、協定の早期発効に向けて各国で議会の承認を求めるなど国内手続きが本格化することになります。
発効の条件
協定は、2年以内に参加する12の国すべてが議会の承認など国内手続きを終えれば発効します。しかし、2年以内にこうした手続きを終えることができなかった場合には、12か国のGDP=国内総生産の85%以上を占める少なくとも6か国が手続きを終えれば、その時点から60日後に協定が発効する仕組みになっています。
2年以内にすべての国が国内手続きを終了できなかった場合でも、日本のGDPが17.7%、アメリカが60.4%と、この2国だけで加盟国の全体の78%に達するため、日本とアメリカ、それに、GDPが比較的大きな4か国が手続きを順調に終えれば、TPPは2018年の4月に発効することになります。
アメリカの動き
TPP協定の署名を終え、アメリカのオバマ大統領は声明を発表し、「TPPはアメリカの主導権を高め国内に雇用をもたらす協定だ。アメリカからの輸出を増やし協定の恩恵がただちに及ぶよう議会の民主、共和両党と協力しできるだけ速やかに手続きをすすめ年内にTPPの承認を得たい」と述べました。
署名のあと課題となるのが、協定発効のために必要な議会の承認などの国内手続きです。アメリカでは、TPPを巡って、▽与党・民主党が雇用の流出への不安を、▽野党・共和党が知的財産の保護を巡る不満をそれぞれ訴えていて、日本の政府関係者は、アメリカ議会の承認は早くても次の大統領が決まる11月以降ではないかとみています。
日本の動き
日本政府は、TPP協定の署名を受けて、今開かれている通常国会に協定の承認を求める議案と、農家への支援策などを盛り込んだ関連法案を提出し、国会承認や関連法案の早期成立を目指すことにしています。
政府としては、先に公表した試算に基づいて、TPPへの参加は、GDPを約14兆円押し上げる経済効果があるなどとして、理解を求める方針ですが、野党側には、根強い反対論や慎重論があり、夏の参議院選挙を前に、激しい論戦が展開される見通しです。政府・与党は、6月1日まで開かれる今の国会での承認を目指しています。
カナダ
大筋合意のあとに政権交代があったカナダは、今回の署名にあたって直前まで態度を明らかにしなかったことから、今後の国内手続きには時間がかかるという見方も出ています。
オセアニアなど
2月4日に行われたTPP署名式の共同記者会見で、オーストラリアとニュージーランドの閣僚は、それぞれ近く、議会での手続きに入ることを確認したほか、シンガポールなども年内に承認されるよう努力する考えを示しました。
アジア各国が参加に関心
TPPを巡っては、ほかの国や地域からも参加の意向が示されています。今のところ、韓国、インドネシア、台湾、タイ、フィリピンの5つの国と地域が参加の意向を明らかにしています。署名式に先だって行われた閣僚会合では、韓国やインドネシアなどへの対応が議題に上がり、首席交渉官レベルで今後の進め方を検討するよう各国で指示することを確認しました。
日本政府としては、多くのメーカーが生産拠点を置くアジアで参加国が増えれば、自動車などの日本製品の輸出の拡大につながるとして、積極的に参加を支援していく方針です。
中国は警戒感
中国の習近平国家主席は、2015年11月にフィリピンで開かれたAPECの一連の会議で、TPP協定を土台に自由貿易の枠組みづくりが進むことに警戒感を示す一方で、中国を含むFTAAP=アジア太平洋自由貿易圏の実現に向けて主導的な役割を果たす意気込みを示しました。
FTAAPは、APECに加盟している21の国と地域全体で貿易の自由化を目指すもので、去年、中国・北京で開かれたAPEC首脳会議で、「可能なかぎり早期に実現する」とした首脳宣言が採択されました。
TPPの交渉を主導してきた日本とアメリカは、FTAAP構想を実現するにあたっては、高いレベルの貿易の自由化を目指すTPPを土台にしたいという立場です。これに対して中国は、アメリカ抜きでアジア地域での貿易の主導権を握りたいという思惑から、TPPの意義を強調する日米の動きに警戒感を持っているとみられます。