【球界ここだけの話(444)】
中日で、新任の加藤秀司コーチの静かな改革が始まっている。阪急、巨人などで通算2055安打、347本塁打を記録した67歳のチーフ打撃兼野手総合コーチが、キャンプイン前日に熱弁していた。
「最近の若い選手は、軽いバットを振っている選手が多いように思う。それじゃ飛ばないよ」
広いナゴヤドームが本拠地という不利はあるが、それでも両リーグ最少のチーム71本塁打はさびしい。そこで小笠原道大2軍監督らを育てた名伯楽は、バットの“重量化”を命じた。その1人が4年目の古本だ。
「900グラムから、930にしました。そりゃ不安はありますけど、遠心力を使わないと打てないので、飛距離は出る感じはします」
軽いバットのメリットは、最近の投手が使う“動くボール”に対応するためだ。だから、操作性に優れたバットが好まれる。それ自体は悪いことではないが、スイングまで小さくなっては意味がない。加藤コーチが目指すのは「振れる力」をつけること。バットを重くするのは、振るためのひとつの工夫だ。だが、逆に軽くした打者もいる。昨年にフルスイングで6本塁打を記録した福田だ。
「僕は少し軽くしましたよ。でもヘッドの重心が少し先にいっているので、振りにくさはあります」
バットの重心が先にいくことで、より遠心力が効くのだが、その分、スイング時に体の軸がしっかりしていないといけない、ということだ。福田はメーカーのバット工場にも足を運び、新たな相棒を注文した。加藤コーチはこうも言っていた。
「若い選手は、バットに対するこだわりが昔に比べると少ないかもしれない」
そんな心配も解消されつつあるのかもしれない。若竜がバットについて試行錯誤している。きつい練習だけが実力を伸ばすのではない。加藤コーチの新たな考えが、静かに浸透している。(長谷川稔)