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WHO ジカ熱 緊急事態宣言
2月2日 3時32分

WHO ジカ熱 緊急事態宣言
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胎児への影響も指摘され、中南米を中心に感染が急速に拡大しているジカ熱について、WHO=世界保健機関は、感染がほかの地域にも広がるおそれがあるとして、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言しました。
蚊が媒介する感染症、ジカ熱の患者が中南米を中心に急速に広がっていることを受けて、WHOは、日本時間の1日夜から、各国の専門家を電話でつないで緊急の委員会を開き、対応を協議しました。
その結果についてWHOのチャン事務局長が日本時間の2日未明、スイスのジュネーブにある本部で記者会見し、感染がほかの地域にも広がるおそれがあるとして、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言しました。
WHOによりますと、ジカ熱は、去年5月にブラジルで感染が確認されてからこれまでに中南米を中心に25の国と地域に広がり、感染者は、今後400万人に上るおそれがあるとしています。
ジカ熱は、新生児の脳が先天的に小さく、脳の発達に遅れがみられる「小頭症」との関わりも
指摘されていますが、予防のワクチンなどはありません。小頭症との関わりについてWHOのチャン事務局長も会見で「科学的にはまだ証明されていないが強く疑われる」と述べました。
またチャン事務局長は「妊娠している女性は感染が拡大している地域への渡航を延期することが望ましい」と述べたうえで「やむを得ず渡航する場合は、長袖や長ズボンを着用し、外出を控えるなど対策を講じてほしい」と呼びかけるとともに、各国に流行の拡大を防ぐための措置を徹底するよう勧告しました。

特に妊婦は渡航控える選択肢も

WHO=世界保健機関が緊急事態を宣言したことについて、感染症の問題に詳しい国立国際医療研究センターの大曲貴夫国際感染症センター長は「日本国内には、ジカ熱の患者はいないし、感染が拡大するおそれがあるわけでもない。ただ、今回のWHOの宣言を受け、ブラジルなどの流行地に渡航するかどうかをより慎重に考えるタイミングに来ている。特に妊婦については本当に必要な渡航なのかをしっかりと考えたうえで、控えるという選択肢も検討することが望ましい。また流行地に向かう方は肌の露出を控え、虫よけスプレーを使うなどして蚊に刺されない対策を徹底してほしい」と話しています。

症状と対策

ジカ熱は「ジカウイルス」を持つ蚊に刺されることで発症するウイルス性の感染症です。感染すると3日から12日間ほどの潜伏期間の後、発熱や頭痛、それに関節痛などの症状を引き起こします。ワクチンや特効薬はなく、対症療法が中心となりますが、同じように蚊がウイルスを媒介とする「デング熱」と比べると比較的症状は軽く、多くの場合1週間ほどで回復します。また感染しても実際に症状が出る人は4人に1人程度という報告もあります。
ウイルスを媒介するのは主に熱帯や亜熱帯に生息する「ネッタイシマカ」や、日本にも生息する「ヒトスジシマカ」です。去年5月以降にブラジルで感染が確認されて以降、中南米を中心に24の国や地域に広がり、アメリカやヨーロッパでも流行地を訪れた人たちが帰国後にジカ熱を発症するケースが報告されています。
一方で、ジカ熱は▽患者の血液からウイルスを検出できる期間が僅か数日なことや▽他の蚊を媒介とする感染症と症状が似通っていて区別が難しいため、正確な患者数を把握するのは難しいのが実態です。
日本国内では3年前に当時、ジカ熱が流行していたフランス領ポリネシアから帰国した27歳の男性が発症するなど、これまで渡航歴のある3人がジカ熱と診断されていますが、国内で感染した例はありません。
専門家は仮に流行地で感染した人が帰国したとしても、国内では、冬の時期、蚊は、活動していないため感染が広がる可能性は低いと指摘しています。一方で流行地に渡航する場合は、蚊に刺されないよう、▽皮膚を露出しないように長袖を着ることや▽虫よけのスプレーの使用、それに▽蚊帳の中で寝るなどの対策を徹底することが必要だとしています。

小頭症との関係は

ブラジルでは、ジカ熱の流行と同じ時期に「小頭症」の子どもが相次いで報告され、関連が指摘されています。「小頭症」は脳の発達が遅れることで知的障害などを引き起こす病気です。
病気の主な原因は▽遺伝子の異常や▽妊娠中に母親が何らかのウイルスに感染することで、赤ちゃんにも感染してしまうことなどです。ブラジルではジカ熱の流行前に報告された小頭症の患者が▽2010年は153人▽2011年は139人▽2012年は175人▽2013年は167人▽2014年は147人だったのに対し、去年10月以降ではこれまでに4000人以上が報告される事態となっています。
▽亡くなった小頭症の赤ちゃんの血液や▽出産後の母親の羊水からジカウイルスが検出されていることからWHO=世界保健機関は「関連が強く疑われる」としています。
またブラジルの保健当局によりますと「小頭症」になる最も大きなリスクとして妊娠初期のウイルス感染が挙げられていますが詳しいことはまだ分かっておらず、引き続き、原因やリスクを明らかにする研究が行われています。世界的に感染拡大への危機感が高まる中、流行地への妊婦の渡航を控えるよう呼びかける国が相次ぐなど、「ジカ熱」の流行は社会に大きな影響を与えています。日本の国立感染症研究所は「小頭症との関連について詳細な調査結果が出るまで、可能な限り妊婦の流行地への渡航は控えたほうがよいと考える」とする見解を発表しています。

WHO 緊急委員会とは

WHO=世界保健機関は、2007年以降、流行が拡大するおそれがあると判断した感染症について、緊急の委員会を開いて対応を協議しています。
協議では、ウイルスの感染状況のほか、国や地域を越えて感染が広がるなど、深刻な状況だと判断した場合、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言します。
WHOは、宣言を通して感染のさらなる拡大を防ぐために各国がとるべき措置などを勧告し、感染症への警戒を呼びかけます。今回の委員会のメンバーは、WHOが任命したウイルス学や虫が媒介する感染症に詳しい専門家のほか、各国の保健当局の担当者など12人で構成されています。感染症への警戒を呼びかける緊急事態は、これまでに、▽2009年の豚インフルエンザのほか、▽おととし、ポリオやエボラ出血熱の感染が拡大した際に出されています。

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