文/ジョー・ノセラ
毎夏恒例の「アスペン・アイデア・フェスティバル」。これは、あり得ないようなことから重要なことまで、ありとあらゆることを話し合う集まりだ。昨年の中心トピックの一つは「職(jobs)」だった。
米国はどうやってスキル・ギャップを解消するのか?
将来の、望ましい中産階級向けの職はどこから生まれるのか?
この会合では、職創出戦略としてのインフラ支出や、エネルギー源の解放により職を生み出すことを切に求める声が聞かれた。イノベーションこそが望ましい職をもたらすと主張する者もいれば、ロボテックなど、よい職を破壊するイノベーションもあると指摘する者など様々な講演者がいた。
人間志向型の経営戦略
そして、ゼイネップ・トンが登場した。
M.I.T.スローン・スクール・オブ・マネジメントの非常勤准教授で40歳になる彼女は、昨年のアスペンで最も急進的でありながら、かつ最も示唆に富むアイデアの一つを提示した。
従業員がまともな生活を送れる企業は、福利厚生なしの最低賃金で労働コストを抑えようと躍起になる企業と全く同じように利益を出せる、というのが彼女のビッグ・アイデアだ。
それどころか、収益性がより高くなることもあると言う。ちなみに、「まともな生活」には、賃金だけでなく職場における目的意識や権限の付与なども含まれている。企業がそれを実現するには、彼女が言うところの「人間志向型経営戦略」を導入する必要がある。
もちろん同准教授は、それは「すぐに達成できないし、容易なことでもない」と認めている。しかし、企業にとっても国にとっても、それは実現に向けて努力する価値があるものだと言う。彼女の主張は、全くもって正しい。
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