フェラーリの「独立」は何を意味しているのか
フィアットへ下克上、自由にはリスクが伴う
流麗なデザイン、高い走行性能、官能的なサウンド――。モータースポーツの最高峰、F1での活躍も相まって、クルマ好きでなくても、誰もが知り、憧れるフェラーリ。イタリア・モデナという片田舎を発祥の地とするキング・オブ・スーパーカーブランドが、約87年の歴史において重要な局面を迎えている。
フィアット傘下から独立したフェラーリ
1月3日、フェラーリはフィアット・クライスラー・オートモビルズ(FCA)からの分離・独立を完了した。10%の株式上場を目的として昨年10月にニューヨーク証券取引所(NYSE)へ、同12月にはミラノ証券取引所へも上場。FCAは残る10%をフェラーリ家に、80%をフィアットグループの株主へ割り当てた。1969年にフィアットの傘下に入って約47年。フェラーリは再び独立企業となった。
2015年10月21日のNYSEで行われたフェラーリの新規株式公開(IPO)。初値は52ドルの公開価格を上回り、初日の時価総額は日本円にして1兆2500億円あまりをつけた。相場が違うものの、その1年前にFCAが2014年10月にNYSEへ上場した直後の時価総額は約1兆5000億円。フェラーリは簿記上6000億円程度の企業価値という、自動車業界の中ではまさに中小企業ながら、そのブランドの「のれん」が持つ含み資産ははるかに事業規模が大きい自動車メーカーにひけを取らない。
株価収益率(PER)30倍強という数字を見ても、それはまさに自動車メーカーというよりもアパレルや、宝飾品、高級時計ブランドの範疇に入る。まさにモデナのスーパーカーブランドが広く一般から評価されたといえる。
このフェラーリの上場と独立は、いったい何を意味するのだろうか。それを読み解くためにはまず、2人の男の闘いと企業としてのフェラーリの歴史を理解しておく必要がある。