経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の教え

無限ループのデフレ日本

2016年02月07日 | 経済
 先週金曜日に発動された日銀の「三次元緩和」だったが、円・株ともに元の水準へと戻り、「三日限緩和」に終わった。この水準で固定化する働きを見せるかは、これから、マーケットが教えてくれる。他方、10-12月期GDPのマイナス成長が確実視される中で、企業収益にも陰りが出てきた。これは税収にも響いて、緊縮欲を刺激しよう。金融緩和による回復、緊縮財政での失速、そして、更なる金融緩和の催促という、無限ループに終わりは見えない。

………
 昨日の日経は、「上場企業が増益を確保 今期は内需が下支え」と伝えていて、前向きな感じを出しているが、3か月前は「上場企業16年3月期は8%増益」(11/7)だったから、今回の「3%弱の増益」とは開きがある。原因は、「10〜12月の3か月でみると経常利益は前年同期比で5%減」となったためである。内需企業が牽引しているとは言え、マイナス成長になっていなければ、恩恵はもっと大きかったはずだ。

 今週は、サイバー攻撃で4日間もHPの閲覧ができなかったものの、12月税収がオープンになった。これを反映させた2015年度の税収予想のメンテは、軽く済むと思っていたのだが、企業収益がこの有様である。法人税収の大幅な改定をせざるを得ず、下表のとおり、予想方法を変えて、やり直すことにした。結果は、58.4兆円と、0.4兆円の下方修正である。補正予算からの上ブレは2.0兆円となる。

 これまで、法人税は、証券各社の企業業績見通しに基づき、二桁増としていたが、対前年度決算比+6.4%である補正後の予算額を、そのまま採用することにした。したがって、法人税の上ブレはゼロになり、予想を引き下げる最大要因となった。なお、3月初めに、証券各社の新たな見通しが発表されるので、これを踏まえつつ、再度、検討するつもりである。

 また、所得税については、12月までのトレンドを5月税収まで伸ばす方法とした。補正からの上ブレは0.5兆円弱であるが、株価下落を踏まえると、資産所得からの目減りも頭に入れておく必要があろう。他方、消費税は好調さが続いており、増税前の2014年度の1.69倍になると予想している。上ブレは1.2兆円に及び、1%当たりは2.9兆円で、2000億円余計に収税できる勘定だ。

 金融緩和による税収増は脆いものであり、円・株の動向に左右される。本来は、内外の資産からの所得が好調なうちに、金融緩和の効果を所得増から消費へと波及させ、物価を高めて、税収を堅実なものにしていくのが在るべき姿だ。しかし、そうなる前に、国民の生活水準を下げてでも、早々に税で吸い上げてしまうから、いつまでたっても、不安定さから抜け出せず、「もっと財源を」となるのである。 

(表)



………
 振り返れば、1997年に消費増税でデフレに転落して以来、金融緩和で小康を得ては、緊縮財政で成果を食いつくし、内需を育てないまま、効果が切れて苦しくなると、更にクスリの量を増やすことを繰り返してきた。何度、失敗しても、消費需要が超過して、物価が上がるようになるまで、すなわち、デフレを脱するまで、緊縮で需要を抜いてはいけないことに気がづかない。いつも、脱デフレは、目前のままに終わる。

 同じ光景ばかり見せられると、まるで無限ループの中で生きているようにさえ思える。これから、海外からの経済ショックで景気が瓦解し、一層の金融緩和に加え、財政出動も余儀なくされると、今回のループは完成し、次のサイクルへと入る。ただし、企業は海外市場へ逃げ、少子化や貧困化がはびこり、日本の経済と社会の劣化だけは、直線的に病状のステージを上げている。

 次の不況への備えとして、ウルフさんは「ヘリコプター・マネー」なんて酔狂な名を付けているが、非正規に差別なく被用者保険を適用する一方、低所得者の保険料を軽減してやれば、現実的にできることだ。しかも、リフレで名目賃金が上がれば、軽減に要する財源は徐々に減り、いきなり抜かれたりもない。結局のところ、このループから解脱するには、緊縮欲に勝る、虐げられた人々への愛が必要なのだと思うね。


(今日の日経)
 非正規賃金上がりやすく、熟練度を反映。フクシマは想定外か・滝順一。FT・次の不況に備えはあるか・Mウルフ。
ジャンル:
経済
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