宮崎県立芸術劇場「演劇・時空の旅」シリーズ『三文オペラ』が上演契約を満たさず初日開場後に中止! 満席の観客を前に即興パフォーマンスをするも制作側の責任は重い――いわき・横浜公演がどうなるか注目
公演財団法人宮崎県立芸術劇場が企画制作する「演劇・時空の旅」シリーズ#8『三文オペラ』(作/ベルトルト・ブレヒト、演出/永山智行)宮崎公演(2/5~2/7、メディキット県民文化センター演劇ホール舞台上舞台)が、突然中止になりました。公演初日に観客が来場し、開演直前の満席状態で中止が告げられたそうです。信じられない事態です。
公式サイトの発表は次のとおりです。
今回、この公演の上演権等を巡る問題が発生し、権利関係者と調整がつかずに、上演することが不可能となりました。
本公演を楽しみにお待ちいただいておりました多くのお客様、関係団体等の皆様方には、多大なご迷惑をお掛けし、誠に申し訳ございません。皆様方のご期待に添えませんでしたことに、スタッフ一同心より深くお詫びを申し上げます。
宮崎日日新聞Miyanichi e-press「演劇、上演直前に中止 権利問題了承得られず」
会場では、演出を務める同劇場ディレクターの永山氏と、同劇場館長で財団理事長の佐藤寿美氏が説明。ドイツの著作権管理会社との契約に、フルオーケストラによる全楽曲の演奏、脚本の改変禁止などが盛り込まれていたため、開演直前まで交渉を続けたが、今回の内容での上演が出来なくなったとのことです。
呆然とする観客を前に、本番用と思われる衣裳・メイク姿のキャストたちが登場し、演奏者と共に1時間ほどの即興パフォーマンスを行なったそうです。直前に中止を告げられたであろうスタッフ・キャストの心境を思うと、胸が痛みます。
時空の旅#8「三文オペラ」
公演中止は残念でなりませんが、あの場の落胆の空気を吹っ飛ばしてくれた出演者スタッフ一同に感謝。
時空の旅はまだ終わっていない。 pic.twitter.com/Looi0vH2wD— クボシュート (@atkinson306) 2016, 2月 5
「演劇・時空の旅」シリーズは、これまでも世界の名作戯曲を取り上げており、なぜ今回このような展開になったのか、信じられません。公共ホールの自主制作能力そのものが問われる事態だと思います。原因を究明し、詳細な報告書を公表すべきだと思います。
チケット代は全額払い戻しになりますが、主催者に常識を超えた瑕疵がある場合、それだけでよいかも議論になるでしょう。2013年、出演者の寝過ごしで公演中止となった新国立劇場『効率学のススメ』では、交通費・チケット購入手数料も対象になりました。宮崎公演は福岡などからの観客も多いと思いますので、このケースも参考にすべきではないでしょうか。
本日(2/6)現在、公演中止が発表されたのは宮崎公演(2/5~2/7)のみで、ツアー先のいわき芸術文化交流館アリオス中劇場(2/13~2/14)、KAAT神奈川芸術劇場大スタジオ(3/5~3/6)がどうなるかが注目されます。
(2016年2月7日追記)
『三文オペラ』の戯曲・作詞を担当したブレヒト、作曲を担当したクルト・ヴァイルとも死後50年以上経過し、戦時加算を含めても日本ではパブリックドメインのはずです。なぜ「上演権」があるのか、理解出来ないという声が上がっています。この点も詳細な説明を希望します。
前RTによれば、「三文オペラ」は日本で著作権切れ/パブリックドメインにも関わらず、「ドイツの著作権管理会社」から上演許可を得る契約を交わしたことになる。だがパブリックドメインとは万人の共有地だ。そこから地代を取ることはどの地主にも許されない。
>上演直前に中止 権利了承得られず— 福井健策 FUKUI, Kensaku (@fukuikensaku) 2016, 2月 6