【ソウル=加藤宏一】北朝鮮は7日午前9時31分ごろ、「人工衛星」と主張する事実上の長距離弾道ミサイルを北西部の東倉里(トンチャンリ)から発射した。日韓両政府がそれぞれ確認した。北朝鮮の長距離ミサイルの発射は2012年12月以来となる。4度目の核実験に続いて国際社会の制止を無視した今回の行為には国連安全保障理事会による強力な制裁決議も予想され、制裁に反発する北朝鮮が追加の挑発に及ぶ可能性もある。
日韓の情報などを総合すると、北朝鮮は東倉里の射場から発射。同41分ごろに日本上空を通過。部品が同45分までに東シナ海や太平洋上に落下した。
北朝鮮は6日、国際海事機関(IMO)など国際機関に通告していた「地球観測衛星」の打ち上げ予告期間を修正し、7~14日に打ち上げると公表した。日本政府はミサイル発射準備の兆候をつかんだ段階で自衛隊にミサイル迎撃を可能とする破壊措置命令を出し、海上配備型迎撃ミサイル(SM3)を搭載したイージス艦を展開するなど、警戒を強めていた。
北朝鮮の長距離ミサイルの発射は12年12月以来となる。12年はミサイルの発射後、13年2月に3度目の核実験に踏み切った。その後は核実験に伴う国連安保理の制裁決議や米韓合同軍事演習などに反発し、朝鮮戦争の休戦協定が無効になったと一方的に宣言したほか、北朝鮮南部にある南北協力事業の開城工業団地から労働者を引き揚げさせた経緯もある。
北朝鮮は昨年9月、国家宇宙開発局長が10月10日の朝鮮労働党創建70周年に向けて「気象予報など新たな地球観測衛星の開発を最終段階で進めている」とし、事実上の長距離弾道ミサイル発射の可能性を示唆していた。李洙墉(リ・スヨン)外相も10月1日の米ニューヨークの国連総会の一般討論演説で「平和的な衛星打ち上げに異議を唱える不当な行為には可能なあらゆる自衛手段で強力に対応し、尊厳を守る決意だ」と述べていた。
核実験に続き、長距離ミサイルの発射に踏み切ったのは、金正恩(キム・ジョンウン)第1書記の体制維持に向けて最大の交渉相手と位置づけている米国との協議を実現したい思惑や、5月に36年ぶりとなる朝鮮労働党大会を控え、科学技術の発展を正恩氏の業績として誇示したい考えなどがあるとみられる。
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