「おまえは努力が足りない!」
この言葉、会社やアルバイト先の職場で一度は言われた事があるのではないでしょうか?
きっと、「努力が足りない」という言葉を受けて、「努力してるのに解ってくれない」と感じた人もいると思うし、逆に「確かにそうだ、もっと努力しよう」と、やる気を出した人も少なくないでしょう。
また、もしかしたら、言われる側ではなく、人に「努力が足りない!」と言う側の立場になった人もいるかもしれませんね。
会社で部下を指導する立場にある人、アルバイトリーダー、学校の先生などは、つねに「この人は努力しているのだろうか?」と、チェックしていると思います。
言われるほうも辛いですが、言うほうもけっこう辛い。努力という言葉はそれほど扱い方が難しいんです。
ここで、2つ質問があります。
その1・あなたが努力を人に薦める時、何を基準にしているんですか?
その2・逆に、あなたが他者から「もっと努力しろ!」と言われたら、何を基準にその言葉を受け入れるんですか?
実は、この二つの質問を冷静に考えてみる事は、僕らの「生きづらさ」を緩和させていくうえで、とても大事になって来るんです。
考えてみてください。毎日のように、この二つの質問を繰り返し自問自答していませんか?
上司に「もっと努力しろ!」と怒られて、「なんだよ、そんな怒らなくてもいいだろ!頑張ってるのに!、、、でも、、、確かに、もうちょっと努力で来たかも?」という感情が芽生えてしまうのは、あなたが無意識に1と2の質問を自分に問いかけているからです。
今日は、この2つの質問をじっくり皆さんと考えてみたいと思います。
当ブログのテーマである「脱貧困」というキーワードで考えてみても、「努力」の扱い方を考える事は重要です。
たとえば、生活保護を受けている人は、結局、「努力」して、いつか仕事をみつけなければいけません。
新しく職に就いたら、「努力」して仕事を覚えなくてはいけない。
大なり小なり、誰しも最低限の「努力」から逃れる事は出来ないのです。
そんな逃れる事が出来ない「努力」を考えるうえで、忘れないようにしたい事があります。
それは、「環境」です。
「努力しろ!」という言葉を言う側であれ、言われる側であれ、どっちにしても重要なのは、「その人の環境を理解する」事なんですよ。
そして、理解するために、「しっかりと聴く」事なんです。
どういう事か説明しましょう。
その人の環境が努力を変える
先ほど、その1とその2の質問で、「基準」という言葉を使いました。
この「基準」とは「環境」を理解する事なんです。これは、他者の環境だけではなく、自分の環境でもあります。けして、どちらも蔑(ないがし)ろにすることは出来ません。
ここで、解りやすく説明するために、鈴木大介さんが書いた「最貧困女子」より引用します。
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義父からの性的虐待を看過して来た母親に殺意を抱き続ける少女がいた。
風俗店5店舗に連続で面接落ちし、その週のうちに売春相手が見つからなければ、「肝臓を売れるところを教えてほしい」と言う20歳がいた。
取材期間中、幼い娘を残して自殺してしまった売春シングルマザーもいた。
彼女は売春相手とホテルに向かう際、愛娘が児童養護施設で作ってくれた折鶴をお守りのように財布に入れていた。
何も与えられず、何も恵まれず、孤独と苦しさだけを抱えた彼女らは、社会からゴミを見るような視線を投げかけられる。
いかがでしょうか?
鈴木大介さんは、「犯罪する側の倫理」、「犯罪現場の貧困問題」を取材するルポライターでです。
引用した文章に出て来る少女や自殺してまったシングルマザーは、実際に鈴木さんが出会った人達です。
皆さんなら、彼女たちにどんな言葉をかけるでしょうか?
なかなか言葉がみつからないかもしれません。
でも、きっと、間違っても「もっと努力しろ!」とは言わないでしょう。
「当り前だろ!こんな状態になるような酷い環境にいるのに、『努力しろ!』なんて言えるかよ!」と、思ったかもしれません。
しかし、引用した文章に出て来る少女やシングルマザーは、簡単に自分の環境や自分が置かれている状況を他人に話したりしません。
鈴木さんの本を読むと、鈴木さんが彼女たちの話しを聴くために根気よく向かい合っている事がよく解ります。
人の環境を把握するためには、時間がかかります。それが、貧困状態の人なら尚の事そうです。
だからこそ、僕らは人に「もっと努力しろ!」という前に、「環境」に目を向けなければいけません。
また、逆に、人に「努力しろ!」と言われたら、自分の「環境」に注目したほうがいいんです。
「自分は求められている努力が出来る環境にあったのか?」と、自分に聞いてみてください。
そして、自分も含めて、その人にあった努力を提示する事が今の世の中に求められていると思うんです。
いつでもチェックするべきなのは、環境です。
これは、貧困というテーマに収まらない話しだと思うんです。
仕事、人間関係、何にでも言える事ですよね。
だから、どんな時でも、まずは自分の意見をベラベラ喋るのではなく、聴く事が重要になって来る。
僕が環境+聴く事と書いたのは、そんな理由からだったんです。
どうでしょうか?
共に、人の環境に目を向けられる人になろうではないか?!