今年11月の米大統領選に向けた候補指名争いの初戦となるアイオワ州の党員集会では、共和党のテッド・クルーズ氏が、本命視されていたドナルド・トランプ氏から予想外の勝利を奪った。
一方、民主党では民主社会主義者を自称するバーニー・サンダース氏が、主流派が支持するヒラリー・クリントン氏と互角の戦いを見せた。エリート層に対する大衆の反乱が一気に表面化した格好だ。
問題は、欧米のエリート層と一般市民との距離を縮められるのかということだ。
複雑な現代社会の統治には、専門的な知識が必要だ。だが、経済エリートや官僚エリートと一般市民との間には、修復不能なまでに溝が広がっている。これが行き着くところまで行くと、政治に対する一切の信頼が失われてしまうかもしれない。
そうなった時、有権者は、既存体制を一掃しようとアウトサイダーの支持に回る。我々が今、目にしているのは、信頼がアウトサイダーに向かい始めた変化だ。米国だけではない。欧州の多くの国々でも同じ変化が生じている。
これを一部の不満分子による動きで、主流は変わらないとみるのは甘い。そう考えるのは危険だ。不満がさらに高まれば、主流が崩れないとも限らない。
仮に体制の主流が変わらないとしても、多くのマイノリティーが不満をため込み、多数派も不信に満ちているような社会は決して望ましい社会ではない。
■有権者、「エリートは腐敗していて無能」
では、乖離(かいり)の根本原因はどこにあるのか。一つは文化的な変化であり、もう一つは人口における民族構成の変化に対する不快感だ。拡大する格差と経済的な不安定さに対する懸念もある。
恐らく最も根本的な原因は、「エリート層は腐敗し、自己満足に浸り、無能だ」と感じている有権者が増えていることだ。扇動的な政治家はこうした不安や怒りを利用するもので、現実にそうしている。
経済協力開発機構(OECD)が昨年12月に公表した報告書によると、過去数十年の間に大半の加盟国で格差が大幅に拡大したという。特に税引き前の総所得に上位1%が占める割合が大きく拡大した。経済エリートとの格差が著しいのが米国だ。同報告書は「(米国の)1975~2012年の税引き前総所得の伸びの約47%が上位1%に流れた」と指摘する。これに伴いポピュリズムが右翼、左翼を問わずまん延してきた。
今年11月の米大統領選に向けた候補指名争いの初戦となるアイオワ州の党員集会では、共和党のテッド・クルーズ氏が、本命視されていたドナルド・トランプ氏から予想外の勝利を奪った。
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