シリア和平協議、中断後は? ――アサド大統領の処遇が依然躓きの石

ジュネーブでのシリアの政権と反体制派の協議は、事実上開始直後に中断した。双方は、協議を頓挫させたとして互いを非難している。フランスとアメリカは、ロシアが和平プロセスを「破綻させようとしている」と声明し、ロシアの専門家らは、ジュネーブ協議はロシアへ圧力をかけるために利用されようとしている、と考えている。

 

 

国連のスタファン・デミストゥーラ・シリア担当特使は、2月3日、ジュネーブで始まったばかりの協議の中断を発表した。双方は、2月25日に協議を再開することになっている。

 

反体制派の代表らは、政府軍とロシアがシリアでの戦闘行動を停止しようとしていないことを協議からの離脱の理由として挙げるとともに、一般市民の命を奪っているとして政府軍とロシアを非難した。フランスとアメリカは、そうした非難を支持し、フランスは、ロシアは和平プロセスを破綻させようとしているとし、アメリカは、ロシアは和平プロセスを犠牲にして紛争の軍事的解決を図ろうとしているとした。

 

ジュネーブ協議は、シリア軍の攻勢を背景に行われた。ここ数日で、シリア軍は、ロシア空軍の支援のもと、国の北部の反政府組織の補給路を断つべく、シリア・トルコ国境からほど近い二つの町を支配下に置いた。

 

 

展望なき戦術?

 

ロシア外務省は、そうした非難に反駁し、協議が頓挫した責任は12月にサウジアラビアで組織された反体制派を代表する最高交渉委員会(HNC)にあるとした。

 

ロシアのゲンナジー・ガチロフ外務次官は、タス通信に「シリアにおけるテロの脅威との闘いが問題となっている以上、ロシアがシリアでの軍事作戦を継続していることを口実に交渉プロセスを破綻させようとする彼らの試みは、まったく受け入れられない」と語った。

 

ロシアの専門家らは、反体制派の離脱は、シリア危機をめぐって繰り広げられた抗争で追加の得点を稼ごうとする試みである、としている。独立系の戦略的評価分析研究所の東洋学者セルゲイ・デミデンコ氏は、反体制派と西側にとって協議はロシア軍による軍事作戦を阻むべくロシアに圧力をかける梃子でもあるものの、それはまったく展望のない戦術であるとし、「ロシアが今考えを改めて空爆を停止するのを期待することは、もちろんできない。われわれは、三ヶ月後に撤退すべくそこへ赴いたわけではないのだから」とロシアNOWに語った。

 

専門家らが指摘しているように、ロシアと西側の対立の根っこには、依然として、シリアのバッシャール・アサド大統領の処遇をめぐる唯一の原則的問題がある。西側は、アサド政権が退陣すればシリアの状況は安定するものと考えており、ロシアは、逆に、まさにシリアのリーダーこそシリアにおける和平達成の保証であると主張している。

 

 

協議に替わるものはなし?

 

独立系の東洋学研究センターのウラジーミル・アヴァトコフ所長は、対立が存在するからといってシリア危機の政治的解決を諦めるべきではないとしたうえで、ジュネーブ協議が決裂すれば軍事行動がエスカレートするばかりであり、結局、シリア危機に巻き込まれたいずれのプレーヤーも得をしない、という点を指摘している。

 

同氏の考えでは、反体制派の今回の措置は、彼らがシリア社会において弱い立場にあるため協議の建設的成果にさほど関心がないことに起因している。

 

専門家らは、協議の即効性やシリア危機の早期解決を期待すべきではないとの考えで一致している。モスクワ・カーネギーセンター学術評議会員のアレクセイ・マラシェンコ氏は、ロシアNOWへのインタビューで、シリア危機をパレスチナ危機になぞらえ、ほかのアナリストらは、シリアの出来事を15年間続いたレバノン内戦にたとえている。

 

■本記事は「ロシアNOW」からの転載です。

 

http://jp.rbth.com/politics/2016/02/05/565395

 

知のネットワーク – S Y N O D O S -

 

電 子 マ ガ ジ ン「α シ ノ ド ス」

vol.189 エネルギーってどうなの?

vol.188 ロボットへの戸惑い 

 

a-synodos1

1
 
 
300_250_5g 困ってるズ300×250 α-synodos03-2

vol.189 特集:エネルギーってどうなの?

・西城戸誠×古屋将太×丸山康司「エコと利益は両立するか!?――再エネと社会の持続を考える」

・田中信一郎「自治体における省エネ政策の意義――長野県を例として」

・松田智・久保田宏「混迷するエネルギー政策への提言――化石燃料消費の削減と均等化が最優先課題である」

・片岡剛士「経済ニュースの基礎知識TOP5」

・山口浩「『国民的アイドルグループ』と『昭和の幻影』について」