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方言の旅

生活

僕が暮らすやまがた県では、県内地域によって方言に大きな差があることが知られている。「そうだね」を表すものでも「んだず」「んだの」「んだにゃ」など異なる語尾変化が生じるのに加え、地域内でもかなり差があるという。

昨春にやまがた県西部に越してから、職場や飲み会でこの方言の話になることが多い。

「北海道ではこんな言い方しねぇろ?」

そう言って教えてもらう単語は聞いたことのないものがほとんどで、たまにニュアンスを掴むことができるものが混じる。一応の都会育ち(200万都市だけれど)の僕がわからないことが面白いようで、あれこれと矢継ぎ早に単語が飛び出てくる。僕は僕で、純粋に「こんな意味なんですか!?」という単語を知ることができて楽しいのと、その場が盛り上がるのが面白くてついつい聞いてしまう。鉄板の話題になっている。

メモがてら、特に興味深かったものを記録しておく。

  • やばっちい……濡れて(+冷たくて)不快だ。雨の日に歩道で車が撥ね飛ばした水たまりの水がかかったときなど。
  • おおぶじょほした……申し訳ない。=「大不調法(おおぶちょうほう)した」からの変化。
  • いやべ……「いい塩梅」→いいあんべ、からの変化。
  • じょさね……簡単だ。「造作ない」→ぞうさね、からの変化。
  • きもけだ……驚いた。「肝消えた」からの変化。「魂消えた(たまげた)」と同意。
  • ほどわらこぐ……(深い雪に埋まりながら)ずぼずぼ歩く。「雪原漕ぐ」。
  • しょす……恥ずかしい。処す、ではない。
  • とからまから……足がおぼつかない、うまく動かない状態。ご老人が使う。

和語や熟語が変化したものを中心に挙げてみた。大変興味深い。

同じ発生のもので、「じょげなる(こぼして水びたしになる、の意味)」というのがあると聞いた。「海の如し→如海(じょかい)なる、だから『じょげなる』」だ、と教えてもらい、大層感動したのだが、周囲に聞いても知らないひとばかりだった。古い言葉だったのかもしれない。

 

他にも、カメムシのことを「ジョロ」「クサンジョロ」「ヘコキムシ」と呼ぶなど、周辺地域でも差があるようで、たいへん興味深い世界である。僕がこれらをうまく使えるようになるとは思えないけれど、保育園に通う娘は既に「やんだ」が口癖になっている。ここに馴染んでくれるといい。