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活発な住民投票 民意を補完する手段に

 地域の課題をテーマに住民の意見を聞く住民投票をめぐる動きがこのところ活発だ。庁舎など施設の整備など住民生活に密着した課題で行政を左右するケースが目立っている。

     投票結果をどこまで尊重するかなど、住民投票の位置づけはこれまでも揺れ動いてきた。柔軟に活用し、民意を測ろうとする動きの広がりを基本的に評価したい。

     町域外に庁舎がある沖縄県竹富町は先月末、建て替えにあたり役場を従来通り町外の同県石垣市に置くか、町内の西表島に移すかを問う住民投票を実施した。結果は西表島移転が上回り、町長は移転を推進していく意向を示した。

     今年5月、大阪都構想の是非を問い行われた大阪市民投票は結果に拘束力があった。政令市解体には投票によるお墨付きが必要だと法律で定めたためだ。これに対し、多くの自治体が課題別に行う投票は条例に基づくもので、結果に拘束力はない。

     それでも投票結果が行政を左右するケースが目立ってきた。愛知県小牧市ではレンタル大手「TSUTAYA(ツタヤ)」が運営する新図書館計画へ反対票が多数を占め、計画は白紙に戻った。茨城県つくば市の総合運動公園建設計画も撤回され、埼玉県所沢市では防音で窓が開けられない小中学校の一部にエアコンが設置されることになった。

     総務省の2010年時点の集計によると条例に基づく住民投票は約400件実施されている。ただ、その多くは市町村合併がテーマで、住民が投票を求めても首長や地方議会が拒否するケースも多かった。投票成立には50%以上の投票率が必要と条例で定められたため、投票が実施されながら開票されなかったケースもあるなど、実際には壁が高かった。

     地方自治は首長、議会による「二元代表制」が原則だ。だが、住民生活に密着した課題では直接住民の声を聴く方が適切なケースもある。むしろ、住民投票が民意を補完する機能を活用すべきではないか。

     もちろん、整理すべき問題もある。たとえば大阪府和泉市の住民投票では過半数が庁舎移転に賛成したが、市長は「民意は現地での建て替え」だと主張している。庁舎移転には議会の議決で3分の2以上の賛成が必要だと法律が定めていることを根拠にした論法だが、これでは恣意(しい)的な解釈と取られかねない。

     民主党政権時代、片山善博総務相(当時)はハコ物整備の是非を問う住民投票の結果に拘束力を与えようとしたが、実現しなかった。合併や施設整備に関する投票結果は尊重するよう法律に記すのも、ひとつの方法ではないか。政党も自治の大きな論点として、議論を深めてほしい。

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