マインド・トークとは
人は一日中、言葉を使って頭の中でいろいろなことを考えています。
その数、一日約7万語。ときには、人と話をしているときでも、まったく違うことを考えていたり、また、考えていないと思っていても無意識に何かを考えています。
こういった、人間が頭で考えている言葉をマインドトーク(自動思考)といいます。
たとえば、くもりの日に天気を見て
「雨がふりそうだな。嫌だな」
と考えて、気持ちが沈んで
「学校行きたくないな~」とか「会社行きたくないな~」
などと頭の中で勝手に考えてしまう
マインドトークによるものなんですね。
また、イヤな思い出をつい思い返し、
頭の中で再現し、一人芝居をして、
再び落胆したり後悔する、
といったこともマインドトークによるもの。
マインドトークには、ネガティブな内容が多い
ネガティブな内容が多い理由は、生存のため!
原始時代に夜道を歩いていて、暗闇で何かの物音がしたとします。ポジティブ思考で家族が迎えに来てくれたと喜んで近づいたら、実は猛獣が潜んでいて、がぶりと食べられてしまうかも知れません。
生き抜くためには、まずは、一旦立ち止まり、目を凝らし、状況把握することが大切です。つまり、最悪の状況を考え、逃げるか戦うかの準備が必要です。
これが、ネガティブなマインドトークが多い理由なんです。
だからほうっておくと人は生存のためにネガティブなマインドトークを際限なく繰り返してしまうんです。
ネガティブなマインドトークは生存戦略のひとつと言っても過言ではない!
この「マインドトーク」に頭の中を支配されてしまうと、例えば生活の中で嫌味を言われたり、小言を言われたり、怒られたりといった出来事に直面すると、「むかつく」とか「許せない」とか「仕返ししてやりたい」とか「泣きたい」とか自動的に思ってしまう。その場面を思い出すたびに、そのとき感じた嫌な気持ちを思い出し、再びネガティブな「マインドトーク」を繰り返してしまう。同じ体験を二度と繰り返さないために。
マインド・トークは認知を歪め、さらには現実まで変えてしまう
例えば、同僚に「おはよう」と声をかけたのに返事がなったとする。実際には、相手にはただ自分の声が聞こえていなかっただけかもしれない。にも関わらず、 この事実に対して「何か彼を怒らせるようなことをしたのだろうか?」、「自分は嫌われているんだ…」などとネガティブなマインド・トークを繰り広げてしま う。
例2
イヤな思い出をつい思い返し、頭の中で再現し、一人芝居をして、再び落胆したり後悔する、といったこともマインドトークによるもの。現実はそうではないのに、です。
こうしたマインドトークは、私達の認知にゆがみを与える。本当は現実でないことを現実だと思い込む。自分で作り出した妄想の世界と、現実の区別がつかなくなる。
当然、自分を否定するような語ばかりをマインドトークしていれば、そのような人格になるし、出てくる言葉もそのようになる
現実にはそうでなくても、「自分は嫌われている」「うまくいくはずがない」「無理に決まっている」などと脳内でつぶやき続けることによって、それが真実だ と思い込んでしまう。人は自分が信じた通りの言動をとるため、ネガティブなマインド・トークを信じれば、結果、その通りになる。
まずはマインド・トークに気づくこと
まずは自分の心の中でマインドトークが始まっていることに気付くように注意しましょう。心の動きに注目することを習慣づけるのです。とりあえず、それだけで十分。無理に考えるのをやめようとしなくていいんです。
マインド・トークは自然な現象で、止めるのは難しい。また「考えるのを止めよう」と思うことで余計に気になってしまい、ストレスになる場合もある。ただ、 マインド・トークと≪現実≫、≪自分の考え≫、≪自分自身≫を混同しないためにも、マインド・トークに「気づく」ことはとても大切です。
マインド・トークと自分自身を切り離して捉えよう
マインドトークと同化している自己を切り離して客観的な目でみることにより、正確に自己認識をすることができます。それは、自己の性格構造を理解し、心のクセを修正し、自然に自分の抱えている問題を溶解していくことになります。
勝手に始まった自動思考を自覚し、それは自分自身ではないというスタンスを取るということで感情や思考をそれに引きずりこませないようにする。
マインドトークは自分の頭の中で勝手に創り上げたイメージでしかなく、本当の自分でも他の誰かでもないのです。マインド・トークに気づき、少し距離をとることができるようになれば、無駄な悩みを減らすことができるかもしれません。
マインド・トークに気づくために、自分を客観的に見る能力を高めましょう。
*次回、自分を客観視する方法についての記事をアップする予定です。
自分を客観視するだけでは不十分?
自分を客観視する。確かにその方法でマインド・トークの負の連鎖は止められるかもしれません。でも、それだけでは不十分です。たとえ自分を客観視し、自分を正しく認識できるようになっても、生存戦略のひとつであるマインド・トークの力に従って、自分の欠点や改善点ばかりに眼が言ってしまうからです。それではマインド・トークに完全に支配されているときよりはマシですが、完全にマインド・トークの支配から抜け出せているとは言えません。
では、どうすればマインド・トークの支配から抜け出すことができるのか。その方法は簡単です。自分の美点に目を向ければいいんです。いつも欠点や反省点ばかりに目を向けていたのをやめ、自分の美点に目を向けるんです。
そうすれば自分の欠点・反省点に目を向けることをやめることができます。
一日の終わりだけでもいいです。自分がその日に考えたこと、感じたこと、したことの中から自分の美点を見つけてください。見つけたら、その美点を褒めてあげてください。
自分で自分を褒める行為を自己承認と言います。
自己承認は人には必要な行為です。
人には承認欲求という本能的欲求があるからです。
その欲求が満たされないと、情緒不安定になったり、うつ病になったりしてしまいます。他人がいつでも自分のことを褒めてくれるような世の中だったら自己承認なんて必要ありません。でも、残念ながら、世の中は、褒めてくれる人より批判してくる人のほうが圧倒的に多いです。そんな世の中で褒めてくれる人を探していたら、探している最中に病気になってしまいます。そうならないために、自分で自分を褒める自己承認という方法を身につける必要があると僕は思ってます。
自己承認なら誰にでもできるし、一日の終わりだけでなく、いつでもどこでも使用可能な方法だからです。
自分を正確に客観視する能力を身につければ、自分の美点だって簡単に見つけることができます。
自分を客観視する能力と自分を褒める自己承認能力を高める。
そうすればマインド・トークの呪縛から抜け出すことができます。
だから、自分を客観視する能力と自分を褒める能力を高めましょう。
この2つの能力は、がんばれば誰でも身につけられる能力だと僕は思ってます。
自己批判は自分を高めるためには必要な行為です。でも、自己承認も自己批判と同じくらい自分を高めるためには必要な行為です。どちらが欠けても心の健康を保つことができなくなります。心の健康を保つために自己批判と自己承認を上手に使いこなせるようになりましょう。