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シャープ経営再建 焦る鴻海、はや不協和音

産経新聞 2月6日(土)7時55分配信

 シャープの経営再建をめぐる台湾の鴻海精密工業とシャープの交渉は早くも両社の不協和音をうかがわせる展開となった。鴻海の郭台銘会長が優先交渉権の取得をアピールしたのに対し、シャープ側は即座にその事実を否定。両社の主張に食い違いが生じている。鴻海はなぜシャープの買収を急ぐのか-。

 「交渉のハードルは90%乗り越えた」

 5日午後5時半すぎ、大阪市阿倍野区のシャープ本社。報道陣の前に笑顔で現れた郭会長はシャープの買収に自信をのぞかせた。

 「郭会長はシャープのすべてを欲しがっていた」

 鴻海関係者は今回の買収についてこう明かす。

 家電や電子機器などの組み立てという業態で世界有数の企業に成長した鴻海はあくまで世界の大手ブランド企業の下請けという“黒子”だ。消費者の手にわたる最終商品を手掛けるシャープを傘下に加えることは、ブランドの入手とともに、メーカーとして表舞台に躍り出ることを意味する。ただ、郭会長の今回の性急な動きからは、コスト削減を目指す大手企業から受託して安く大量生産する同社のビジネスモデルが限界にきていることへの焦燥感もうかがえる。

 鴻海は受託製造業務の大半を子会社の富士康科技(フォックスコン)を通じ中国で展開している。1988年に中国へ進出。広東省深センや山西省太原など数十カ所の拠点で約100万人を雇用するまでに成長した。しかし、近年は中国の人件費の高騰で収益が圧迫されており、下請けからの脱却を模索してきたのが実情だ。また、2009年ごろから深セン工場などで従業員の自殺が相次ぎ、従業員ら数千人による暴動も頻発。労働環境への不満も原因と伝えられる。

 自身の発言をシャープが否定したことについて郭会長は「最初は拒否されたとしても時間をかければ心を開けるのが日本の文化だ」と語った。だが、鴻海は過去にいったんは合意したシャープへの出資を見送った経緯もあり、郭会長の言葉への不信も簡単には拭えそうにない。(織田淳嗣、上海 河崎真澄)

最終更新:2月6日(土)12時24分

産経新聞