坂本進
2016年2月6日11時24分
通信教育大手ベネッセホールディングスの顧客情報が大量に流出した事件。元システムエンジニア(SE)の男は、他人の個人情報を売った金であるものを買っていた。
昨年12月11日、東京地裁立川支部。不正競争防止法違反の罪に問われた元SEの松崎正臣被告(41)は証言台で、黒縁の眼鏡の奥から裁判長を見つめた。
弁護人「あなたが個人情報をコピーして、売却したことは間違いないですね」
被告「はい」
起訴状によると、被告は勤務先だったベネッセ子会社の多摩事業所(東京都多摩市)内で、ベネッセの顧客データベースに接続。名前や生年月日、住所などの個人情報約3千万件を私有のスマートフォンに転送し、名簿業者に示したとされる。被告は当時、システム開発に携わっていた。
弁護人「売却を思いついたのはいつですか」
被告「平成25(2013)年7月。スマホの充電を忘れて、業務用パソコンにつないで充電したら、(スマホが)外部の記録媒体として認識されました。適当なファイルを移したら、記録できました」
業務用パソコンはセキュリティー上、外部媒体を認識できないはずだったが、一部の最新のスマホ機種だけは設定から漏れていた。
当時、被告の妻は2人目の子を妊娠。切迫早産の危険性があり入院中で、病院の保証金に加えて、月に十数万円の入院費がかかっていた。被告の給与は手取りで月30万円ほど。絞り出すような口調で振り返った。「ひっぱくしている状態でした。(妻が)強制退院させられたらどうしようもなくなると思って」
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朝日新聞社会部
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