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3大銀、定期預金金利下げ…発表1週間

個人資産運用直撃

 マイナス金利の導入を日銀が決めてから5日で1週間が過ぎた。決定直後は株高・円安が進んだものの、5日の東京株式市場は日経平均株価が1万7000円台を割り込み、外国為替市場でも円高が進行。日銀の決定前の水準に逆戻りし、「マイナス金利」効果は早くも消えた形だ。一方、3メガバンクがこの日、定期預金金利の引き下げを決めるなど、個人の資産運用に見直しを迫る動きは加速している。【中井正裕、鈴木一也、土屋渓】

 三菱東京UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行は、2〜10年満期の定期預金の金利を8日から引き下げることを決めた。三菱東京UFJ銀の場合、0.015〜0.06ポイント引き下げ、預け入れ額300万円未満のスーパー定期では、預け入れ期間1カ月から10年までが0.025%で並ぶ。3メガバンクの引き下げ決定で、預金金利を引き下げる銀行が相次ぎそうだ。インターネット専業のソニー銀行は普通預金の金利を0・001%に引き下げ、100万円を1年間預けても、10円しか利息がつかない計算だ。

 資産運用商品の販売停止も続いた。日本国債などで運用する投資信託の「MMF」を扱う資産運用会社11社すべてが、事実上販売を停止。大手の野村アセットマネジメントは9日から新規の販売を停止すると5日に発表した。運用会社によっては、申し込みは受け付けるものの、運用状況次第で4月に払い戻す可能性があるケースもある。MMFは株式などと比べ、リスクの低い金融商品とされており、個人の資産運用は見直しが避けられそうにない。財務省は金利低下を理由に、個人向け国債の一部で販売を取りやめた。

 こうした動きが続くのは、金融機関が預金金利などを決める際に目安としている長期金利が、マイナス金利の導入決定を受けて急速に低下しているためだ。国債などリスクの低い金融商品で運用してきた保険会社からも「このままだと非常に厳しい経営環境になる。保険料の引き上げにつながりかねない」(大手生保)と悲鳴が上がる。

 マイナス金利は日銀が16日から導入する。日銀にお金を預けた銀行から、手数料を取ることで、お金を民間への貸し出しに向かわせる効果を狙った金融政策で、個人の預金は対象外だ。日銀の黒田東彦総裁も4日の衆院予算委員会で「(日本では)民間銀行の個人向けの預金にマイナス金利がつく可能性はない」と語った。しかし、金利低下で銀行は収益が上がりにくくなるため、現金自動受払機(ATM)手数料や振込手数料などを値上げする可能性が指摘されている。

 一方、金利低下に伴い、住宅や自動車などお金を借りる人にとっては、ローン金利負担が減る分、マイナス金利は恩恵となる。既に大手行の住宅ローン金利は過去最低水準となっているが、新生銀が3日から住宅ローン金利を引き下げるなど、今後も一段の引き下げが広がるとみられる。

長期金利最低を更新

 長期金利はマイナス金利導入決定前の0.2%台から1週間で大きく低下した。5日の東京債券市場で、長期金利の指標となる新発10年物国債の市場利回りが0.020%と前日比0.030ポイント低下し、史上最低を更新。マイナス金利が導入されれば、金融機関が資金を日銀に預けないで国債市場などに回すとの見方が広がり、国債価格が上昇(金利は低下)しているためだ。

 東京外国為替市場の円相場は、マイナス金利導入決定後は一時、1ドル=120円台まで円安が進んだものの、5日は一時1ドル=116円台半ばと前日比1円以上円高が進行した。東京株式市場では、円高の進行で輸出関連株が下落したほか、運用利回りの悪化懸念から銀行株も大きく値下がり。5日の日経平均の終値は前日比225円40銭安の1万6819円59銭と4日連続で下落し、日銀がマイナス金利導入を決定する前の水準まで落ち込んだ。

マイナス金利導入発表1週間で

 ・長期金利が0.020%と過去最低に

 ・3メガバンクなどが定期預金金利を引き下げ決定

 ・投資信託「MMF」の新規販売が停止

 ・個人向け国債の一部商品の販売を取りやめ

 ・一部銀行が住宅ローン金利を引き下げ

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