サウジとイランが争う愚かさ


世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

世界の流れは、時々刻々専門家によって分析考察されています。それらを紹介し、もう一度岡崎研究所の目、日本の目で分析考察するコラム。

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フィナンシャルタイムズ紙が1月4日付で「サウジアラビアのイランとの争いの愚かさ」と題する社説を掲げ、サウジ・イラン関係の悪化に懸念を表明するとともに、米が仲介に乗り出すべしと論じています。社説の要旨は次の通り。

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 サウジとイランの外交関係断絶は2016年の中東にとり不吉な始まりである。スンニ派とシーア派を代表する両国の対立は、シリアとイエメンで代理戦争をするなど長い間あったが、サウジによるシーア派聖職者処刑はこの紛争のレベルを引き上げ、テヘランのサウジ大使館襲撃、2国間関係の断絶に至った。

 サウジがシェイク・ニムルを処刑した正確な動機ははっきりしない。サウジは43人のスンニ派テロリストを処刑したが、公平さを示すためにシーア派も処刑したかったのかもしれない。ニムルはテロリストではない。彼はサウジのシーア派差別と王政を批判していた反体制派である。その処刑は世界的な非難を呼び起こした。

リヤドとテヘランの和解は
シリアの内戦解決に不可欠

 この処刑に対するイランによるサウジ大使館襲撃という反応も憤慨を呼び起こすものである。ニムルの処刑は、ロウハニ大統領の国際的開放に反対するイランの強硬派に力を与えた。

 サウジ国王サルマンは、前任者よりも国際的により戦闘的なアプローチをとってきた。リヤドはシリア、イラク、イエメン、バーレーンでのイランの悪意ある仕業を長い間見てきたが、昨年の米・イラン核合意が転換点になった。サウジは自分で自衛のためもっと力強く行動しなければならないと考えるようになった。しかしホーシー派への戦争など、サウジの行動はサウジの地歩を固めるより、さらなる混乱をもたらした。

 サルマン国王はサウジ経済が良くない時に、またISISの台頭に伴う安全保障懸念がある中、シーア派反体制派に強硬姿勢を取らなければならないと感じたのかもしれない。石油価格の下落は社会的平和を支えてきた気前の良い福祉プログラムの削減を強要している。しかしニムル処刑に見られるように、サウジ指導層は戦略的結果を考えずに、決定を次々によろめきながら採択しているように思える。

 米国は、中東情勢がどれくらい危険になっているか、認識すべきである。イラク戦争の失敗後、オバマ政権は地域大国の責任を強調し、中東から手を引いてきた。その中で、サウジとイランは宗派上の代理人への支持を増やしてきた。

 リヤドとテヘランの和解は、シリアの内戦解決に不可欠である。オバマは両者に対話を促すべきである。イランの指導部の多数は孤立脱却を望んでいるし、サウジは米国の軍事・外交上のカバーを必要としている。もし対話が行われるならば、米国はサウジにもイランにも最初に強硬なメッセージを発しなければならない。今は理性と抑制の時で、向こう見ずな行動の時ではない。

出典:‘The folly of Saudi Arabia’s battle with Iran’(Financial Times, January 4, 2016)
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/e820f5cc-b2db-11e5-b147-e5e5bba42e51.html#axzz3wJ7wBpFO

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