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【経済Q&A】

10年物国債 初の募集中止 狭まる個人の選択肢

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 3日の国債市場で、長期金利の指標である新発10年債の利回りが一時、過去最低を更新。財務省も同日、個人が購入できる国債のうち、3月に発行を予定していた10年物の新型窓口販売国債(新型窓販)の募集を初めて中止すると発表した。日銀のマイナス金利の余波が急激に広がっている。 (神野光伸)

 Q 新型窓販とは。

 A 満期が二年、五年、十年の固定金利型で毎月発行されている。銀行やゆうちょ銀行などの窓口で個人のほか、法人や地方自治体も五万円単位で購入できる。利回りなどは銀行や証券会社による入札の結果に応じて決定する。

 国債の個人保有者を増やす目的で二〇〇七年に制度が始まり、銀行に預金するより利回りがよいため人気が高まり、ピーク時の〇八年度には発行額が一兆四千億円に達したが、金利の低下によって一三年度は約三千五百六十億円だった。

 Q 今回、募集を中止した理由は。

 A 財務省が二日実施した十年物国債の入札では、平均の落札利回りが同日の長期金利に近い水準の0・078%と過去最低を更新した。手数料などを踏まえて価格設定すると新型窓販の利回りがマイナスになる見通しで、買い手が見込めないと判断したためだ。同じ方式の満期二年、五年の国債はすでに募集を中止しており、これで新型窓販の募集はすべて中止となる。

 Q 個人投資家や家計の選択肢は減るのでは。

 A 財務省は新型窓販の制度そのものは維持するが、いつ再開するかは未定という。元本が保証されている代わりに利率が低く抑えられている通常の「個人向け国債」は販売を続けるが、マイナス金利の影響で「金融機関は国債などを組み込んだ金融商品の見直しや、販売停止に追い込まれる」(ニッセイ基礎研究所の矢嶋康次氏)との見方もある。

 Q 金利が下がれば、国の国債費の負担が軽くなるのではないか。

 A 国は膨大な借金を抱えているため、金利が低くなれば国債の利払い費が減り、財政再建を進めやすくなるとの考え方もある。一方で、「金利がここまで下がれば財政規律が緩くなり、国債に頼って余計な歳出を拡大してしまう恐れもある」との指摘も出ている。

 

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