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【社会】

荒川区に吉村文学の城 来春開設 自宅書斎も忠実に再現

吉村昭さんの書斎。「ゆいの森あらかわ」にできる吉村昭記念文学館には本の並びまで忠実に再現される=荒川区提供

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 「戦艦武蔵」などの記録文学で知られる作家吉村昭さん(二〇〇六年没)の記念文学館や、緑の中で本が読める図書館などが入るユニークな読書施設を東京都荒川区が来春開設する。区が四日発表した新年度予算案に整備費四十三億三千百二十九万円が盛り込まれた。 (中村信也)

 この施設は「ゆいの森あらかわ」。一四年度から三カ年の整備計画で、都電荒川線荒川二丁目停留所近くの四千百平方メートルの敷地ですでに工事が進んでいる。総工費は約六十億円。

 地上五階、地下一階で延べ床面積は一万九百平方メートル。植栽を施した読書のできるテラスや壁を本棚で囲んだホールなどがある。新国立競技場のデザインを建築家隈(くま)研吾さんらとともに担当する梓設計が手がけた。

 座席数は、区立図書館では最多の約八百席。ホールは、催しに使わない時は閲覧席にする。蔵書数は開架・閉架が各三十万冊。絵本館や子どもの遊び場、借りない本も持ち込めるカフェも設置する。

 吉村昭記念文学館は二〜三階の一部に入る。特製の長机に資料を広げて執筆していた吉村さんの自宅書斎(三鷹市)を忠実に再現する。書物などは、区に没後寄託された実物を、本棚にあった通りに配置。椅子に座ることもでき、臨場感を味わえるようにする。

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 吉村さんは一九二七年に今の荒川区東日暮里で生まれ、空襲で焼け出される四五年まで区内で暮らした。区内の寺院や喫茶店が登場する小説やエッセーもある。

 複合施設準備室の堀裕美子室長は「学芸員の立ち会いで資料の閲覧も可能にしたい。書斎に座って本棚を眺めれば吉村さんの頭の中が想像できます」と話す。

<吉村昭> よしむら・あきら(1927〜2006年) 作家。東京都荒川区内の東京市立第四日暮里尋常小(現ひぐらし小)、東京開成中学(現開成中学)を卒業。学習院大中退。徹底した取材にこだわり、簡潔な文章と丹念な描写で知られた。1966年、「戦艦武蔵」がベストセラーに。ほか代表作に歴史小説「破獄」。没後の東日本大震災で「三陸海岸大津波」が注目された。本紙連載小説に「彦九郎山河」など。妻は作家津村節子さん。

 

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