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一流大学卒業は将来の稼ぎに関係するか?-理系は大差なし

大学を選ぶ際には家族でさまざまなことを検討するが、多くの場合、大学のレベルが高いほど卒業後に高い給与が得られるはずだという論法に基づいて決断が下されている。

 そのため、親は子供を金銭的に許す限り最高の大学に入れることに労力を注いでいる。たとえ今、高い授業料を払うことになっても、その分子供が将来、多く稼げるようになるとの考えからだ。

 しかし、この公式が常に当てはまるとは限らない。また、この公式にやみくもに従うことで、子供に卒業後に必要以上の学資ローン債務を負わせることになりかねない。

 これは、米国の大学生数千人を対象にした調査結果を分析し、彼らの卒業から10年後の所得を確認した上で、われわれが導き出した結論だ。つまり、一流大学を卒業している方が将来の稼ぎがいいのは特定の分野だけで、その他の分野では変わりがないことが分かった。

大学のレベルが関係する分野

 われわれは約7300人の大学生について卒業から10年後を調査した。専攻分野をビジネス、工学、科学、社会科学、人文、教育などに分類し、大学を大きく「難関」「中間」「非難関」の3つのカテゴリーに分けた。難関校にはエリート校とその他の極めて競争率の高い大学が含まれ、非難関校には高校卒業資格を持っていれば誰でも入学できる大学が含まれる。

 STEM(科学・技術・工学・数学)系の専攻者は、大学のカテゴリーによる平均所得の差があまりなかった。例えば、科学専攻者の平均所得は難関、中間、非難関の各大学間で統計上大きな格差は見られなかった。工学専攻者の平均所得も難関と非難関校で大きな違いはなく、難関と中間校の差はごくわずかにすぎなかった。

 どういうことなのか。雇う側にとっては大学の名声よりも、これら分野で学んだスキルの方が優先されるようだ。これは恐らくカリキュラムが比較的標準化されていて、学生が身につけなければならない共通に認められた一連の知識があるためだろう。そのため、卒業後に高い給与を得るために、できる限りいい大学に行く必要がないのかもしれない(注:家計所得や人種、性別、結婚の有無、大学進学適性試験(SAT)の得点、修士学位、卒業時の年齢といったその他の多くの要因もわれわれは勘案している)。

 各家庭にとっては、こうした所見を理解しておくことが非常に重要だ。なぜなら、一流大学のSTEM系の学位を追い求めることで、子供に不必要に多額の債務を負わせることになりかねないからだ。金銭的支援制度が確かに役立つ場合もあるが、多くの家庭にとって教育費は依然、学校によって大きく左右される。

 とはいえ、STEM以外の専攻分野については所得事情が非常に異なり、どの大学を卒業したかが極めて重要になってくる。

 所得格差が最も大きいのがビジネス専攻者で、難関校の卒業生の所得は中間校の卒業生と比較して平均12%、非難関校の卒業生と比較して18%それぞれ多かった。社会科学専攻者も同様で、選抜校の卒業生の所得は中間校の卒業生よりも11%、非難関校の卒業生よりも14%それぞれ多かった。

 考えられる理由はたくさんある。ビジネス分野では、一流校ほど卒業生の人脈や就職先とのコネが充実している可能性がある。その他の専攻分野では、一流大学ほど学生同士の人脈や学部、大学リソースが優れているほか、少なくとも社会科学と人文については、より良い大学院に入学しやすくなる。理由はどうあれ、これら専攻分野については一流大学の学位を取得する甲斐はあるかもしれない。

数字の追求

 こうした結果から得られる明白で実用的な教訓は、数字を詳しく調べるべきだということだ。大学は各家庭にとって最大の投資の1つになる可能性があるため、子供も親も必要な情報を入手し、そのコストと大学や専攻に応じた将来所得をはじき出してみるべきだ。

 しかし、データは往々にして見た目よりも微妙な差異があるものだ。まず、これら数字は全て平均にすぎないという点だ。つまり、各個人の実際の給与はそれら数字を上回っていたり、下回っていたりする場合があるということだ。

 また、逸失利益の問題もある。専攻を決める際は修了までの期間を考慮すべきだ。専攻によっては学校に通う期間が長くなり、授業料が増える一方で、その分働く期間が短くなり、所得が減る可能性があるからだ。

金銭面以外の問題

 1つ注意すべきは、自分が選んだ大学に入れたとしても、希望の分野を専攻できるとは限らないということだ。大学によっては人気の学部の登録者数が限られている場合があり、入学後にさらに選考過程を経なければならない可能性もある。入学プロセスでは通常、必修科目の成績が大きな部分を占める。したがって、自分の成績を確認し、希望の学部に入れる確率を検討すべきだ。

 さらに、行きたい大学院があり、そこに入学する上で役に立つという理由から学部を選ぶ人も多いだろう。例えば、法科大学院への準備のために教養学部を選ぶ人は、その学部を卒業した場合に得られる可能性のある所得は気にしていない。そのような人は、検討している大学の希望の学部から大学院への入学状況について調べておくべきだ。

 最後に心にとどめておくべきは、金銭的なコストとメリットは子供が背負うことになる負担のほんの一部にすぎないということだ。精神的なコストも考慮すべき場合がある。ほとんどの人は勉強や評価にストレスを感じるものだ。競争率が高い大学ほど、学生の学力は高い。そのため、競争率の高い大学や特に難しい学部では、高校ではクラスの上位にいた人の多くが平均かそれ以下になってしまう。このような状況に適応するのは難しい場合がある。

 一方、人によっては、味気ない金銭的な報酬計算よりも、初めての1人暮らしや大学生活の満喫、新たな人との出会いといった感情的なメリットの方が重要な場合もある。

 結局、大学選びの決め手となるのは各自の適性や興味、嗜好(しこう)だ。しかし、大学が子供の将来にどう影響するかについて現実的な情報を得た上で判断すべきだ。

(執筆者のエリック・アイデ氏は米ブリガムヤング大学の経済学教授。もう一人のマイケル・ヒルマー氏は米サンディエゴ州立大学の経済学教授)

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