日銀のマイナス金利導入で長期金利が史上最低記録を更新
どうも千日です。マイナス金利導入で長期金利が下がってるけど、要するに住宅ローンの金利は今後どうなるのか?
これから3月の新築マンションの引渡しラッシュを迎える時期です。審査の期間を3週間とすると、そろそろ住宅ローンをどうするかという決断を迫られている人が多い時期ですね。
このブログでは、以下の3つを柱として解説していきます。
- 住宅ローンの変動金利と固定金利がどうやって決まるのか
- 日銀のマイナス金利導入で長期金利が低下した理由
- 今後の住宅ローンの金利動向
では始めますね。
1.変動金利と固定金利では指標となる金利の種類が違う
報道では『日銀のマイナス金利導入から長期金利が連日最低を更新している』というニュースで持ち切りです。
長期金利ということは、住宅ローンも長期だからローンの金利が下がるってこと?
ニュースで報じられる長期金利とは住宅ローンの金利ではありません。債券、特に長期国債(満期までの期間が10年弱のもの)の値動きに伴う、実質的な金利を言うんです。
早い話がニュースで『下がった!また下がった!』と騒いでいるのは、10年国債の金利の動向であって、住宅ローンの金利とイコールじゃないんです。
しかし、住宅ローンに影響するのは確かです。ただし、住宅ローンの金利タイプ、つまり変動金利と固定金利では影響の仕方が違います。
住宅ローンの金利を変動にするか、固定にするか、重要な決断をするにあたっては、そこのところをちゃんと理解しておきたいですね。
マイナス金利で変動金利が下がるのは銀行間で住宅ローンの争奪戦が激化するから
変動金利は『短期プライムレート』に連動します。
『短期プライムレート』はどうやって決まるかというと、銀行間で資金を融通するときに指標となる『市中金利』に連動します。
そして、『市中金利』はどうやって決まるかというと、日本銀行(日銀)が金融機関(銀行)にお金を貸すときに設定している『政策金利』によって決まります。
マイナス金利といっても、日銀が銀行に融資する金利=政策金利がマイナスになったのじゃありません。銀行が日銀に預けている預金の金利がマイナスになったのです。
住宅ローンの変動金利に直接的に影響するような金利の変動があったわけではないんですね。影響があるとすれば、それは間接的な影響です。
銀行が今まで日銀に預けてい余剰資金に逆に利息を払わせる。銀行は自分が預けている預金に利息を払うなんて嫌ですから、日銀に預けた預金を引き落とす。その資金は投資や融資に向けられて、経済を刺激するだろう。
これが日銀の描いた絵です。つまり、銀行から引き落とした資金は住宅ローンにも向けられるはずであり、銀行間の住宅ローン争奪戦を激化させるだろう、ということです。
住宅ローンでは、やはり金利の安さがポイントですから競争によって変動金利はさらに下がるといわれており、すでにネット系の銀行を中心として変動金利をさらに下げてきていますね。
マイナス金利で固定金利が下がるのは、固定金利が長期金利と連動しているから
住宅ローンの変動金利が日銀の政策金利によって決まるのに対して、固定金利は長期金利によって決まるんです。
長期金利はその時点の金融政策の影響も受けますが、それとは別の次元で、長期資金の需要・供給の市場メカニズムの中で決まるという色合いが強いです。
将来の物価変動(インフレ、デフレ)や将来の短期金利の推移(やこれに大きな影響を及ぼす将来の金融政策)などについての予想がダイレクトに金利に反映されます。
- 変動金利は日銀の政策で上下する
- 固定金利は市場の動向で上下する
こういうことです。決まり方が全然ちがうんです。
しかし、日銀のマイナス金利が導入されてから、長期金利は大幅に下落しました。
なんで?長期金利は政策によって上下しないんでしょ?
と思いますよね、その疑問はもっともです。そのからくりは次の章で詳しく説明します。ここでは、マイナス金利の導入が固定金利にどう影響するかという話に集中しますね。
マイナス金利によって長期金利が大幅に下落しました。住宅ローンの固定金利は長期金利に連動しますので、1月から2月にかけてのフラット35の金利は0.06ポイント下落しました。
- 2016年1月のフラット35の金利は1.270%~2.090%
- 2016年2月のフラット35の金利は1.210%~2.030%
連日報道されている長期金利の下落幅はもっと劇的です。日銀の発表直前は0.2%で推移してたのが2016年2月5日には一時0.035%まで下落しました。
長期金利の推移グラフ
これと比べると住宅ローンの固定金利の下がり方はあまりに小さいですね。
2.長期金利が下がった理由は国債の価格が上がったから
国債の価格と金利の関係は逆方向に動きます。
つまり
- 債権の価格が上昇すると金利は下落する
- 債権の価格が下落すると金利は上昇する
こういうことです。今回の長期金利の下落は国債価格の上昇によるものだというのが、千日の考えです。
ここで言う金利とは利回りを言います。投資した元本に対して投資の成果として得られる利益が年に何パーセントかという割合です。
例を挙げて説明します。
前提
- 10年国債
- 額面金額100円
- 券面利率2.0%
国債の相場が100円の場合
毎年2円の利息が貰えますね。10年後の満期には100円の元本が返ってきます。
100円投資して毎年2円の利益ですから、運用利回りは年2%です。
国債の相場が95円の場合
額面100円の国債が95円に値下がりしている時に買えば、毎年2円の利息を貰える上に満期で額面どおり100円で償還されます。購入価格との差額である5円が値上り(キャピタルゲイン)として手に入ります。
95円投資して毎年2.5円の利益ですから、2.5÷95で運用利回りは2.6%です。
国債の相場が105円の場合
額面100円の国債が105円に値上がりしている時に買えば、毎年2円の利息を貰えますけど、満期で返って来るのは額面の100円だけです。購入価格との差額であるマイナス5円が値下がり(キャピタルロス)として被ることになります。
105円投資して毎年1.5円の利益ですから、1.5÷105で運用利回りは1.4%です。
債権の価格と利回りは逆方向に動くことが分かりますよね。
- 価格95円の利回りは2.6%
- 価格100円の利回りは2%
- 価格105円の利回りは1.4%
マイナス金利で銀行の余剰資金が国債に流れて国債の価格を押し上げた
日銀のマイナス金利発表によって今迄銀行が日銀に預けていた預金に銀行が利息を払わなければならなくなりました。
銀行は当然日銀から預金を引き出します。ではお金をどうします?金庫に保管しておきますか?
そんな勿体無いことはしません。
銀行のビジネスは金利で儲けるビジネスです。現金をそのまま置いておくというのはロスなんですよ。
- 何か利息の付く投資
- 日銀なみに安全な投資
- すぐに投資できる銘柄
そういう投資先として『とりあえず』日銀から引き揚げてきた資金を国債の購入に充てたんです。これはいわば脊髄反射的な反応です。
全ての銀行がこぞって国債の購入に走れば、当然国債の価格は上がりますよね。国債価格の上昇は?前述のように長期金利の下落という訳です。
今回の長期金利の下落は、金利そのものの動きというよりも、銀行が一時に国債の購入に殺到したことによる国債価格の上昇を反映したものだという事です。
3.今後の住宅ローンの金利動向
では、これからの住宅ローン金利の動向について、考えてみたいと思います。ここで述べることは、執筆時点の情報に基づく、あくまで千日個人の見解であることを踏まえて読んでくださいね。
変動金利の今後について
前述しましたが、マイナス金利政策と変動金利には直接の因果関係はありません。ただ今回のことで言えることは、日銀がかなり思い切った施策を採ってきたということです。変動金利は政策金利の影響を受けますので、日銀が思い切った利上げに踏み切れば、6か月後にはローン金利が上がることになります。
現在、ほとんどタダのような金利になっていますが、現在の金利水準でカツカツの返済計画を立てるのではなく、余裕をもった返済計画を立てる必要があるでしょう。
固定金利の今後について
長期金利の歴史的な下落は一時的に銀行が国債の買いに走っただけだとするなら、今後緩やかにもとに戻っていくでしょう。
今回報道されている長期金利の下落は、銀行という巨額の資金を持った一部の企業が金利の指標となる債権を一斉に購入したことで、相場に異常な変動をもたらしたことによるもの。
長期的な市場の予測ということではない。
住宅ローンの今後の動向を考えるにあたっては、ノイズでしかないように思います。今後さらに固定金利が劇的に下がるということは考えにくいです。理由は、今回の長期金利の下落の理由が、銀行が国債を急激に大量に買っただけだからです。
この長期金利の下落については、おそらく日銀の想定の範囲内です。
今回のマイナス金利政策が当たれば、いったん国債に集中した資金は徐々に市中に流れていきます。経済がデフレを脱却すれば、金利は上昇します。
マイナス金利のショックで一時的に国債に資金が集中し、長期金利を下げている今が固定金利の底かもしれません。
以上、千日のブログでした。
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