NON STYLE石田さん、壮絶なうつ病体験を告白… 病状と回復までの軌跡
2008年の「M-1グランプリ」を制するなど、実力派の人気漫才コンビ「NON STYLE(ノンスタイル)」。そのボケ担当・石田 明さん(写真左:「NON STYLE TALK 2011」より)は、実は普段テレビなどで見る陽気な姿からは想像がつかないほど、壮絶な「うつ病」を過去に経験されていました。果たして、深刻な病状から石田さんはいかにして回復されたのでしょうか?
人気お笑い芸人が経験した「うつ病」の恐怖
石田 明さんは、2000年5月に相方の井上裕介さんと漫才コンビ「NON STYLE」を結成。その類まれなお笑いセンスを発揮し、わずか1年ほどで表舞台に躍り出ます。
3年後の2003年頃になるとライブは超満員、レギュラー番組も獲得し、順風満帆かのように思われたNON STYLEですが、この時期から石田さんは、なぜか自分の実力に対して過度にネガティブな評価を感じてしまいます。
石田さんが、うつ病の兆候を感じるようになったのは、ちょうどその頃でした。先日放映された『主治医が見つかる診療所』のなかで語られた内容をもとに、その遍歴を辿っていきます。
最初の症状は手の違和感、しびれ、放心状態
実は、石田さんは人見知りが激しく内向的な性格とのこと。しゃべることが仕事であるのに、しゃべるのが苦手。お笑いの現場で見せなければならない明るくコミカルな姿を演じることに、内心では強いジレンマを感じていたそうです。
そのせいか、自分は「お客さんの期待に応えられてない」「自分はおもしろくない奴」と非常にネガティブな思考にとらわれてしまいます。
ちょうどその頃、自分の手がまるで自分のものではないかのような違和感や手のしびれを感じたり、漫才の最中にもかかわらず相方のつっこみに反応しない放心状態に陥ることもあったそうです。
うつ病がさらに深刻化してしまう“事件”が発生
石田さんが25歳になった頃には、父親の借金に悩まされ始めます。
当時、板前の父親が抱えた借金、その保証人になっていた石田さんは、「絶対に売れないといけない」という強烈なプレッシャーに、日々押しつぶされそうになっていたとのこと。
(借金の金額には触れてはいませんが、数年後みごと優勝を果たす賞金1000万円のM-1グランプリを、5回優勝しないと返せないと別の番組で語っていたことがあります)
「今の芸人としての給料では全く返せる額ではない。どこにも行けない。逃げ道が何もない…」
そんな行き着く先のない泥沼のような感情が、石田さんの心に深い闇を作ってしまうのです。
不眠症、過呼吸症候群、さらには希死念慮まで…
ここからは、明らかなうつ病の症状が石田さんを襲い始めます。
仕事の失敗を考えることで眠れなくなる、ストレスからくる過呼吸症候群により、身体が痙攣を起こすこともあったそうです。
楽になりたい… そう思うようになった石田さんは、ふとした拍子にベランダから飛び降りてしまいそうな感覚――「希死念慮」と呼ばれる精神状態にまで陥ってしまいました。
いつか本当にここから飛び降りてしまわないよう、石田さんは鳩よけ用のネットをベランダに張りめぐらせて自ら自殺を防いだそうです。
疲労感、胃腸障害、突発性難聴…うつ病のさまざまな症状
石田さんが体験したうつ病の症状は…
・手のしびれ
・放心状態
・不眠症
・過呼吸症候群
・希死念慮
でしたが、人によってあられる自覚症状が異なります。
例えば、疲労感、倦怠感、強烈な眠気(過眠)などを日々感じるようになる人もいるようです。
睡眠はとってるはずなのに、日中ひどく眠い、疲れやすく何をやるにしても意欲が低い…。
他には、下痢や便秘を繰り返す胃腸障害や、頭痛、肩こり、吐き気を感じる人。そして、天井が回るようなめまい、耳が聞こえづらくなる突発性難聴といったような症状を訴える人もいます。
睡眠障害では、夜眠った状態でいきなり怒鳴ったり、泣け叫ぶ。起き上がって部屋をウロウロ歩いたり、壁を蹴飛ばしたりする。
このような症状を夜驚症(やきょうしょう)いいますが、これもうつ病に深く関係しているといわれています。
【夜驚症の体験談】
集団に入れない。集団の時に指示が出ても伝わらない。返答が遅い。嫌な気持ちを出せずにいると夜驚がある。こだわりがある。
このようにうつ病は、こころのトラブルが身体へと波及して、さまざまな症状があらわれる病気なのです。
厚生労働省では、うつ病などのこころの病気に関する情報をまとめた「みんなのメンタルヘルス」というサイトを公開しています。うつ病の具体事例や、周囲の方々のサポートの仕方など詳しくまとめられているので、ぜひ参考にしください。
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/index.html
石田さんはうつ病をどうやって克服したのか?
大変つらい症状に悩まされた石田さんですが、希殺念慮があらわれ始めたころ、病院に通い投薬治療を始めました。
しかし、投薬治療を1年続けてみたものの、なかなか改善の兆しがみられません。
そんな中、先輩漫才師であるブラックマヨネーズの吉田さんから言われたひと言が、石田さんをうつ病から救うきっかけになったそうです。
「トーク番組やひな壇の時に、オレも手がしびれてくる」
この言葉を聞いた石田さんは、「自分だけじゃないんだ!」と思い、すっとこころが軽くなりました。
この日を境に、周りに自分の症状を打ち明けていくようになり、薬を減らすことに成功。段々とうつ病が改善されていくようになります。
最近ではSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)の普及で「共有」「シェアする」といった言葉がよく使われるようになりましたが、石田さんの場合、“悩み”を共有することがメンタルケアに繋がったといえるのではないでしょうか?
うつ病と関係が深い脳内ホルモン"セロトニン"とは?
人の脳の中には幸せを感じるホルモン物質があります。
“セロトニン”というものですが、この物質が少なくなるとイライラや不安を感じたり、ストレスに対しての抵抗力が弱まります。
また、セロトニンは、睡眠を促すホルモン="メラトニン"を生成する材料になるため、不足することで眠りが浅くなったり睡眠障害を伴うことがあるそうです。
では、なぜ、セロトニンが少なくなるのか?
これには諸説あるようですが、
・過度のストレスを感じ続けることで、セロトニンが消費され少なくなる
・日光に浴びる機会が少ない生活習慣
・栄養のバランスの偏り
などが原因として考えられています。
特に、"日光"に関しては、季節性うつ病と深い関係があります。
季節性うつ病とは、特定の季節になると気分が落ち込み、うつ病の症状が現れる症状のこと。日照時間が少なくなる冬季に、この症状に悩まされる人が多いようです。
自宅から出る機会が少ない人も、陽の光を浴びることが少ないためうつ病に注意する必要があるでしょう。
【参考】
冬に気分が落ち込みがちなあなた、冬季うつ病かも?
https://www.c-notes.jp/articles/134
セロトニン不足で太ってしまう?
糖質はセロトニンを一時的に分泌させる作用があります。
そのため、セロトニンが少なくなると、分泌を促すため糖質が欲しくなるので、肥満に気をつけなければなりません。
疲れた時に甘いものが欲しくなるのは、まさにこの作用ですね。
「ストレス太り」という言葉がありますが、頻繁に糖質を摂取するクセがつくと、今度は肥満だけではなく糖尿病の危険が潜んでいます。
うつ病を招きやすい生活環境は、肥満や糖尿病を引き起こす恐れもあるのです。
ちなみに、男性に比べて女性の方がセロトニンの分泌量が少なく、男性の52%しか分泌されていないとのこと。そのためうつ病患者数は、男性よりも女性の方が多い傾向にあるようです。
特に女性にとって気になるダイエットは、心身共にストレスが掛かるため適度に息抜きをしながら、少しずつのペースで中性脂肪を減らしていくことが大切です。
うつ病からの回復への手がかりは…
再び、NON STYLE 石田さんに話を戻しましょう。
先述のとおり、お薬を飲んでもなかなか治らなかったうつ病が、先輩や周囲に打ち明けるようになってから症状が改善されていきました。
悩みを一人で抱え込まず、誰かに相談するなどして気持ちをシェアすること…。そうやって孤独・孤立を避けることが、負のスパイラルから抜け出し、うつ病から救済されるひとつの特効薬になるのかもしれません。
あなたも、人知れず抱えている不安や悩み、相談してみませんか?
日本各地に設置されている相談窓口をまとめましたので、下記リンクをぜひ参考にしてみてください。
【参考】
こころの病、誰にも知られたくない、でも誰かに相談したい…そんな時に頼れる相談窓口リスト
https://www.c-notes.jp/articles/78
著者情報
この記事が気に入ったら…