本日は初心に帰り、オーソドックスな登場人物紹介スタイルで、ニンジャスレイヤーを苦しめる邪悪なニンジャを紹介していこうと思います。
「貴様には、生きたリモコン時限爆弾になってもらう。プラスチック・バクチクを抱えてトーフ・ジェネレーターに飛び込み、メルトダウンを引き起こすのだ!」
第1部「ネオサイタマ炎上」編において、総合的な実力において最強の一角と目されるソウカイ・シックスゲイツの無慈悲なるニンジャ、ビホルダー。車椅子に乗り、一見すると戦闘では圧倒的に不利と思われるこのニンジャが、何故最強の一角なのか? それを検証するために、ソウカイヤにおける彼の働きぶりを追ってみましょう。
◆ビホルダー◆
ソウカイ・シックスゲイツの一人。半身不随のため車椅子で行動。カナシバリ・ジツを使って敵の動きを止めたり、催眠状態に陥れたりできる。普段はサングラスをかけており、裸眼を直視した敵は死ぬ。交渉能力も高い、指揮官級のニンジャ。(ニンジャ名鑑第46節より)
外見的特徴
ニンジャ装束を纏い、透過率をコントロールできる特殊なサイバーサングラスをかけている。さらにニンジャの運動能力に耐えうる特殊仕様の車椅子に乗っている。ニンジャソウルの影響により、その瞳の色は妖しい青。身長は183cm(ニンジャスレイヤーよりやや大きい)。車椅子に乗っているため小柄な印象がつきまといがちだが、長身の部類に入る。髪の色は不明。
戦闘スタイル
ジツ:カラテ比率=8:2程度
ビホルダーはコブラニンジャ・クランのグレーターニンジャソウル憑依者であり、グレーター級とは思えぬほど強力なフドウカナシバリ・ジツを有している。裸眼で彼の目を覗き込んだ者は即死するため、彼は常に透過率コントロール可能な特殊サイバーサングラスで目元を覆い、ジツの行使時にはその透過率を上げてカラテシャウトを発する。サングラスのスモーク透過度合いでジツの強度が変化するという点が、古典的なニンジャ作品と比べて極めて合理的であり新しい。
透過率50%:半分スモークが掛かった状態。ジツを受けた者はその場に動けなくなる。ニンジャかモータルかを問わず、一度に複数の敵を対象にでき、しかも命令を強要できる。その効果はしばらく持続すると考えられ、極めて強力である。
「貴様がニンジャスレイヤー=サンか」ビホルダーは涼しい口調で言う「正体を明かしてもらおう。お前の手で、そのメンポと頭巾を外すのだ」。ニンジャスレイヤーの手がバリキ中毒者のようにわなわなと震え始める。フジキドは何が起こっているのか理解できなかった。敵が使ったジツの正体すら判らない。
— Ninja Slayer (@NJSLYR) 2010, 11月 9
透過率100%:裸眼と同じ状態。この状態でジツをかけられれば、ニンジャスレイヤーとて即死する。「このジツはまさに一撃必殺であり、決まればラオモト・カンであろうと殺すことができる。だがビホルダーがそれを試みることは決してないし、だからこそラオモトもこのような危険な男を手元に置き続けるのだ」とは原作者談。
『奴に憑依したニンジャソウルの正体は、コブラニンジャ・クランのグレーター・ニンジャだ。正攻法のカラテで攻めれば最後、奴は今度こそ裸眼で強力なカナシバリ・ジツを使い、オヌシは即死するであろう』『ではどうする?』『フジキドよ、オヌシの体を俺に預けろ』『断る』『仇を討ちたくないのか?』
— Ninja Slayer (@NJSLYR) 2010, 11月 9
ナラクの咄嗟の助言がなければ、ニンジャスレイヤーは即死していたであろう。
ビホルダーにとってはこのフドウカナシバリ・ジツこそが最大最強の武器であり、彼がどれほど己のこのジツに精通し、また全幅の信頼を寄せていたかは、彼がニンジャスレイヤーの前に敗北しそうになった時に見せた執念を見れば明らかであろう。
オリジン・エピソード
「ネオサイタマ炎上1」の「レイジ・アゲンスト・トーフ」がビホルダーの登場エピソードである。
- 作者: ブラッドレー・ボンド,フィリップ・N・モーゼズ,わらいなく,本兌有,杉ライカ
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/エンターブレイン
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墨絵師を目指しつつトーフ工場で働く男シガキ・サイゼンは、トーフプレス機で右腕を失い、粗悪な戦闘用義手をあてがわれた上に解雇された。明日の日銭を稼ごうとしている時、彼はトーフヤ襲撃の噂を聞きつける。だがそれはソウカイヤが仕組んだ株価操作のための暴動計画であったのだ。
◆NINJA FACTS◆
カラテとジツ以外の多彩な能力
我々はニンジャの能力を測る時に、スリケンやカラテやバック転といった身体能力、あるいはジツの能力に目が行きがちだ。しかし彼は指揮官級ニンジャであり、カラテとジツだけでは測りきれない。「指揮官級ニンジャって何? 忍者が指揮官やっちゃだめでしょ?」という一般市民の深遠なる問いの答えを、ビホルダーは物理書籍第1巻の段階にして、実例をもって示してくれるのだ。
大画面を背に大衆を煽動するビホルダー。総合的な能力が極めて高い。
「レイジ・アゲンスト・トーフ」の中でも、彼は大衆を集めて薬物と煽情的な演説で興奮状態に陥れ、暴徒へと変えてトーフ工場へと送り込んでいる。単にトーフ工場で破壊工作を行うだけなら、どれほど粗暴で経験の浅いニンジャでも可能だろう。だが彼に与えられていた任務は、本物の暴動を仕立て上げて報道させ、サカイエサン・トーフ社の株価を暴落させることであった。
これほど精巧かつ大規模なマニピュレーションが可能なニンジャは、特にソウカイヤにおいては数少ない。しかもジツではなく、演説でそれを成し遂げているのだ。トレーラーの手配や暴徒の指揮なども彼の手腕であろう。そしてトーフ工場に突撃後は、サカイエサン社のクローンヤクザをジツによって催眠状態にし、手駒として操っている。カラテ無しでここまでのことをしてのけ、さらにその気になれば車椅子で高速移動しながらスリケン投擲で戦うことも可能だ。確かに彼は強力な一撃必殺のジツを持つが、決してそれだけの男ではない。ビホルダーの総合的な能力の高さは疑いようもないといえよう。
脊髄損傷前のビホルダーはさらに強敵?
ビホルダーははじめから車椅子状態だったわけではない。マルノウチ抗争でザイバツ・シャドーギルドのニンジャと交戦して負傷し、脊椎を損傷して半身不随となったのだ(どのザイバツニンジャが彼を負傷させたのかは不明)。
「貴様は実際だいぶ強い」デスナイトは認めた。「だが、あのラオモト・カンやアースクエイク、ビホルダーを手にかけるほどのワザマエか?解せぬ。このままやれば、貴様は死ぬだろう」「キューン!」不吉な言葉に同意するかのようにバイオイーグルが鳴き声をあげ、上空を旋回する。
— Ninja Slayer (@NJSLYR) 2011, 6月 21
マルノウチ抗争に参加したザイバツニンジャのデスナイトも、ソウカイヤの手練としてビホルダーの名を挙げる。
「ニンジャスレイヤー グラマラス・キラーズ」(漫画) 第2話:サツバツ・ナイト・バイ・ナイト2★P.14★ #njslyr pic.twitter.com/FPPuiLXofp
— B's-LOG COMICS (@comibi) 2014, 4月 13
マルノウチ抗争前には、ビホルダーは車椅子に乗っていない。
これは車椅子状態でないビホルダーが描かれた初めての瞬間だ。原作者完全監修のもと、ソウカイヤ視点でストーリーが展開する「グラマラス・キラーズ:サツバツ・ナイト・バイ・ナイト」には、ソウカイマニアならば見逃せないシックスゲイツ事情が随所にちりばめられているのだ。
ニンジャスレイヤー グラマラス・キラーズ2 (B's-LOG COMICS)
- 作者: さおとめあげは,(原作)ブラッドレー・ボンド+フィリップ・N・モーゼズ,(原作翻訳・漫画版監修)本兌有+杉ライカ,(キャラクター原案)わらいなく
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何故ビホルダーは車椅子の状態だったのか?
では何故、ビホルダーは車椅子の状態であったのか? ネオサイタマでは戦闘サイバネも珍しくはなく、中程度までの肉体的損傷をサイバネティクスで補うことも無理ではないはずだ。考えられる可能性としては「単純に何らかの理由でサイバネ化が不可能であった」「サイバネ化による何らかのリスクを考えて、車椅子を用いた戦闘スタイルを磨こうとしていた」「いずれサイバネ手術を行う予定であったが、それまではシックスゲイツとして最前線に留まり続けることを望んだ」などがある。確かに、サイバネ化しても即座にかつてのカラテを取り戻せる保証などどこにもない。どれもビホルダーならばありうる選択肢だろう。
いずれにせよ、「レイジ・アゲンスト・トーフ」でニンジャスレイヤーはビホルダーの前に苦戦を強いられ、ナラク・ニンジャの力を使わねば勝利は不可能であった。もし仮にビホルダーが全盛期の状態であったならば、フドウカナシバリ・ジツとカラテの複合技によって、ニンジャスレイヤーを窮地へと追い込んだであろう。爆発四散していたのはニンジャスレイヤーの側であったかもしれないのだ。カラテのワザマエが重要視されるシックスゲイツの重鎮の座に、車椅子の状態となって以後も君臨し続けていた事から考えても、ビホルダーの有能さは疑うべくもないのである。
◆未来へ◆
たった一話限りの登場なのに、今なお我々の心にその強敵としての印象とソウカイヤクザの卑劣さを刻み続けているビホルダー。ある時は高潔そうな演説で人々を惑わし、ある時は下劣なヤクザの側面をのぞかせ、金縛り状態の手駒にえげつない命令を下す。憎たらしい悪役ですが、彼のような魅力的なキャラがいるからこそ、ニンジャスレイヤーという作品がより多層的で面白いものになっているのだとも言えます。そして気になる全盛期のビホルダーの強さは、もしかすると前回のラオモト・カンの紹介記事でも言及されたソウカイヤ・スピンオフでいつの日か語られるのかもしれません。
(Tantou)