突然打ち切られた「ひょっこりひょうたん島」
この番組はまだ29歳だった井上ともうひとりの放送作家、NHKの若いディレクターの3人でスタートした企画。子供たちが遠足に行ったひょうたん島が火山の噴火で大海原に流され、そこにドン・ガバチョやトラヒゲといった個性的なキャラクターが現れ、ともに波に流されるまま奇妙な国や島を訪ねるというストーリーだ。
当初は視聴率が10%も行かず、「半年で打ち切りかもしれない」と苦戦するが、井上らの奇抜で独自の世界観のストーリーや作曲家・宇野誠一郎の多彩な楽曲が徐々に浸透して、人気に火がついた。声優陣は藤村有弘や熊倉一雄、中山千夏、楠トシエら。明るく歌いやすい主題歌や個性的な面持ちの、今の言葉でいうなら「キモカワイイ」人形たちの造形も、ヒットの要因だったようだ。
番組終了を惜しむ声も根強く、この後、NHKで91年から03年にかけて6回にわたり、リメーク放送された。後に作家、劇作家と活躍した井上が物故したこともあって、作品は未完のまま。打ち切られなかったらどんな結末になっていたのか。
◇1969年4月 7日、前年10月から11月にかけて4人が殺された連続射殺事件の犯人として永山則夫逮捕。15日、厚木飛行場を飛び立ったアメリカ海軍のEC―121が、日本海上で北朝鮮軍戦闘機に撃墜される。25日、東海道新幹線の三島駅が開業。28日、仏シャルル・ドゴール大統領が辞任。
<1969年4月>
1960年代にNHKで放送され、子供を中心に国民的人気だったミュージカル形式の人形劇「ひょっこりひょうたん島」。番組は5年間、1224回続き、大人気の中、69年4月で突然打ち切りになった。
4月4…
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