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 宇都宮市で夫が飲む焼酎パックに毒を混ぜて殺害しようとしたとして、33歳の女が逮捕、起訴された。使われたのは米国でテロ計画に用いられたこともある猛毒のリシン。女はどうやって猛毒を手に入れたのか。

 事件が起きたのは昨年10月末。女は別居中の自衛官の夫(34)の自宅で、台所にあった焼酎パックにリシン入りの水溶液を混入させたとして年末、殺人未遂の罪で起訴された。女は「夫に消えてほしかった」などと供述しているという。

 発覚のきっかけは事件の約1カ月前、女が医薬品販売会社から偽名で殺鼠(さっそ)剤を購入しようとしたことだった。不審に思った会社から通報を受けた栃木県警が夫に話を聞くと、夏にも自宅で焼酎を飲んだ際に体調を悪くしていたという。近所の住人によると、夫は「具合が悪くて病院に通っている。胃腸が悪くて嘔吐(おうと)した」と話したという。

 県警が自宅にあった別の焼酎を分析すると、毒性のある常緑樹のキョウチクトウの毒素が検出された。県警がさらに夫宅の周辺で警戒を続けると、夫の留守中に、女が合鍵で家に入ったのを確認できた。台所の焼酎を改めて分析すると、焼酎は白濁し、致死量をはるかに超えるリシンが検出されたという。夫は焼酎を飲まず無事だった。

 関係者によると、女も元自衛官。職場で出会った夫と約10年前に結婚し、子どもにも恵まれた。ところが、約2年前に市内でトレーディングカードショップの経営を始め、開店時はテレビ番組にも取り上げられたものの、経営は軌道に乗らなかった。女は一昨年12月、ブログに「莫大(ばくだい)な借金をこさえてしまった」と書き、昨年1月に閉店した。借金や子育てをめぐって夫と頻繁にけんかを繰り返し、昨年3月に別居を始めてから、夫に殺意を抱いたとみられる。

 女はこのリシンを、市販されている観賞用植物のトウゴマ(ヒマ)から抽出したという。トウゴマの種からはひまし油が取れ、エンジンの潤滑油やポマードなど工業や美容品の原料に使われる。この際の副産物から微量のリシンが取れ、体内に入ると、細胞が壊死(えし)して臓器不全などに陥る。解毒剤はなく、水を飲むなどの対症療法で回復を待つしかないという。