中間管理職に感染拡大中!?「ひとりでできるもん病」と「おれのやり方コピペ症候群」!?

(写真:アフロ)

今日は、朝っぱらから2つの事例をご紹介します。中間管理職の「つまづき=成果が出せずに立ち往生してしまう典型的ケース」です。

ひとつめ、「ひとりでできるもん病」

「営業職のAさんは、1年前に、課長職になったが、なかなか、プレーヤー気分は抜けませんでした。ひとりで成果を出そうとして、頑張りました。部下は、Aさんに、なかなかついていけません。その結果、面談で部下から投げかけられた言葉は、Aさんを戸惑わせます。

「だって課長、最後は、自分で全部巻き取っちゃうじゃないですか?僕らの存在価値って何ですか?」

ふたつめ、「おれのやり方コピペ症候群」

技術では右にでるものはいないエンジニアのBさん。若い頃は昼夜をとわず働き、優秀な成果をあげてきました。マネジャーになってからは、同じ働き方や仕事のやり方を部下に求めました。仕事は、Bさんが、仕事ー部下のマッチングを考えて、最適に、かつ、もれなくだぶりなくふりました。

部下には忠実に自分のやり方を真似るよう指示し、チーム内ではメンバーに競争を行わせました。職場内のコミュニケーションはあまりなかった。成果は、飛び抜けたものがでるというわけではなかったでのですが、そこそこという感じでした。

しかし、Bさんに突然、不幸な出来事がおとずれます。最も優秀であった部下のCさんがメンタルダウン。この事件をきっかけに、職場のメンバーがそっぽをむきはじめます。

「Bさんのやり方には、僕たちはついていけません」

朝っぱらからで恐縮ですが「中間管理職のつまづきに関する2つの事例」をご紹介いたしました。僕が、ここ数年ほそぼそとつづけているのが、中間管理職の「つまづき」を収集するという研究?なもので(笑)・・・暗い?

この2つの事例は、前者が「ひとりでできるもん病」、後者は「おれのやり方コピペ症候群」といいます(笑)。

いずれも、巷や場末の酒場(?)で耳をそばだてていると、よく聞く話です。

「あの人、担当者としては優秀だったんだけど、人がついてこないんだよねー」

というセリフとともに(泣)。

管理職のつまづきに関しては、1980年代から、米国の何人かの研究者が、おもに上級管理職の脱線(derailment)について研究を進めていたことはよく知られていることです。

そして、この「脱線」を裏返せば、管理職としてリーダーシップを発揮して「まっとうな線路」を走ることになります。かくして「脱線研究」は、のちのリーダーシップ研究につながっていきます。

しかし、「脱線」というメタファは、一度、「車輪が外れてしまうと、なかなか線路には戻れない」、という意味において、外部労働市場が発達している米国の現状ーとりわけ上級管理職の現状にはあいますが、ちょっと日本の雇用慣行・および、中間管理職の現状とは、少しあわないような気がします。「脱線」という言葉が、すこし「強い」気がするのですね。

かくして生まれたのが「つまづき」という言葉です。つまづきという言葉は、「歩行中に、足先を物に突き当ててよろけること」をいうので、「脱線」ほどスパイシーではありません。

もちろん、この世の中には、「つまづいて、小指を机の角にぶつけたい!」と自ら願う人はいません。しかし、万が一、そうなったとしても、「いてー、誰だ、こんなところに机をおいたやつは!」とぴょんぴょん飛び跳ねるくらいの失敗。そして、もう一度、内省を繰り返して、リベンジをかけることができるくらいの失敗。

「つまづき」は、そんなニュアンスを表現できるのかな、と思っています。

大丈夫だよ、少しくらい、けっつまづいても。

少しぴょんぴょんはねて、歩き出せば(笑)。

ちなみに、中間管理職がよく罹患する「ひとりでできるもん病」と「おれのやり方コピペ症候群」は、「感染性のウィルス」?です。

上司から部下へと、部下からさらにその部下へと、それは日々の指導を通じて、世代をこえて感染するので注意が必要です。

人は、自分が受けた「スパイシーな指導」を、なぜか、世代を超えて、次の世代に再生産してしまいがちですね・・・。どうせなら、「反面教師」にして欲しいものですけれども、なかなかそうはいきません。

あなたは、「ひとりでできるもん症候群」にかかっていませんか?

「おれのやり方コピペ症候群」に感染している人は、周囲にはいませんか?

そして人生はつづく

(本記事は、中原の個人ブログ「NAKAHARA-LAB.NET」に掲載され2015/12/18の記事に、加筆・修正を加えたものです)