被害者女性の供述は矛盾だらけ
逆転無罪を勝ち取った男性(以下Aさん)の主任弁護人を務めた、伊藤俊介弁護士が語る。
「今回の事件の捜査過程において、鹿児島県警が『証拠隠し』をした可能性は否定できません。というのも、裁判の争点となった女性(以下B子さん)の膣内に残っていた精液のDNA鑑定において、県警は明らかに不自然な報告をしているのです。
まず、県警は捜査段階でDNA鑑定をした後、精液から採取したDNA溶液の残りをすべて廃棄している。さらに、鑑定の経過を記したメモまで捨てています。代替不可能な重要資料である溶液やメモを捨てるなど、通常ならあり得ません」
福岡高裁宮崎支部で1月12日に開かれた控訴審。当時17歳だったB子さんをレイプしたとして、'12年に逮捕され、'14年の第1審で懲役4年の実刑判決を受けていた鹿児島市の元飲食店従業員のAさんに、無罪判決が言い渡された。
事件の最大の焦点となった精液のDNA鑑定で、鹿児島県警が不正を行ったのは明らかだ。事実、控訴審では、岡田信裁判長自らが「不正な捜査」に言及。これは極めて異例なケースだ。
〈(県警の)鑑定技術が著しく稚拙であって不適切な操作をした結果DNAが抽出できなくなった可能性や、実際には(別の男性の)DNA型が検出されたにもかかわらず、それが、その頃鑑定の行われていた被告人のDNA型と整合しなかったことから、捜査官の意向を受けて、(鑑定できなかったと)報告した可能性すら否定する材料がない〉
Aさんを犯人へと仕立てあげた県警の「決めつけ捜査」は、それだけに留まらない。
県警は不自然な点ばかりのB子さんの供述を鵜呑みにし、まったく裏付け捜査を行っていないのだ。
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