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LOGzeudon

Webデザイナー「ろくぜうどん」のブログです

「村上隆の五百羅漢図展」を見てきました

日記

東京六本木にある森美術館にて開催されてる、「村上隆の五百羅漢図展 」を見てきました。美術館に行くこと自体久しぶり。

なぜ見に行ったのか

国内14年ぶりの個展であり、かつ巨大な作品が展示されていると知り、現地で実際に見るのが一番良さそうだと思い行ってきました。

村上隆氏について、見に行く前の認識はこんな感じでした。

  • 世界的にはかなり評価されている
  • 大胆すぎるフィギュアをつくって16億円で落札されてた
  • ゆずのアルバム「LAND」のアートワークやってた
  • 日本ではなぜだかやたら嫌われている

「世界で評価されている」のに「日本でやたら嫌われている」というギャップ。その理由はオタク文化に対してどうこう…とは聞いていましたが、その真意は、せめて実際に作品を見てからじゃないと判断できないよな、と思っていました。

展示に関する情報

後で知ったんですが、メイキングの動画が公開されています。

またCasaさんにて、詳細な展覧リポートが掲載されています。

casabrutus.com

個人的に印象的だった事など

作品のスケールと密度がスゴイ

スケールや作品の密度に圧倒されました。会場に入ると広がる広い空間と、巨大な作品。近づいて見てみると、大きいだけでなく細部まできっちり作り込まれてるのが伝わります。

いろんな質感・色彩のテクスチャが、何層にも計算されて刷り重ねられています。

キラキラするラメみたいな素材。

金、銀。

ザラザラした表面、ツヤツヤの表面。

鮮やかに折り重なったベタ塗りの色彩。

漫画的な線も、綺麗です。

これらを人の手で刷った、ということに驚きます。また、こういう漫画的な表現で、これだけ大きく密度のある(単なるベタ塗りではない)作品を見たのは初めてでした。

制作の過程も展示されている

作品を作る過程が、展示のまさにど真ん中に展示されているのが特徴的です。「制作プロセスとモチーフ」というテーマの個室があります。

こんな感じで、部屋の壁面には作品のモチーフの詳細説明があり、中央の棚には制作過程の様々な書類が展示されていました。進行管理表や制作の指示書などです。

「この小さな空間にキッチリドラマをブチ込め!!」村上隆氏の直筆指示のようです。

「指示書通りにヤレ!ボケ!」ひゃ〜。

村上隆氏を紹介する映像が見れる

展示を見終わった後、購入コーナーのさらに奥に、映像(NHKの番組?)鑑賞のスペースがありました。

彼が今まで何をやってきたのか、どのように考えて作品を制作しているのか。展示を見るだけではわからないそうしたことについて、ざっくり知ることができる内容でした。

展示や映像を見て色々思ったこと

映像を見て、村上隆氏はどうしたら自分の表現したいものがシーンで評価されるのかをかなりロジカルに考えている人だと理解しました。現代美術のコンテキストを汲み、求められているものが何なのか推察しながら作品を作る。「デザイン」が「よりよくする」姿勢だと捉えるならば、オタク文化を国際的・美術史的に認められるようにしようとしたその姿勢も、「デザイン」と呼べるのかもしれません。

一方、日本で嫌われている理由も、映像を見ながら何となく感じとりました。察するに、こういう人たちに嫌われてるのではと思います。

  • 「オタク文化」を自分事と捉えている愛好家やクリエイター
  • 商業に媚びたらそれはアートではないと考えるアーティスト

純然たるアーティスト気質というか、自身の追い求めるものを徹底して追求されてるので、何かしら批判が生まれるのは仕方のないところかと感じました。また、その向かう先が「オタク文化」であり、かつ「オタク文化」に帰属感のある多くの人たちとは真っ向から対立してしまう理論。多くの様々な批判が生まれたわけですが、曲げずに意思を貫き制作を続け、様々な取り組みを経て、今回の展示まで至った熱意は素直に凄いと思いました。

あと、論理的な思考だけでなく、先ほどの指示メモのような感情的な面があることに、なんというかとても人間味を感じます。

その一方、今回の展示作品を見て、「五百羅漢」「被災者への鎮魂」などの核であるはずのコンセプトについて、あんまり興味が湧きませんでした。制作過程のことや、村上隆氏が何を考えているのか、どんな舞台裏があったのか、そちらのほうが気になっていました。

これは最後に展示されていた作品ですが、48歳になった時のご自身の思いが殴り書かれています。現代美術に貢献したいとか、若い連中に進化がない、とか…。で、その上に小さく溜息ついたようなイラスト(自画像)と、大きく「馬鹿」と書かれてます。

見て、結局何の展示だったんだっけ?とぶん投げられた感覚。そのあたり、やはり根底にある設計が「デザイン」と違うと思い知らされました。この展示が、やっぱり「アート」「芸術」なんだなと、個人的によく思い知らされた作品。諸々はひとまず胸にしまっておきます。

そんなわけで、作品自体のスケール感には素直に圧倒されつつも、ちょっと頭で作品について考えようとすると、何だかもやもやしてくる展示でした。やはり自分にはアートよりデザインのほうが性に合っている…。

その他、会場の様子など

気に入ったところなど、写真を貼って終わります。

森美術館、展示入場直前のフロア。広くて立派。

受付の横にあった作品。並んで写真が撮れます。

奥行きのある作品は圧巻でした。

ドクロの群れ。一つ一つ色彩が違う。

大きい彫刻。ゴールドで眩しい。

小さいパンダ。かわいい。

大きくてかわいい。

自画像。鼻毛。

伊藤若冲的な、象と虎と山羊。

達磨の目のアップ。筆タッチなので黒一色かと思いきや、他の作品と同じく何色か重なっています。

もふもふ。小さいのかわいい。

「五百羅漢図」を描くのにモチーフになったという、狩野派の羅漢図。平面的な村上氏の作品を見た後だと、狩野派の日本画の描写に驚かされるというか、ベクトルは違えどやっぱりすごいなあと魅力を再確認しました。

こちらも大きな作品でした。 

アップ。鼻の中にもうじゃうじゃ。

別のアップ。小さい子かわいい。

羅漢図。大中小、いろいろな羅漢が描かれています。

アップ、小さい羅漢。

中くらいの羅漢。

大きい羅漢。

作品ごと、部分ごとにいろいろなテクスチャになってます。

お腹を開く大きい羅漢。

アップ。ニヤついてます。

船に乗ってる小さい羅漢たち。かなり描写が細かいです。

アニメっぽい躍動感ある動きの羅漢。

眩しい羅漢。

以上です。

百聞は一見にしかず。見る人それぞれに感じ取れるものが違う展示だと思いますし、貴重な機会なので興味ある方は是非〜。

www.mori.art.museum

(c) rokuzeudon