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[FT]スペインに政治空白の余裕はない(社説)

2016/2/4 14:30
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 スペインは今、フランコ氏死去後の時代にほぼ類例のない長い政治危機の中にある。昨年12月の総選挙は決定的な結果に至らず、二大政党である中道右派の国民党、中道左派の社会労働党ともに過半数を獲得できなかった。

 今週、国王フェリペ6世が行き詰まりを打開すべく、社会労働党のサンチェス党首に組閣を要請した。現時点で、サンチェス氏の努力が、存続できる政権の発足につながるかどうかはわからない。

記者に囲まれる社会労働党のサンチェス党首(3日、マドリード)=ロイター
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記者に囲まれる社会労働党のサンチェス党首(3日、マドリード)=ロイター

 スペインはこのような行き詰まりに直面しているが、少なくとも今のところは警報ベルが作動すべき状況ではない。欧州では選挙後の行き詰まりは珍しいことではない(ベルギーでは2010~11年の600日近くにわたり政府が存在しない状態が続いた)。

 スペインの金融システムと経済も、最も暗い時期は通り越した。スペイン経済は現在、欧州屈指の成長率を誇る。要因の一つは国民党を率いるラホイ首相の下で行われた構造改革だ。

■最大の危険はカタルーニャ州の問題

 それでも、この行き詰まりが大幅に長引けば危険が生じる。最大の危険は、18カ月以内にスペインから分離独立するとして手続きを進めているカタルーニャ州の問題だ。この独立問題に対する最善の答えは、公平で持続可能な新しい形で地方に権限を移譲する憲法改正による決着だ。それを実現するには、機能する政府が早々に発足する必要がある。

 組閣に取り組むサンチェス氏は、数々の政治的ハードルを乗り越えなければならない。自らが率いる社会労働党は定数350の下院で90議席しか獲得しておらず、首相になるためには反緊縮政策を掲げる新興政党のポデモスなどの支持が必要だ。そのような連合には多くの社会労働党議員が反対している。たとえば、スコットランド方式の住民投票でカタルーニャに自分たちの将来を決めさせるというポデモスの公約は受け入れがたい、という論拠だ。

 スペインの一部の政治家は、サンチェス氏がポデモスとの連立協議に失敗した場合、社会労働党と国民党が「大連立」を組むべきであると信じている。今週、デギンドス経済相はフィナンシャル・タイムズ紙に対し、そのような体制は自信や信頼性が得られて「理想的」だと語った。

 しかし、国民党はそれを嫌わないとしても、社会労働党には危険を意味する。そのような盟約は、スペイン政治は腐敗にまみれた主流派政党に支配されていると主張するポデモスを勢いづかせることになる。社会労働党は、ギリシャで全ギリシャ社会主義運動(PASOK)が急進左派連合(SYRIZA)に追い落とされたのと同じような状況に追い込まれることを恐れている。

 スペインがこの行き詰まりを脱するには再選挙しかないのかもしれない。しかし、この政治的危機の時にあって、スペインの二大政党は、国をどのように前進させるかについて合意を得ることにもっと努力できるはずだ。両党の大連立は実現可能でも望ましいものでもないかもしれない。しかし、たとえサンチェス氏がポデモスとの連立をまとめ上げることができたとしても、スペインが必要としている憲法に関わる新たな決定を実現するには、議会における中道右派の支持が必要だ。

 スペインの政治指導者たちは、1975年のフランコ氏死去後に左右両派の政党が多大に協力したことを思い起こすべきだ。戦後欧州が最も誇る成果の一つであるスペイン民主化の強力な基盤を築き上げるために、全ての党派が痛みを伴う譲歩をした。スペインとその憲法が混迷の時にある今、再び同じような責任、そして柔軟性を見せることが政治的立場の違いを超えて求められている。

(2016年2月4日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

(c) The Financial Times Limited 2016. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.


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