ライドンが実家に帰ったため、ハーディンとふたり並んで英文学の授業を受けることになったテッサ。いつになく仲良く『高慢と偏見』について語り合いますが、そこにボーイフレンドのノアから電話が。なぜか罪悪感を抱きながらも、“弟”のようなノアの言動にイラだってしまいます。
部屋に戻るとまたもやステフからパーティーの誘いがあり、ひょんとした偶然から行くことに。出かける支度をしながら、ステフから聞いた衝撃のハーディンの本性は……(前回)?
■危ないゲームに参加……!?
今夜のパーティーも先週と同じだった。芝生やハウスは酔っぱらった学生でいっぱい。どうしよう、寮の部屋で天井でも眺めていればよかった。
モリーはハウスに着くとすぐに消えた。ソファの空いているところを見つけて一時間ほど座っていると、ハーディンが歩いてきた。
「きょうは……感じが違うな」彼はちょっと口ごもった。わたしの全身をじろじろ見てから、顔にまた視線を移す。値踏みしているのを隠そうともしない目つき。彼が目を合わせるまで、わたしは黙ったままでいた。「その格好はよく似合ってる」
あきれた。いつもみたいに、体の線が見えない服を着てくればよかった。わたしはシャツの裾を思いきり引っぱった。
「ここで会うなんて驚きだな」
「こっちだって、また来てしまったのが驚きよ」わたしはその場を離れた。ハーディンは追ってこなかったけど、なぜか、追いかけてきてほしいと思ってしまった。
二、三時間もすると、ステフはまた酔っぱらった。というか、ほかのみんなもそうだった。
「〈真実か挑戦か〉のゲームをしようぜ」ろれつの回らないゼッドが言うと、まわりにいた仲間たちがソファに集まってきた。透明な液体の入った瓶をモリーに渡されて、ネイトががぶ飲みする。ハーディンは赤いカップからひと口飲む。大きな手がカップを覆い隠すほどだ。
ゲームにはもうひとり、パンク系の格好をした女子が加わった。あとはハーディン、ゼッド、ネイト、ネイトのルームメイトのトリスタン、モリー、ステフだった。
〈真実か挑戦か〉というのは定番のパーティーゲームのひとつで、真実を選んだ人は、恥ずかしい質問にも正直に答えなければならない。挑戦を選ぶと、無謀なことをさせられる。酔っぱらいばかりでやる〈真実か挑戦か〉なんて、絶対まずいことになる。そう考えていると、モリーがにやりとした。「あんたもやろうよ、テッサ」
「ううん、遠慮しておく」わたしは彼女の目を見ないよう、カーペットに視線を落とした。
「やる気があるなら、上品ぶるのを五分ほどやめないといけないな」ハーディンが言うと、ステフ以外の全員が笑った。彼の言葉が怒りに火を点けた。わたしはお上品ぶってなんかいない。たしかに自由奔放なタイプではないけど、修道院に閉じこもる尼僧でもない。
■ついに「挑戦」!
ハーディンをにらみつけ、彼らが作る小さな輪に加わってあぐらをかく。ネイトと、名前も知らないパンク女子のあいだだ。ハーディンが笑ってゼッドに何かささやくと、ゲームが始まった。
最初のうちは、ゼッドがビールの一気飲みに挑戦させられたり、モリーがむき出しの胸を思いきり見せていた。真実を選んだステフは、乳首にピアスをしていることを白状させられた。
「真実か挑戦か、テレーサ?」ハーディンに尋ねられて、わたしはひるんだ。
「真実……にしようかな」
「やっぱりな」ばかにしたように笑われたのにも取り合わずにいると、ネイトが楽しげに両手をこすり合わせた。
「さてと、きみは……バージンか?」ゼッドの質問に思わず咳きこむ。でも、立ち入った内容の質問に驚いているのは、ほほを赤くしているわたしだけ。みんなは固唾(かたず)をのんでこちらを見守っている。
「で、どうなんだ?」ハーディンにせっつかれる。この場から逃げたくなったけど、わたしはうなずいた。当たり前だ、バージンにきまってる。ノアとだって、抱き合ってお互いの体をまさぐるまねごとをしただけなのに。もちろん、服は着たままだった。
それでも、あからさまに驚く人はいなかった。全員、興味津々といった顔をしている。
「ノアと二年もつきあってるのに、セックスはしてないってこと?」ステフに聞かれ
て、居心地が悪くなる。
わたしはうなずくことしかできなかった。「ハーディンの番よ」注意をそらしたくて、あわてて言葉を継いだ。
「挑戦だ」ハーディンはさっさと答えた。緑色の瞳が食い入るようにこちらを見る。
つぎのターゲットはきみだ、大胆なことをやらされるのはきみのほうだと言わんばか
りの激しい視線。
わたしは口ごもった。こんな反応を示されるとは思ってもみなかったし、ちゃんと考えていなかったからだ。どうしよう、何を挑戦させればいい? ハーディンはなんだってするはずだ。わたしに負けを認めるようなことは絶対にいやなはずだから。
「えっと……そうね。じゃあ、やれるものなら……」
「なんだよ?」ハーディンはいらいらと声をあげた。ここにいる全員をほめてちょうだいと言いそうになったけど、やめた。
「シャツを脱いで、ゲームが終わるまでずっとそのままでいて!」とモリーが大声をあげたので、ほっとした。もちろん、ハーディンがシャツを脱ぐからではない。自分では何も思いつかなくて、彼女が代わりに指示を与えてくれたからだ。
「お子さま向けの挑戦だな」ハーディンは文句を言いつつ、シャツを背中から引っぱりあげて脱いだ。そんなつもりはなかったのに、しなやかな上半身に目が吸い寄せられる。意外にも日焼けした肌一面に、黒っぽいタトゥーが入っていた。
胸には鳥が飛び、腹部には大きな樹が描かれている。枝に葉はなく、どこか不気味だ。上腕部には、思っていたよりずっとたくさんの絵柄が彫られていた。肩や腰のあたりは、無作為にいろいろなイメージや像が散っている。ステフに小突かれてやっと、わたしは目をそらした。じろじろ見ていたのが気づかれていないよう、祈るしかなかった。
ゲームはまだまだ続いた。モリーはトリスタンとゼッドの両方にキスをし、ステフは自分の初体験を告白した。ネイトもパンク女子にキスをした。
わたしはなぜ、セックスのことしか頭にない不良に混じって、こんなところにいるのだろう?
「テッサ、真実か挑戦か?」トリスタンがこっちを向いた。
「質問する必要があるか? 彼女は、真実しか—」ハーディンが言いかける。
「挑戦する」ここにいるみんなはもちろん、自分をも驚かせるようなことを言ってしまった。
次回、ゲームはさらにエスカレート! 悪ノリしたモリーがハーディンに「テッサにキスして」と命令します。逃げるテッサの運命は……!?
【参考】
※ アナ・トッド(2015)『AFTER 1』(小学館文庫)
【関連記事】
※ ヤダ…大興奮?「愛する彼氏がいても」恋に堕ちちゃう危険なキス
※ 【連載1:AFTER】すべて計画通り!「人生でもっとも大切な日」にオールAの彼氏
※ 【連載2:AFTER】え…なんで男子生徒が!? 「信じられないルームメイト」に大混乱
※ 【連載3:AFTER】うそ…もしかして!? 悲劇「男女共同シャワー」で濡れちゃった
【姉妹サイト】
※ 休み明けのダラダラ脳に!「ヤル気スイッチ」を一瞬で押す魔法テク3つ
※ 2位紗栄子よりムカつく!最新版「イラッとするママタレ」1位は
AFTER(1) [ アナ・トッド ] |