BPO委員長、「政府の放送法解釈は間違いだ」
NHK「クロ現」過剰演出への政府対応に物申す
――BPOの委員長はこれまで表に出なかったが、今回は新聞各社の単独取材にも積極的に応じ、並々ならぬ「覚悟」を示す。そのわけは?
総務省による行政指導は、放送法の正統的な解釈から言っておかしい。しかも行政指導は委員会が発足した2007年から総務大臣はしてないし、局長クラスも2009年からしていない。それが急に復活した。
放送について許認可権限のある官庁の行政指導は放送現場を萎縮させる効果があまりに強いので、BPOが放送倫理の水準を守るのを見守るべきだと意見書で言った。放送法の解釈をあれだけ書いたのは初めてだが、総務省の解釈と違って、放送局が自主的・自律的に是正することこそが求められており、その手段としてBPOが作られたので、それが放送法の趣旨にかなっていることを説明したいと思った。
BPOは純然たる任意団体
NHKが調査報告書を発表した即日、総務大臣名で行政指導した。これはやり方自体が違う。調査報告書が出たその日すぐというのはこれまでない。BPOの意見は、総務省の行政指導とは立場が違うし、効果も違う。向こうは放送法、電波法の権限を背景にし、こちらはそんなものは何もない。ただ放送倫理の自主的・自律的な向上を目指して作った純然たる任意団体だ。
とかくBPOの放送倫理検証委員会が、放送倫理をうるさく言うことで現場を萎縮させて表現の自由を狭めていてケシカランと言われるが、それは間違いで誤解だ。我々はむしろ表現の自由を守る立場からいろいろ助言し、改善のための意見を述べている。その意見の内容が、制作現場の人々にも、なるほどもっともだと受け止めてもらえることで、はじめて意味がある組織なのだ。