「カイジ『命より重い!』お金の話」から学ぶ、あなたが無駄遣いを止められない5つの理由

    

誰も教えてくれない、自分のお金についての話をしよう。

義務教育で読み書きは習うけど、自分のお金のことについては習わない。せいぜい”お金は大事だよ”と教わるくらいだ。

読み書きと同じくらい、自分のお金に対する知識は大事だと思うのだけど、実際はどうだろうか。無知はすぐさま自分に返ってくる。それも不利益として。いまの世の中、無知でいてはいけないのだ。

マネーリテラシーを身に付けよう

「カイジ『命より重い』お金の話」(木暮太一/著)

リテラシーとは、もともと文字を扱う能力を指す。マネーリテラシーとは文字通り、お金を扱う能力だ。これには4つの能力があるという。

  • 稼ぐこと
  • 貯めること
  • 使うこと
  • 守ること

このうちどれが欠けても良くない。バランスよく、すべての能力が揃っていることが大事なのだ。お金を稼ぐことや貯めることには興味があるけど、残りの使うこと、守ることに注意を払っていないひとは案外多いのではないか。

たしかに時代の寵児ともてはやされて、大金を掴むひとはいる。そんなひとの中にはマネーリテラシーがないために不幸になってしまう人が少なからずいるものだ。

プロダクトローンチという手法で、信者からお金を集めていた与沢翼氏が億の金を秒速で稼いだと豪語していたのは記憶に新しい。・・・が、結局事業は破綻した。足りなかったのはいろいろあるだろうけど、原因のひとつはマネーリテラシーの欠如だろうと思う。

秒速で破綻!ネクタイがすべての日本では与沢翼もやっぱりネクタイを締めるべきだった!?

そうそう、たしかに。でもどうやったら良いかわからない。そういう人はぜひ「カイジ『命より重い』お金の話」(木暮太一/著、サンマーク出版/刊)を読んでみるといい。わかりやすく丁寧で、初めてお金について学ぼうとする人へわかりやすく経済学の観点から、誰も教えてくれない自分のお金について説明してくれる本だ。

無駄遣いを止められない5つの理由

無駄遣いを止められない人は借金体質の人だと思う。と、上から目線で言うぼくも例外ではない。収入の範囲内で生活しようと心がけてはいるけど、貯金なんてまったくできていない。未来への、自分への投資と言う美しい言い訳で毎月の書籍購入費は確実に生活費を圧迫しているからだ。

人はなぜ無駄遣いを止められないのだろう?大きく分けると以下の5つ。

  • あなたのなかの、小さな”顕示欲”
  • 頑張った自分への、ご褒美思考
  • 不確実な未来への見通しの甘さ
  • 満足はだんだんと減っていく
  • お金の重みは使う金額によって変わる

順に見ていこう。

あなたのなかの、小さな”顕示欲”

「カイジ『命より重い』お金の話」(木暮太一/著)

収入以上にお金を使ってしまう理由をひと言でいうと、それは”顕示欲”があるからです。アメリカの経済学者ソースティン・ヴェブレン(Thorstein Veblen)は、”顕示欲求を満たすためのみせびらかしの消費”について語っています。

つまり、人がモノを買う理由として、「他人にみせびらかしたい」「他人からよく思われたい」という欲求があるということです。

具体的には、明日着ていく服がない!と他人の目を気にしたり、バラ売りの商品をケチくさいと思われるのが嫌で無駄に多く買ってみたり、ガラケー(ガラパゴス携帯)を人前で確認することに躊躇したり・・・はい、これ全部ぼくです。ははは。

顕示欲による消費は、本当に欲しいから買っているわけではありません。ましてや必要に迫られて買っているわけでもありません。ここで顕示欲を存分に発揮してしまえば、いくらお金があっても足りなくなることは目に見えているでしょう。

見た目が9割は言い過ぎとして、見た目って第一印象に関わる。どう思われたいか、という現れでもあるのでビジネスであれば最低限の身だしなみは必要だと思う。でも、私生活で、あのひとかっこいい、お洒落。そんな評価を求めるために使うお金は見せびらかしのための消費と言えるでしょう?

清潔感があって、TPOに合わせた服装を心がけるだけで良いはずだ。

電車の車内で誰もがスマホを見ていたとき、ガラケーのぼくは言いようもない恥ずかしさを感じていたものだ。

いまはスマホになったけど、同じようなシチュエーションでガラケーを使っている人を見てもなにも感じない。他人なんて、自分のことをそんなに意識していないものなのだ。今となってわかることだけど。

頑張った自分への、ご褒美思考

「カイジ『命より重い』お金の話」(木暮太一/著)

ボーナスの時期になると「何を買おうかな」と考え始める人がいます。こういう人の口癖で多いのは、「がんばった自分へのご褒美!」です。それまで一生懸命仕事をしてきたのでしょう。お金を手にすると「待ってました!」と言わんばかりに、自分をねぎらい始めるのです。

感情としては理解できます。しかし、その”ご褒美思考”があなたの貯金を減らし、やがては身を滅ぼしかねないことを理解すべきです。

本当に欲しいモノ、必要なモノを買う分には問題はないけれど、何かを買うということが目的になってしまっていないか、振り返ることが大事だ。何を買おうかなと考え、雑誌やウェブで情報収集をしているときがたしかにいちばん楽しい時間なのだけど、その先にあるのはお金の浪費だということを理解しなくてはいけない。

働いて頑張ったからストレスが溜まる。その発散のために浪費するというのはなんだか変じゃない?何のために働いているのか?ということを考えると、何かを消費するために働いているのではないはずだ。働きたくないという人は多いけど、消費はしょうがない。そういう矛盾した考えでは、経済的に豊かな人生を送れるはずもない。

不確実な未来への見通しの甘さ

「カイジ『命より重い』お金の話」(木暮太一/著)

「来年はまた給料があがるから、大丈夫だ」

「あと2,3年すれば、オレも確実に課長に昇進するから、これくらいの出費は問題ない」

「冬のボーナスで一括払いしよう」

私たちはついこのように考えがちです。想定通りの収入になれば問題ないでしょう。しかし将来のことはわかりません。このような想定は単なる”皮算用”です。「今まではそうだった」とか「毎年このくらいボーナスがでているから」といって、それをあてにするのは、「前回宝くじが当たったから、今回も当たると思ってた」と言うのと基本的には同じです。”見通し”が甘すぎるのです。

しかし、そうであれば、そのまま「自分はよくわからない」としておくべきです。そして、その先の判断もするべきではありません。(中略)「あの人がこう言っているから」ではなく、「白とも黒とも判断をしない」という判断こそが、最もかしこい判断なのです。

これは刺さりますね。結局、ボーナスの皮算用も、年功序列の昇進にしても、一般には”よくわからない”というのが真実。「よくわからないけど、まわりがそう言っているから、そうなるんでしょ?」ということなのではないですかね。

株が好きでいまでもやっているぼくが言えるのは、未来は誰にもわからないということ。多くのトレード本、心理面の本などを読み漁って共通して書かれているのは”未来を判断するな”ということだ。

本題から少し逸れてしまうかもしれないけど、もうひとつ言えるアドバイスは確率でものごとを考えるということ。仮に外れたとしても致命的なダメージを受けない範囲で、経済学的に正しい行動を繰り返すこと。そうすることで長期的には大数の法則に従って報われる可能性が高い。

「大数の法則」は、コイン投げを例にするとわかりやすい。コインの裏表が出る確率はどちらも50%なはずだけど、2~3回コインを投げる程度であれば、連続で表がでることも珍しくない。この場合、表が出る確率は100%ですね。

じゃあ10回投げたらどうだろう。10連続というのは極めて難しいと思う。100回投げたら?1,000回?回数を増やせば増やすほど、表と裏それぞれの確率は限りなく50%に集束していくはずだ。

ここで大事なのは、一度ですべてを失ってしまうような無謀な賭けはしないという考えだ。

皮算用はせず、実際にボーナスがでてから、昇進して給料が上がってから、それでも未来はわからないというスタンスで生活することが大事なのだと教えてくれる。

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満足感はだんだんと減っていく

「カイジ『命より重い』お金の話」(木暮太一/著)

経済学の基礎理論に”限界効用逓減の法則”がある。なんだか難しい用語だけど、意味は単純だ。それは、”満足感はだんだんと減っていく”ということ。

カイジの例ではビールがあげられている。

カイジが地下の強制労働施設でビールを1本もらいました。過酷な労働を終えて1ヶ月ぶりに飲んだビールは”悪魔的”にウマかった。この悪魔的なウマさに負けて、2本目、3本目に手を出し、結局このとき、カイジはビールを4本も買ってしまいます。

ここで考えていただきたいのは、最後に飲んだ4本目のビールも悪魔的にウマかったか?ということです。おそらくそうではありません。ウマいことはウマいでしょうが、せいぜい、「まぁ、うまいね」くらいです。

これは説明いらないほど、誰もが経験していることだとではないか。そう考えると、宝くじを当てた人がなぜか、浪費に走り、無一文になってしまうことへの説明がつく。欲望に際限はないのだ。自分の欲望をどこかで止めなければいけないね、という教訓。

お金の重みは使う金額によって変わる

「カイジ『命より重い』お金の話」(木暮太一/著)

お金が大事なことがわかった。もういいよ。そんなあなたへ、次の2つの問いに答えてみてほしい。

問1、あなたは以前から欲しかった10万円のコートを買いにきました。売り場で買おうとしたまさにその瞬間、隣町で9万7千円で売られていることを知りました。さて、隣町まで買いにいきますか?

問2、3,500円の雑貨を買いに店まできました。商品を持ってレジに並んでいるとき、隣町でセールをやっていることを知りました。なんと500円の大特価!です。さて、隣町まで買いにいきますか?

普段飲んでいる缶ジュースが値上がりするだけで、高くなったと買うのを躊躇する。ガソリンが2~3円安いだけで、ぶつぶつ文句を言いながらも、遠くのガソリンスタンドまで給油に行く。まとめてン万円単位で本を買うこともあるのだけど、一冊だいたい1,500円程度。高いものだと3,000円超える。そんなときに文庫本で600円とかはとっても安く感じるから、あまり興味がなくとも、つい買ってしまう・・。はい、全部ぼくです。

人は使うお金の金額が多くなればなるほど、1円の価値を軽んじる傾向にあるのだそうだ。

この感覚に身を任せていると、お金を使うたびに、”もっと使うこと”が簡単になり、浪費癖が加速していく

あぁなるほどね。これ真実。ぐぅの音も出ないとはこのことか。

先ほどの質問に戻ると、

  • 問1、隣町まで買いにいかない。
  • 問2、隣町まで行く。

になったのではないですか?

節約できるお金はどちらも、3,000円なのにこの違いはなんなのだろう。自分のお金に対するクセを知っておくことがいかに重要か、がわかる例ではないだろうか。

まとめ

「カイジ『命より重い』お金の話」(木暮太一/著)

あなたが無駄遣いを止められない理由は大きく5つに分けられる。じゃあ、無駄じゃないお金の遣い方ってなんだろう。

良い遣い方として、まことしやかに言われているのが”自分への投資”だけど、これだってよく考えないとただの自己満足の消費になる。

エステで自己投資、セミナー通い、英会話に、資格スクールと枚挙にいとまがない。でも、よく考えてみてほしい。それって将来返ってくるの?経済的メリットはどれくらい?

将来のリターンが見込めないものは”投資”じゃなくて”消費です。高級フレンチを食べて幸せな気分になったり、海外旅行に行って満足するのと何ら変わらない、”消費”なのです。

”消費”が悪いと言いたいのではありません。”投資”という言葉を使うことで自分をごまかし、収入以上に消費することで、日々の生活が”借金ベース”になってしまう人が多いのです。

この本をきっかけに、自分のお金の遣い方を振り返ってみると、いろいろな無駄が見えてくるかもしれないですよということで、まとめは終わり。



あとがき

福本 伸行(ふくもと のぶゆき)原作の「賭博黙示録カイジ」という漫画が好きで読んでいた。そのつながりで「銀と金」も読んでいた。どちらもお金にまつわる人間ドラマを描写した傑作漫画だ。

ぼくの場合、本を買うときは、その時々の興味関心にあう本を選んでいる。具体的にはタイトルと口こみ。あと書評を参考にしてからジャケ買い。当たりもあるし、もちろんハズレもある。

最初目にしたとき、内容薄そう・・という印象。大好きな漫画だったカイジがイラストに使われていたこともあって購入。思ったよりまじめな内容で、良い意味で裏切られた。

この本では、マネーリテラシーを身につけることの重要性を一貫して説いている。稼ぐことも貯蓄することも、お金を守ることも、使うことだって同じくらい大事。そのバランス感覚ってなかなか身につくものじゃないけど、ヒントにはなった。たとえば、貯蓄だけすれば経済的な悩みが消えるかというと著者ははっきり”NO”と言っている。

じゃあどうするか。それは、”一生働いていけるという自信を持つこと”と、自分の欲を制すこと。つまり心をスリムにするしかないということだった。”足るを知る者は富む(たるをしるものはとむ)”と言う句があるけど、後者は、その考えに通ずるものがありますね。

でもちょっと待って、たしかに”足ることを知る”は美しい論理で疑いようはない。でもこれって、ぼくのような底辺に対して言われたら、まったくおもしろくないんですよ。だって、こういう意味でしょ?つまり、”おまえは身の程わきまえて一生そのままで居ろ”と。頑張るなと言われているのに等しいんですよ。世の中、”持てる者”と”持たざる者”に分けるとしたら持てる者にとって、都合の良い論理だなぁと。

欲があるから、いまも世界のどこかで経済成長を続けられる。だから、一概に悪いとも言えないというのがぼくの考え。程度の問題かと思うんですよ。適度な欲って意欲に繋がるからね。そうでしょ?欲のない人間というものに今まで会ったことがないからいまいちピンとこないぼくは、そう考えるのです。


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