政党交付金の扱いをめぐって、維新の党分裂後に設立された新党「おおさか維新の会」(代表:松井一郎大阪府知事)による、“ロンダリング”の実態が明らかとなった。
HUNTERの取材によれば、昨年12月に維新の党所属議員の政党支部に交付された政党助成金のうち、おおさか維新に参加した議員らの支部が受け取った交付金の残額が、国に返納されることなく議員側に還流していた。事実関係について、複数のおおさか維新関係者が認めている。
「解党して政党交付金を国に返す」としていた橋下徹前大阪市長の主張が、事実上反故にされた形。その上、使途に縛りがある交付金が自由に使えるカネに化けていたことも判明。“交付金ロンダリング”に国民の批判が集まりそうだ。
交付金の返納―反故にした「おおさか維新」
政党交付金を所管する総務省によれば、昨年、維新の党に支給された政党交付金は26億6,000万円。4月、7月、10月、12月の4回に分けて、同党の口座に振り込まれたが、分裂騒ぎの影響で銀行側が維新の党の銀行口座を凍結。カネの出し入れが不可能となり、所属議員の政党支部に交付金の振り込みが行われない事態となっていた。
12月8日、「維新の党の将来的な解党」「人件費など党運営に必要な経費を除いた政党交付金の国庫返納」などで東西が合意。これを受けて同月18日、維新の党の各議院の支部口座に、政党交付金500万円が振り込まれたという。
維新の党の残留組は、使い切れなかったカネを年末までに政党支部の基金口座に移動することで翌年の活動費に回したが、おおさか維新組は、残ったカネを基金口座に移動させることが出来ない。党を離れる以上、維新の党の支部を解散する必要があり、年内に清算する必要があったからだ。当然、使い切れずに残ったカネは国庫に返納されるはずだった。「解党して残った交付金を国に返納」――これが、橋下徹氏をはじめとする大阪組の主張だったからだ。
しかし、大阪組にわたった交付金の残りが、国庫に返納されることはなかった。師走の18日に振り込まれたカネを、年末までに使い切るのはさすがに困難。余剰金が出たのは言うまでもない。これを、そのまま国庫に返納したかというと、さにあらず。いったん別の財布に移して、再び各議員の財布に戻していたのである。
背信行為の手口 ― 未公表の政治団体「なんば維新」を利用
手口はこうだ。まず、「なんば維新」(所在地は「おおさか維新の会」本部と同じ)という政治団体を新たに作り、その団体に各議員の支部で使い切れなかった交付金を寄付させる。次に、維新の党を離れ「おおさか維新の会」に参加した各議員の新設支部に、年を超えてから寄付の形で返すというもの。苦肉の策ということだろうが、あさましいと言わざるを得ない。「なんば維新」の存在について、おおさか維新の会は一切公表していない。確認したところ、「なんば維新」の設立は昨年12月。全国団体として総務省に設立届を出しており、代表者は松井一郎大阪府知事の元秘書で、現在おおさか維新の会の事務局長を務めている人物だった。
法律的には問題ないが、本来、政党基金口座に入ったカネは税金支出に見合う政党活動のための経費に使うべきもの。しかし、なんば維新から寄付されたカネは政党支部の一般口座に振り込まれおり、しばりがない「何にでも使える金」に化けてしまっている。国民の知らないところで、“交付金ロンダリング”を行った格好だ。
先月30日、「おおさか維新の会」が、募集に応じた塾生176人を対象に「維新政治塾」を開講した。基調講演を行ったのは、同党の法律政策顧問に就任した橋下徹前大阪市長。政治家引退後も維新の顔であることは間違いないが、同氏も含めて、大阪維新の流れをくむ政治家たちを信用することはできない。分裂騒ぎの折、橋下氏は、こう述べていたのだ(以下、橋下氏のTwitterより。赤いアンダーラインはHUNTER編集部)
大阪組と東京組の分裂が決定的となって以降、橋下氏は度々「解党」と「交付金返納」をセットで主張した。大阪組が当初、東京組に対し分党の要求をしたことで、“交付金目当て”とみられたことに危機感を持ったからだろう。ウケを狙って格好をつけたが、解党決定直後のつぶやきでは、もう逃げ道を作っている。
わずか数時間で、返納する交付金は「できる限り」に――。強弁政治家の面目躍如といったところだったが、結局、大阪組は返納どころか丸々もらってロンダリングまでやる始末。国民に対する、組織的な背信行為と言っても過言ではあるまい。
主張を変える度に屁理屈をこねるのが橋下流。今度はどのような言い訳をするのか……。