はじめに
どうもみなさんこんにちはー
近頃はアニメの背景美術がマイブームなひそかです。そのキッカケを作ったといえるのが「血界戦線」というアニメ。
この記事では「血界戦線」の美術監督・木村真二さんのインタビューを引用しつつ、そもそもアニメにおける背景とか美術って何? どう違うの? みたいな事を勉強しつつ書いていきたいと思います。
「血界戦線」を見ながら思った事や勉強になったことを取り上げ始めるとキリがないのですが、今回は背景美術に話を絞って進めていきます。
美術監督・木村真二さんのインタビューから2点ほど
雑誌「オトナANIMEDIA HYPER!」vol.4から、「血界戦線」の美術監督・木村真二さんのインタビューで印象的だった部分をふたつ、要約しながらあげてみます。
木村真二(きむらしんじ)
アニメ監督・美術監督。
参加した主な作品は「スチームボーイ」「鉄コン筋クリート」「ジーニアス・パーティ」「デスティック・フォー」「青の祓魔師 ―劇場版―」など。
1. お金かかりますよ?
木村さんは血界戦線の美術監督を一度断ったらしいです。
話をもらって原作を読み、血界戦線は遊びがあって自由度が高いけど、こだわりだしたらキリがなく、TVシリーズでは無理だと。
しかし作品の独特な雰囲気を出すうえで美術が重要な要素であることに面白味を感じ、スケジュール的にも余裕があって美術に関しても真面目にやる、という方向に話が進んだことから最終的に仕事を引き受けたようです。仕事を始めるにあたり、木村さんは大薮プロデューサーに、
「お金はかかりますよ?」
と何度も何度も念を押したんだとか(笑)
「血界戦線」の雰囲気をアニメに落とし込もうとすると、どうしても予算がかかってしまうのは仕方がないし、誰がやってもそれは同じだろうとのことです。
やっぱ安価じゃ作れないのか……
たしかにこのアニメお金かけてそうだってのはうすうす感じたです。
2. 松本理恵監督の引きの画
木村さんが語った「血界戦線」の監督・松本理恵さんの演出に関する印象です。印象深いのは、
“ 引きの画をよく使う ”
とのこと。
たとえば部屋の中を描くにしても、天井をぶち抜いてさらにその上から撮っているくらい引きの画があり、実写の映画セットを作って撮影しているような構図がすごく多いと感じたそうです。
↓これとかそうかな?
通常引きの画は、表情や口パクを見せずに秒数稼ぎのような使い方をすることが多いのに、松本監督の場合は秒数稼ぎのためではなく、そのシーンを印象的に見せるための手法として引きの画を多用すると感じた、とのことです。引きの画は広いスペースが映り込むので、背景・美術は作り込むのが大変らしいですけどね。
私が印象的だった引きの画を ↓
第5話でアリギュラが飛んでいくシーンです。
アリギュラのトラックを思い切り引いた画で描いたがゆえに、印象に残るシーンになりました。
「オトナ ANIMEDIA」から、「血界戦線」美術設定&美術ボードの画像です ↓
アニメ「血界戦線」が始まる前のこと。
PVに惹かれました。
その理由はニューヨークらしき街並みに惹かれたからじゃ?と思ったのですが、いま考えてみるとアニメで描かれたHL(ヘルサレムズロット)の背景美術に惹かれたってことのようですね。
お金をかけて背景美術に凝り、引きの画を多用する監督のもとでそれが生きる。
もちろんそれがすべてではありませんが、血界戦線に惹き込まれた理由のひとつに背景美術の魅力が存在したのは確かだと思います。
アニメにおける背景や美術って何?
ここまで「背景美術」とひとくくりに書いてきましたけど、そもそもアニメにおける背景とか美術って何なんでしょう。アニメSHIROBAKOにおいて初めて背景(美術ボード)専門スタッフがいることを知り、つい最近まで背景と美術ってどう違うの? 同じようなものじゃないの? と思っておりました。
ということで、最近の私の参考書になっている「アニメーションの基礎知識大百科」(著:神村幸子)から、背景と美術に関する説明をいくつか引用してみます。
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先に美術関係から。
「美術設定」
作品の舞台となる風景、建物などの設定画のこと。作品の世界観はここで作られ、美術監督が描く。
「美術ボード」
美術監督がシーンごとに描く背景画見本のこと。背景部門ではこの美術ボードに合わせて背景画を描く。《ボード》と略すこともある。
「美術打ち」(びじゅつうち)
背景美術についての打ち合わせ。監督、演出、美術監督、背景、担当制作が出席。
てことはSHIROBAKOの制作進行・宮森あおいも、担当話においてこの美術打ちには参加してるって事かな? 詳しく覚えてないですけど。
↓ SHIROBAKOの宮森です。
「総集編はもういやだ」www
あ、そういや血界戦線にもSHIROBAKOの水島努監督によるガールズ&パンツァーにも総集編があったな…… 自虐ネタ?
閑話休題。
続いて背景について。
「背景」
1) 背景画のこと。
キャラクターの奥に見える風景や室内などの絵を背景画という。
2) 背景画を描く部署、またはその職種。
他職種では背景さんを「美術の人」と呼ぶこともあるが、背景部門では背景と美術を明確に区別しており、ボードや美術設定を描く力のある美術監督のことだけを美術といっている。
「背景原図」(はいけいげんず)
BG原図とも。
背景画を描くためのもとになる図面。
原画が描いたレイアウトをそのまま使うこともあれば、レイアウトから美術監督が新たに描き起こすこともある。
大雑把にまとめると、
- 美術は力のある人で、上に貼った美術設定やボードを描き作品の世界観をつくるような仕事
- 背景はそれを元に、風景や室内の背景をよりたくさん描いてゆく仕事
そんな感じになるのでしょうか。
立場的には美術の方が上っぽいですね。というか美術という部門は、基本的に美術監督ひとりだけなのかもしれない。
ヒグチさん(@yokoline)という方が、記事の中で血界戦線の5話を取り上げていました ↓
血界戦線だけでなく、取り上げた10話すべてに力の入ったとてもいい記事ですので、良かったらご覧になってみて下さい。感動しました。
背景美術に関心をもたらした「血界戦線」
木村真二美術監督は、あまり個性の強い独特な絵にし過ぎると、他のスタッフが参加しづらかったり折角のカッコいいキャラクターが浮いたりするので、出来るだけ普通の背景を意識されたそうです。
バランスを大事にしたって事かな。
たしかに背景に目が行き過ぎると、セリフやストーリーはあまり頭に入らなくなりますね。
ただ最近私は、アニメにおける背景美術の重要性を感じるようになってきました。
背景が淋しいと何となく萎えてくるし、逆に背景が良ければ作品世界により没入出来るようになる気がします。これまでほとんど意識せずにいましたが、背景の魅力で物語世界へと没入出来た作品は意外に数多く見てきた気がします。おそらくみなさんにとっても、パッと頭に思い浮かぶそんな作品があるのではないでしょうか。
「血界戦線」という作品は、これまで無意識だった私の意識を背景美術へと向けるキッカケになりました。そういう意味で、自分にとって大きな意義のある作品になったと感じています。
最後に
気づけば深夜アニメを見るようになって7年目になりました。
しかし私はアニメに関してまだまだ知らないことだらけ。知ってる事がごく一部しかないという方が正しい。未視聴の名作も大量にありますし、気持ち的にはアニメ初心者の気分のままであまり変化しておりません。
そんな自分でも近頃はアニメに関する本を読んだりするのが楽しいです。
↓ この記事もそんなひとつ。アニメの歴史やビジネスの話です。
今後もちょっとずつでいいから勉強していきたいですね。
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