クローズアップ現代「介護の中身をオープンに〜ハイテク・理論が現場を変える〜」 2016.02.03


自分や家族がお世話になるかもしれない高齢者施設。
あなたならどんな介護を望みますか。
介護の技能を見極める最新の映像分析システム。
介護スタッフの視線を可視化できるセンサー付き眼鏡。
今後、質の高い介護サービスに対するニーズが高まる中最新技術を取り入れる試みが始まっています。
きょうはうれしいね。
一方、閉ざされがちな介護施設を評価機関が第三者の目でチェックしてリスクを摘み取る動きも広がろうとしています。
介護の現場に光を当てる新たな取り組み。
その最前線からの報告です。
こんばんは。
「クローズアップ現代」です。
いざ自分のためあるいは家族のために介護施設を選ばなくてはならなくなったらどのような質の介護が提供されるのかとても気になるところです。
ところが確認しようにも何をどう確認すればいいのかなかなか外からは分かりません。
閉ざされがちな施設でどんなサービスがどんなレベルのスタッフによって行われているのか。
去年、川崎市の老人ホームで高齢者の相次ぐ転落死や虐待が明るみになりました。
虐待は1か所にとどまらず大手介護事業者が経営しているグループ施設全体に広がっていたことも分かり介護の質を家族が知ることがいかに難しいのかその現実が浮かび上がったのです。
厚生労働省の調査によりますと介護スタッフによる虐待件数は5年間でおよそ3倍に増加。
そして教育・知識・介護技術の問題が虐待が起きる最も大きな要因でした。
介護の質は介護スタッフの技術と切り離すことができないのです。
しかし施設利用者の数が増え介護度も重くなる中介護する側のマンパワーや技量が利用者の実態に追いついていかずそのことが介護の質の低下をもたらし虐待や事故を引き起こすリスクを高めています。
介護に携わる一人一人の技術レベルをどうすれば的確に向上させられるのか。
また外から見えるように施設の介護の質の可視化・見える化はできるのか。
そして介護の質の向上によってどんな変化が利用者に起きるのか。
初めに、東京都を中心に始まった介護を第三者の目で評価する取り組みからご覧ください。
老人ホームに入所する高齢者を職員が虐待する様子を映した映像です。
去年、全国300か所以上で老人ホームなどを運営する会社で転落死や虐待が明らかになりました。
事態を受け、社外の弁護士たちが実態を調査した報告書です。
新たに発覚した虐待はグループで81件に上ることが分かりました。
介護度の重い高齢者が増える中施設の数が増加。
一方、それを支える介護人材を会社として整えられなかったことが原因の一つにあるとしています。
都内のNPOが行った全国調査でも、虐待があったと答えた高齢者施設は1500か所以上に達していることが分かりました。
介護現場が過酷さを増す中おろそかにされがちな高齢者を守るために、第三者の目を入れリスクを摘み取る仕組みが広がっています。
おはようございます。
失礼します。
この日、都内の特別養護老人ホームを訪ねたのは介護施設を評価する組織の調査員たちです。
皆、現場経験豊富なケアマネージャーなど介護や福祉のプロです。
業界が定めた130の調査項目をもとに客観的に評価していきます。
介護スタッフは十分に配置されているか入所者に適切なケアを行っているか。
虐待や事故を防ぐと同時に入所者の自立を促す質の高いサービスを目指します。
この日、改善点として指摘したのは食事のときの姿勢です。
体を起こしたほうが食欲を高め誤えんを防ぐことにもつながるからです。
この仕組みは、国が導入した福祉サービス第三者評価です。
都道府県ごとにNPOなどの評価機関が特別養護老人ホームに対し中立的な立場でサービス実態を調査。
結果は行政にも報告します。
東京都では、調査にかかる費用60万円を補助。
都内の施設の9割以上がこの調査を受け入れています。
調査結果は、ウエブ上でも公開。
課題や改善点を明らかにし入所者やその家族に施設を選ぶ際の判断材料を提供しています。
失礼します。
よろしいですか?
調査では入所者に聞き取りも行い生活の不満や虐待の兆しがないか確認します。
第三者評価に入所者の目線を入れることで、施設側はサービスの徹底を迫られます。
以前、感染症対策の不備を指摘されたこの施設では対処法の周知を職員全員に行いました。
今夜は、ゲストお2人をお迎えしております。
ジャズシンガーとして活動しながら、認知症のお母さんを10年以上、介護してらっしゃいます綾戸智恵さん。
そして、患者の拘束の廃止などに取り組まれ、現在は高齢者住宅の施設長をされています、田中とも江さんです。
田中さん、不適切なケアが常態化しているような施設が、一体どれだけあるんだろうかと、心配になるようなケースも起きてるんですけれども、そういったことが起こりやすい施設というのは、やはり過重労働、人手不足というのが最大の原因なんですか?
否定はしませんけれども、そういう状態にしてしまう施設の運営そのものが、私は問題があると思っています。
もう一つに、誰でもできるといわれてる、実際にこれはどなたもおっしゃってますよね。
介護が?専門性が、家族は専門性がなくても、親をしっかりと見ることができる。
だけど施設は、専門性の集まりなんですね、その職が結局、自分たちの利用者さんを見るのではなくて、職を集めることによって、利用者さんに対して、きちんと目を届けないことに、私はトラブルの原因があって、そこに利用者さんが置いていかれるという現状があると思います。
そうすると、あれですか、優しい心を持って、よくしたいと思って入られる方々が多いわけですよね。
そうです。
それがどうして変わっていくんですか?
それはですね、やっぱりきちんとした教育が、介護の世界に少ないということです。
今一番いわれてるのは、人手が少ないというのは、どこでも人手は少ないわけです。
子どもがいないわけですから、外国から人が入ってきてるわけですから。
そういう中で、やはり教育というのは、介護の質を上げるということよりも、も含めて、利用者さんの人生を担う、自分たちがトップランナーでなければならない。
そのことが途中で消えていってしまう、それを誰が消すかっていうと、先輩であり、それから上司であり、そしてやはり、社会の問題でも、そこにあると思いますけれどもね。
第三者の目で評価をする仕組みが、東京都中心に始まってますけれども、お母様が施設を利用されることもおありですよね。
ありますね。
そういったその見える化というのは、どう評価されてますか?
親は子がずっと長いこと、私の年まで一緒におるわけですよね。
ですから、母の癖まで分かりますよね。
だから、1人のケアはできますが、おばあちゃん全部、おじいちゃん、頼むわ言われたら、私はできませんですね。
それぞれの人生がありますから。
その中で、先生も言いはった、教育というのは、なんかこう、最低とは言いませんけど、これは絶対やらなあかんよという教育があって、ここまではできる。
そうしたら、今度は家族が、その先祖代々からのにおいは私がやりますと、分担作業、家族と公共の分担作業や、思うんです。
だから、教育の向上はええことやと思います。
家族にとっても。
そしてそれが、施設でどこまでできているのかということを、第三者が評価してくれる。
ええことです。
これがあると、少し安心じゃありませんか?
安心というよりも、やっぱり一つは、一方だけが頑張ったらあかんという意味で、もとがこんだけ上がってくれると、底を上げてくれると、こっちは今度、もっと家族が言いやすい。
これも頼むわみたいな、アンコールみたいな、それももう一つおまけに頼むわみたいに、言いやすくなるじゃないですか。
なのに、まずごはんを食べさせるときに、よう食べささんという方がいてたら、ちょっと頼むわ、私なんかすぐできるやんって言うてしまうけど、ここに教育があれば、ごはんは食べさせる、でも、なんたらさんに食べさせるというところは、この家族が、うちのおばあちゃんね、魚の骨弱いんですわとか、しょうもない話やけど、それを個人的にやって、実らせていく。
そういう意味では、そういう地盤作り、公共がそういうレベル、第三者を入れるのは、ええことやと思います。
第三者評価は今、十分、施設の弱い部分とか、洗い出せてると思いますか?何がいい施設、何が悪い施設って、なかなか私たちには分からないんですけど。
130項目ある中で、トップのことから、それからご家族、ご利用者、それからスタッフの意見、それで調査されるんですけれども、それと教育がどうなっているかとか、ちゃんとお休みは取れてるかとか、すべてですね。
それを受けて、そしてお返しします、フィードバックします、施設に。
そのときに施設がそうやねと、ここが足りなかったね、教育のお金も大してつけていなかったねとか、そういうことを考えてくれて、そこに話を持ってってくれればいいんですが、評価が悪いと、そんなことに金払ってられないわというようなこともないわけじゃないです。
一番の大事なことは、第三者の方がこれから成長していき、さらに底上げをし、もっと現場が見えるような仕組みで、全家族に伝えられる、見たい人が見るんじゃなくて、スタッフたちだけが介護問題を抱えるんじゃなくて、提案を。
家族に全部返す。
ええことやわ。
情報の開示ですよね。
それがないと、たぶん、頑張る施設があれば、頑張らない施設もあって、お金がむだになるんじゃないですかね。
なるほど。
東京都では90%、施設がそういう第三者の評価を受けてますけど、全国的にはまだ6%程度と、全く広がっていないというような状況です。
さあ、続いて、介護に当たる人々の技能、そのレベルをどうやって向上させるのか、始まった取り組みをご覧ください。
茨城県の特別養護老人ホームです。
入所者の平均年齢は87歳を超え要介護度4以上の重度の高齢者が多く暮らしています。
ケアのレベル向上には経験の積み重ねに頼らざるをえないとされてきた介護の仕事。
静岡大学の研究チームは介護職員がケアをする様子をカメラで撮影。
その映像から技術向上のためのノウハウを読み解くプロジェクトに取り組んでいます。
口、開いてください。
今回、研究対象になったのは働き始めて1年目の酒井夢果さんです。
意思疎通が難しい認知症の高齢者も多く状況を理解できずケアを拒んでしまいその対応に悩んでいます。
撮影した映像は研究室で分析します。
着目するケアは「見る」「話す」「触れる」です。
スタッフの技能に応じてお年寄りの状態に大きな影響を与えるとされるケアの要の動作だからです。
技術を身につけたベテランスタッフの場合認知症の高齢者でもケアを安心して受け入れます。
新人、酒井さんのケアの様子を分析した映像です。
例えば、「見る」動作の場合酒井さんは最初にお年寄りの顔を見たあとは口元を見続けているためアイコンタクトはできていませんでした。
「話す」動作では作業に必要な声かけはしていても関係性を深めるコミュニケーションはあまりできていません。
「触れる」動作は作業を進めるためにお年寄りの腕を押さえていました。
一方、ベテランの映像です。
正面からゆっくりと20センチ近くまで近づき瞳を捉えています。
お年寄りは気持ちが穏やかになります。
この動作は、質の高い介護としてマーキングされます。
「触れる」動作についても手のひらで重みをかけるようにゆっくり触れます。
そして「話す」。
最初からケアの話をするのではなく関係性を深めることばを優しく投げかけます。
新人、酒井さんと比べてみるとベテランは「見る」「話す」「触れる」のいずれかの動作を絶えず行っています。
これが質の高い介護に必要な条件なのです。
このプロジェクトでは京都大学と共同でケアスタッフの視線の映像化にも挑んでいます。
こんにちは。
アイコンタクトや相手との距離などの分析の精度を上げレベルアップにつなげます。
きょうは楽しいね。
みんな笑っててね。
こうした取り組みによって質の向上に成功したのが福島県郡山市の病院です。
看護師が入所者の口を掃除するケアを映像で分析しました。
以前はアイコンタクトの時間は僅か4秒余りでした。
それを3分近く行うようにしました。
「話す」動作は、77秒からおよそ5倍に。
そして以前は全くなかった「触れる」動作は8分近くまで行うようにしました。
ケア技術の向上で入所者の状態も改善しました。
認知症の人の暴力や暴言などが3か月後に改善していたという研究結果が出たのです。
スタッフのケアにかける時間は増えましたが入所者の自立につながったことで仕事の効率が上がる成果をもたらしました。
茨城の特別養護老人ホームです。
分析を終えた映像が届きスタッフで検討します。
みずからの課題を理解できた新人の酒井さん。
早速実践してみることにしました。
ナオさん、こんにちは。
こんにちは。
ナオさんに会いに来ましたよ。
ああ、そうか。
以前と違い相手の瞳を正面から捉えてアイコンタクト。
口の中、きれいにしますよ。
「触れる」動作もできています。
実践的な教育を通して、本当に仕事の効率も上がるという例が出てきたわけですけど、本当に目を合わせるという、そこの基本的なところが、すごく大事なんですか?
そうです。
特に認知症といわず、認知症でなくても、自分に関心を持ってくれる人が一番、安心なんですね。
ところが、目がきちんと脳につながってないと、目から入った、それがないと、自分がどこにいるか分からない状況があって、そこを今、…と思いますけれども、助ける成果は上がると思います。
しかし、少しその教育に対して時間がかかるので、それをいかに早く早く広めていくかということが、みんなが考えていることなので、私は大いに期待したいと思っています。
ただケアも時間かかりますよね、そんな余裕がないんじゃないかと。
それ言ってると、何もできません。
だから、ケアに時間がかかっても、結果、あとで病室での表情とか、笑顔とか、会話とか、さっきの笑い声とか、体の硬さまでが取れてきて、お互いにいい雰囲気ができてくるんですね。
そうすると、食欲増しますし、本当にね、笑い声で包まれるホームって、幸せですよ。
利用者さんの笑い声。
綾戸さんは、お母様を預けてらっしゃることもある経験から、どうなったらいいなって、思ってらっしゃいます?
やっぱり、先生、今言いはった、目見て言うの、よう分かります。
私ら、長いこと、何十年も目見合ってここまで来ましたでしょ、きょうから見ますいう人が、どうやるかというのを、やっぱり相乗効果っていったらおかしいけど、もう皆さんが、いろんな教育で、分かったところで、こちらがこうや、こうや、リクエスト出しながら、お互いにこう、楽しくなってくると言うたら、おかしいけど、あっ、感謝されてるんや、もうニーズしますわ、私、仕事行ってる間、頼みますわと言える力であること。
私の代わりではなく、仕事行ってる間、お願いね。
じゃあ、今度、私ねというふうに、若い者がこうやっていくいうことを、相乗効果、私、それが一番大事なんで、やっぱり利用者の家族と皆さん、介護者が仲よくやっていけるように、しゃべっていきたい。
もっとコミュニケーション。
でも、お母さんのことを本当に分かって接してくれてたら、家族はうれしいですよね。
はい。
100%を求めると、ひっくり返りますんで、だんだんと徐々にといきましょうか。
ちょっとずつ。
始まりましたね、先生。
ね。
ケアをしている側の方からすると、何が一番大変な仕事ですけれども、満足、喜びとなるんですか?
もともと優しい人たちの集まりなのでね、基本の教育ができてないだけで、先輩を見て、間違ったことをしてるかもしれない。
でも、利用者さんの状況からして、ありがとうという、本当の意味のありがとう、それから、状態がよくなる。
2016/02/03(水) 19:30〜19:56
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代「介護の中身をオープンに〜ハイテク・理論が現場を変える〜」[字]

介護施設で相次ぐ高齢者への虐待。スタッフの技術レベル向上のために介護技術を「見える化」するプロジェクトが始まった。人手不足のなかで質の向上に何が必要かを考える。

詳細情報
番組内容
【ゲスト】ジャズシンガー…綾戸智恵,ケアホーム西大井こうほうえん施設長…田中とも江,【キャスター】国谷裕子
出演者
【ゲスト】ジャズシンガー…綾戸智恵,ケアホーム西大井こうほうえん施設長…田中とも江,【キャスター】国谷裕子

ジャンル :
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事

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音声 : 2/0モード(ステレオ)
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