主に蚊が媒介する感染症「ジカ熱」について、世界保健機関(WHO)が「公衆衛生上の緊急事態」を宣言した。

 おととし、世界に広がった西アフリカのエボラ出血熱について宣言して以来だ。

 政府は、中南米など流行地域を訪れる人たちに現地での注意を呼びかけている。入国・帰国者のチェックも含め、被害を防ぐ対策を徹底してもらいたい。

 あわせて、WHOや他国と連携し、流行を招きやすい途上国の保健・衛生状態の改善にも積極的に協力すべきである。

 自らの守りを固めつつ、現地の火消しにも貢献する。それが日本など先進国の責務だ。

 ジカ熱は主にアフリカからアジア太平洋、中南米の熱帯で発生している。日本など先進国でも発生地からの渡航者で感染が見つかったことがある。

 ただ、これまでは重大視されてこなかった。健康な人が感染しても、軽い発熱や関節痛、発疹など症状が軽く、無症状の人も少なくないためだ。

 しかし昨年来、ブラジルなど中南米で感染が広がるなかで、脳の発達が不十分な小頭症の新生児が急増した。妊婦のジカ熱感染との関連が疑われている。筋力低下を伴う神経疾患「ギラン・バレー症候群」も増え、警戒感が一気に高まった。

 ワクチンはまだないから、ウイルスを持つ蚊に刺されないことが最も有効な予防策だ。特に妊婦は不用意に流行地に近づかないようにしたい。

 五輪がある8月のリオデジャネイロは6月の東京に近い陽気だから、蚊対策は必須だ。政府は渡航者に旅行会社などを通じて周知してほしい。

 症状が軽いため検疫による水際対策はあまり効果を望めないが、相談体制は充実させたい。

 感染者が入国しても、蚊がいなければ感染は広がりにくい。デング熱同様、蚊の発生を抑える地道な取りくみが大切だ。

 最近、耳慣れない感染症が次々に現れている。だが、エボラも流行地で正しい理解を広げ、保健システムを立て直すことで封じ込めることができた。

 源になることが多い途上国で保健水準を引き上げることが、根本的な解決につながる。

 保健分野をめぐっては、国連による01~15年の「ミレニアム開発目標」が達成されず、16~30年の新目標に引き継がれた。

 政府は昨秋、日本の経験と知見で世界の保健課題に貢献するとして、「平和と健康のための基本方針」を定めた。

 着実に進めたい。現地で活躍できる人材育成が急務である。