時折出入りするのは、ヨーロッパ人のエリート行員ばかりで、中国人は見当たらない。オフィスの中は受付に二人と警備員が常駐していて、出入りを厳しく警備している。オフィスの中を覗き込んでも、中国人らしき人影はなかった。
このすぐ近くに、三菱東京UFJ銀行と三井住友銀行の関連会社がオフィスを構えていた。そこでこの2社に足を運び、「BONYT JA」と中国政府との関係、3大メガバンク及び日本企業の株を買い進める理由などについて訊ねた。だが2社とも、「特定の個人や企業情報に関してはお答えできません」と、丁重に断られてしまった。
本誌は、ブリュッセルで調査を進めていく中で、中国投資はベルギーと密接な関係にあることが分かった。
例えば、ベルギー国有の資産運用会社「SFPI-FPIM」は、中国投資と提携し、EUから中国の都市化関連事業の未公開株への投資ルートを作っている。昨年5月にブリュッセルで行われた提携の調印式には、中国から李克強筆頭副首相(現首相)と楼継偉中国投資会長(現財政大臣)が参列し、ディルポ首相と長時間の会談を持っている。
ともあれ、中国投資が3大メガバンクの株式を、4644億円も保有し、事実上の筆頭株主となっているのは間違いない。中国政府の狙いは、一体何なのか? そのヒントは、李克強首相が主導している上海自由貿易試験区にあった。
中国の経済発展は、'80年に鄧小平が深圳などに経済特区を設置し、日本企業などを誘致したところから始まった。李克強首相は、現代版の経済特区を、9月末に上海に設置したのだ。
そのため、日本の3大メガバンクを上海自由貿易試験区に引き入れるのは、最優先事項である。実際、11月28日に、3大メガバンクに出張所開設の許可が下りていることが発表された。
3大メガバンクとしても、自由貿易試験区内では金利規制が撤廃され、資本取引が相当程度に自由化されるので、大きな利益を得ることができる。
例えば三菱東京UFJ銀行の決算短信を見ると、今年4月から9月までの半年間で、中国子会社の貸し出しが3月末から13・5%増えて1兆1289億円に達している。貸出先の大半は日系企業で、金利は6%を超える。そのため、利息収入だけで677億円も叩き出しているのだ。これほどオイシイ融資は、日本国内ではあり得ない。