これではずさんな事件処理が常態化していた、といわれても仕方がないのではないか。

 大阪府警の全65署のうち61署で計約4300事件の捜査が放置され、いずれも時効が成立していたことが発覚した。

 実況見分調書や被害者調書、遺留物などの証拠品が、段ボール箱に入れられ、署の機械室や車庫に置いたまま、捜査も尽くされていなかった。古いものでは昭和50年代のものもあった。

 約1千件の捜査書類には容疑者の氏名も記載されていた。

 多くは酔客同士のけんかや置き引きなどで、殺人など重大事件は含まれていないという。だが、ささいないさかいが殺人事件に発展することもある。軽微だからといって資料ごと放置していい理由にはならない。

 「優先順位が高い事件にかかり切りで、異動時に引き継ぎができていないものもあった」というのが府警の説明だ。

 本来、警察は時効が成立したら捜査書類や証拠品を検察庁に送るのが原則だ。府警は原因究明と同時に、送致や被害者への証拠品の返還を急ぐべきだ。

 確かに大阪の警察官は忙しい。15年の警察白書によれば、警察官1人あたりの年間の刑法犯事件認知件数は約6・95件と、全国で最も多い。

 繁華街を抱える署では毎日のように事件が起き、被害届が出てもその後の捜査協力が得られない事案もあるという。個々の事件処理は煩雑ではあろうが、埋もれさせることなく迅速、的確に判断できるよう、効率的な人員配置や引き継ぎのあり方を根本的に見直す必要がある。

 府警は3月末までに最終的な調査結果を発表するという。身内のチェックでは限界もあろう。法曹関係者など第三者を交えた調査チームで検証や再発防止策を検討してはどうか。

 警視庁では14年、時効が成立した約3500事件の証拠品約1万点が放置されていたことが発覚した。愛知県警でも同年、未解決事件の証拠品2271点が放置や破棄されていたことが明らかになった。

 捜査段階で作成された書類や証拠は、裁判になれば重要な価値をもつ。警察庁は何度も捜査資料の管理徹底を求める通達を出しているが、改めて注意を呼びかけるべきではないか。

 大阪府警は14年から捜査書類や証拠品をオンラインで一括管理し、時効の時期が一目で分かる捜査支援システムを導入した。だが、肝心なのは捜査する側の意識だ。犯罪の被害者にとって、警察は頼みの綱であることを忘れてはならない。