「2011年に小学生になる子どもの65%は大学卒業後、これまでになかった新しい職業に就くだろう」という予測が話題になってから早くも5年――。小学生・中学生の子どもを育てている親にとって切実なのが、2021年の大学入試改革です。大学入試センター試験は廃止され、記述式も導入される見込みの大学入学希望者学力評価テスト(仮)へと変わります。問われるのは、詰め込み型の知識や1つの正解ではなく、課題を見つけ、解決へ向けた思考力・判断力・表現力などの総合力。まさにその試験を受けることになる小学生、中学生をもつ親は、いまからどう準備・対応していけばよいのでしょうか。
マイクロソフト日本法人の社長を経て、投資コンサルティング会社インスパイアを設立した成毛眞さんは、企業に就職した社会人の娘さんをもつ親でもあります。激しい変化の時代、子どものために親に何ができるのか、お話をうかがいました。
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――現在の小・中学生が10年後に活躍する社会では、どんな変化が起きているでしょうか?
未来を予測する上で、まず最近の技術的な変化は大きいですよね。インターネットだけではなくて、iPS細胞、ドローン、ビッグデータなどは、その言葉さえ10年前にはなかった。ここ10年で、過去100年分ぐらいの変化が起きています。おそらく10年後には、その変化がもっととんでもないスピードで起きているのではないでしょうか。
たとえば臓器移植。2013年に横浜市立大学の谷口英樹教授がミニ肝臓(肝芽)の作成に成功しました。将来、医者はそれを注射するだけになり、臓器移植医の仕事はなくなるかもしれない。当然、医学部も変わってくるだろうし、医学の大きな部分がエンジニアの仕事になるかもしれない。2025年には、「シンギュラリティ問題」といって、人工知能によって人類が滅びるのではないかという人さえいます。
――やはり、「仕事」の中身が変わりそうですね。どんな状況にあっても自分の頭で考え、対応できる人を育てるには、何を意識すればいいでしょうか。
大きく変わっていくのは“理系”とくくられる「技術・科学」です。ただし、理系に進めば安泰、という話ではありません。技術の変化に追従していける「理系脳」を作らないと、今後は社会で活躍できるような面白い仕事につけないかもしれません。そのためには「仮説を立てて、それを検証するプロセスの訓練」と、「技術や科学を面白いと思う気持ち」、その二つを育てることです。
親ができることは、技術、科学は面白いと思わせること。NHKの『サイエンスZERO』や、科学技術をテーマにしたテレビ番組を子どもと一緒に観るなど、メディアを通じて科学技術に楽しみながら触れたりして、興味を持たせることがすごく重要です。興味を持った分野は勉強するようになります。
――興味を持つ対象は、何でもいいのでしょうか?
「好きこそものの上手なれ」ですね。まず何でも一度だけチャンスをあげる。私にはもう就職して企業に勤めている娘がいるんですが、彼女が子どものときにはピアノ、乗馬、水彩画など、あらゆる習い事を試させた。1回やってはまるかどうか。それではまらなければすぐにやめさせた。興味のないことを続けるのは時間の無駄です。子どもは自分が何に夢中になるか判らない。だから、試してみるチャンスだけは与えたかったんです。それが見つかれば、集中してのめり込む経験そのものが力になるのです。
――確かに、何かに熱中した体験をもっている人は強いかもしれません。実際に、企業の経営陣として採用や投資を考えるときは、その人のどういうところを見るのですか?
わが社ではベンチャー企業への投資もしていますが、投資先の約90%が理系です。採用時のポイントは、理系脳があることに加えて言語能力があるかどうかです。おしゃべりがうまい人ですね。どんなに技術がよくても、その良さを伝えなくてはならない。この両方の能力がある人は、まだなかなかいないですね。まさに、大学入試改革で評価するという「表現力」ですよ。
アメリカのマイクロソフト本社では、学歴は見ないし、「5分以内に採用を決めろ」という方針だった。結局、一緒に働きたいかどうかなんですよね。ドアの開け方、歩き方、質問の受け答えなどで、それは5分あればわかります。面接でも「表現力」が問われるということです。
―― 基礎学力を身につけた上で、思考力・表現力まで磨いていく。とても大変なことのように思えます。
何をするにしても基礎学力は必要です。中学校や高校の教科書をしっかりと勉強するだけで、基礎学力と教養は身につきます。
大学入試改革では、思考力、判断力、仮説を立てる力、そしてそれを表現する力を評価して、本当に賢いかを見極めたいのだと思います。大学入試が旧態依然の「クイズ」から「教養」になっていくという意味では、いいことだと思いますね。中でも特に表現力、書く力が大事になってくるでしょう。書く力も、訓練すれば、誰でもなんとかなります。
訓練で一番いいのは、書いたものを人に見てもらい、直してもらう添削ですね。わたしも仕事で文章を書くようになってから、出版社の校閲部に校正されるようになり、それから文章が良くなりました。ともかく、論理的に書くテクニックは訓練によって身につきます。論理的に見えるように表現できるようになれば、新しい入試がどう変わろうと突破できるでしょう。でも本当に大事なのは、そこから先です。社会に出てどうやって自分を生かすか、そのためのメソッドを、大学入試改革を利用して身につける。そういう視野が必要だと思います。
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「本当に大事なのは、大学入試のその先」。
急速に変化する時代の中で必要とされる人材になるためには、「正解のない問題に立ち向かい、自分なりの答えを導き出し、自分の思いや考えを人に伝える力」が求められます。2021年に控えた大学入試改革もこの流れをくんでおり、この力を鍛えるために、Z会では3月から、新大学入試の対象となる新中学1年生・2年生に向けて、新しい講座「総合」を開講しました。
毎月1つのテーマが設定されていて、例えば、中1は「常識を疑え!」。いま自分が「常識」と思っていることは、より広い社会では常識ではないかもしれない、つまり「特定の場所」または「特定の時代」でしか通用しないものかもしれないこと。「常識に逆らう」のではなく「常識を疑う」視点をもつことで、ものの見方が広がることを学びます。
中2では「正しさについて考える」をテーマに、「正しさ」は実はたくさんあること、「正しさ」は変わること、「正しさの根拠」に目を向けることが、ものごとを一歩踏み込んで考えていくために必要であることを学びます。
模範解答はありません。会員専用サイト「みんなの答案」(写真)で自分の考えを他の会員の答案と比べながら思考を深めていきます。その上で、記述が論理的であるか、きちんと事実に基づいた上で考えを表現できているか、といった具体的な添削指導を受けることができます。
「総合」は、高校受験のない中高一貫生向けに開講された講座ですが、中高一貫生でなくても受講することができます。
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(Z会の通信教育 中学生向け「中高一貫コース」をお選びください)
これにより、何が課題かを見極める「課題発見力」、課題に対していくつかの道筋の中から最適と思えるものを選び出す「課題解決力」、自分の思いや考えを人に伝える「表現力」をバランスよく養っていきます。
成毛さんのお話にもあったように、10年後、お子様が羽ばたく社会がどのように変化しているのか、私たちは予測がつきません。
今までの常識が通用しない社会、今存在している仕事が続く保証がない社会の到来に不安を感じる保護者の方がいるかもしれませんが、子どもたちの可能性を信じて、これからの社会に必要な力を養うサポートをするのが、保護者の役割になるのではないでしょうか。
(聞き手:庄村敦子 写真:馬場磨貴)
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