上越・糸魚川市が受け入れ環境整備へ
新潟県上越・糸魚川両市は、近年増加している東南アジアのイスラム圏から国内への「ムスリム旅行者」受け入れに向け、観光庁が推進する環境整備事業の実施地域に選ばれた。マレーシアやインドネシアからの旅行客は県内でも増加傾向にあり、入り込み客数の増加に期待がかかる。両市では、イスラム教を知るセミナーや料理教室を開くなどして、受け入れ環境の整備を進める。【浅見茂晴】
東南アジアからの旅行者数は、ビザ要件の緩和や格安航空会社(LCC)の就航などで近年急増している。2015年の訪日旅行者数は、マレーシアが30万5500人、インドネシアが20万5100人といずれも過去最多を記録。県内でも14年度の両国旅行者の延べ宿泊数は、マレーシアが1618泊、インドネシアが1779泊と、いずれも12年度の4倍前後まで増加した。
両国のイスラム教徒は、マレーシアが人口の約6割、インドネシアでは9割近くを占めており、イスラム教への理解と対応が不可欠となりつつある。
観光庁はこうした状況を踏まえ、受け入れ環境を向上させるため、「訪日ムスリム外国人旅行者の受入環境整備等促進事業」を企画し、実施団体を公募。上越・糸魚川両市は、長野県大町市・小谷村・白馬村と富山県朝日町との6市町村で構成する「北アルプス日本海広域観光連携会議」として応募し、昨年12月、岐阜県と三重県の他の2地域とともに選定された。
上越・糸魚川両市は、今月から本格的に動き出す。糸魚川市では22日、上越市では23日、宿泊施設の経営者向けに、イスラム教の礼拝への対応や情報発信などを学ぶムスリムセミナーを開催。また来月22、23両日には、地元食材を用いたマレーシア料理の教室を開く。今後は礼拝環境の整備やムスリム専用のホームページ作成なども進める。
セミナーでは、ムスリム旅行者の受け入れが進む白馬五竜観光協会(長野県白馬村)の佐藤文生事務局長が「ムスリム客受け入れについて」と題して講演する。白馬五竜地域では、10年に東南アジア諸国連合(ASEAN)などの交流受け入れ事業の一環として、インドネシアの青少年を受け入れたことがきっかけで、現在はマレーシア人らが年間約400泊滞在。旅行者らは秋から春にかけて、主に「アット・ホームな日本の生活を体験する」ことを目的に来日し、雪遊びをしながら民宿やペンションに滞在しているといい、佐藤さんは「気負い過ぎず、型にはめない接し方を伝えたい」としている。