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日本企業の底力を見た!急な変更にもノーと言わない 清水建設のインドネシア建設現場ルポ

産経新聞 2月3日(水)10時45分配信

 「ASEAN経済共同体(AEC)」が昨年末に発足し、経済圏が拡大する東南アジア。日本の建設業界も現地での事業展開を活発化させており、大手ゼネコンなどが日本の円借款を活用した道路や鉄道、オフィスビルなど建設を手がける。ただ可能性を秘めた巨大市場は、中国や韓国を含め各国がインフラ輸出でしのぎを削る国際競争の最前線でもある。清水建設がインドネシアで手がける建設現場を訪ね、勝ち残りを目指すゼネコンの戦略を探った。

 赤道にほど近いジャカルタ市内中心部。同国最大のメディアグループ「MNCグループ」のオフィスビル「MNCメディアタワー」の建設現場では、炎天下の中、来年の完成に向け作業が急ピッチで進んでいる。

 「建物の高さを約80メートル低くしてくれないか」

 施主のMNCグループから突然の要望が舞い込んだのは2014年3月のことだ。しかも大幅な設計変更にかかわらず、工期は延長しないという条件。「いったい、どうしたものか…」。施工を担当していた清水建設の赤木創工事長は困惑を隠せなかった。

 ただ、そこから清水建設の対応は早かった。原設計を担当した企業から設計変更の業務を引き継ぐと、施工を進めながらの再設計という離れ業を展開。設計と施工を一手に引き受けたことで、コンサルタントを挟むと1カ月半はかかる調整作業を3週間で済ませ、工事の遅れをとどめた。

 赤木工事長は「綱渡りの状況だったが、施主の要望に応えたい思いだった。信頼関係も強まった」と汗をぬぐう。

 「ノー」を言わないきめ細かな対応は、清水建設の危機感の裏返しでもある。

 ASEAN諸国は中間所得層の増加による内需拡大のほか、道路やビルといったインフラ投資が経済成長を押し上げる。インドネシアは13年の実質国内総生産(GDP)成長率が5.8%、16年も5%台の高成長が見込まれ、日系の大手ゼネコンの進出が相次ぐ。

 清水建設は1975年に日本企業の現地社宅の建設に携わって以来、40年にわたり同国で事業を展開、外資系ホテルや日系企業の工業団地建設などの案件を手がけてきた。ジャカルタ営業所の秋山耕平営業担当は「外資系企業など富裕オーナー層からは大きな信頼を得ている」と胸を張る。

 ただ最近は、風向きの変化も感じとっている。一昨年に就任した同国のジョコ・ウィドド大統領は、ユドヨノ前政権の掲げた首都インフラ重視の路線を一新し、地方重視を鮮明にする。結果、日本の政府開発援助(ODA)案件にも今後の受注に不透明感が増している。

 成長市場ゆえの競争も厳しさを増してきた。昨年には高速鉄道の受注を土壇場で中国に奪われるなど、中国や韓国企業が同国での事業展開を加速させている。現地の建設業者も「高難度のプロジェクトでなければ十分な技術水準」(大石哲士ジャカルタ営業所長)にまで成長。高い技術力を誇る日系ゼネコンも、技術だけを売りに受注を勝ち取るのが容易でなくなってきている。

 こうした状況下、同国で40年の歴史を誇る清水建設も、実績にあぐらをかいていられない状況だ。熾烈な競争に勝ち抜くべく、他社との差別化が必須となった。MNCタワーで迅速な設計変更の原動力となった常駐の設計部隊はその一つだ。

 一方、完成すれば同国で最高層ビルとなる261.5メートルの「アストラタワー」建設現場で挑むのは大幅な工期短縮だ。18年3月までの工期設定に対し、半年の短縮が目標。現場を担当する沖和之建設所長は「工期の遅れが当たり前のインドネシアでは、今後の強みになる」と将来を見据える。

 掘削作業を阻む雨季に頻繁に仕事を代える作業員-。インドネシアには工期遅れの要因が少なくない。訪れた雨季の昨年12月、清水は可動式テントでペースダウンに備えるほか、若い作業員に日当が2日分支給される長時間勤務も選べる体制を整えていた。作業員が辞めがちな長期休暇明けには、帰省先と現場を結ぶ無料バスを準備した。

 こうした環境整備により、すでに工期の4カ月短縮が見えてきた。大石営業所長は「今後の事業展開には、入札競争ではなく、いかに“名指し”の受注案件を増やすかが重要。そのためにも清水ファンの裾野を広げたい」と話している。(佐久間修志)

最終更新:2月3日(水)12時1分

産経新聞

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